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メルセデスベンツの安全技術の歴史的な回顧

1) 安全設計の始まり
 ダイムラーベンツの安全設計に対する取り組みは1939年(昭和14年)が端緒といわれている。ジンデルフィンゲン工場の取締役が、乗用車の開発段階で衝突時の安全性を盛り込んだ設計を行うことを提唱したのがその契機とされている。
 この設計コンセプトが提示された結果、メルセデスの設計者は、たとえ小さな点であっても安全性に寄与する要素は盛り込むことが求められるようになった。
 そして早くも1940年には側面衝突に対応した大断面のフロアクロスメンバーを備えた安全プラットフォームを試作するなど、安全コンセプトを取り入れるという設計思想はスタートを切り、この思想が戦後にそのまま引き継がれた。(写真は1940年の安全プロトタイプシャシー)
1940_proto.jpg


2) 戦後いち早く安全性能を追求
 戦後、ダイムラーベンツが再建されると1959年には安全性向上のための実験・研究が始まり、170Sを使用しての初のクラッシュテストが行われ、戦前の思想が確実に受け継がれていることを証明した。またそれより以前の、1951年には強固なキャビンと前後衝撃吸収ボディ構造を組み合わせた安全ボディ・コンセプトが特許を取得しており、こうしたコンセプトと衝突実験のデータを蓄積することで、先進的な安全ボディを市販モデルに先駆的に採用する準備が整えられた。
 これらの安全思想と技術はプロトタイプ車に盛り込まれ、実験を繰り返し、効果を確認する作業も積み重ねられた。(写真は170Sによる衝突実験)
170crash_tset.jpg

 こうした技術的な背景の下に1959年に発売された220b(フィンテール・モデル)で、世界初の衝撃吸収ボディ、突起物をなくしたインテリアを実現した。また1949年にメルセデスベンツの特徴のひとつにもなるアンチバースト性の高いコニカルピン式ドアロックの特許を取得しており、これも220bから量産採用されている。
 この当時、未だ戦後復興期であった時代に、他の自動車メーカーで安全性に着目したところは皆無であり、いかに安全性に関してメルセデスベンツが先駆的であったかが認識できよう。

* 220b時代に確立された安全コンセプト
・ 強固で変形しにくいキャビン構造
・ ボディ前後のクラッシャブル構造
・ 側面衝突に対して配慮したボディ構造
・ 衝突時に開かない安全なドアロック
・ 組み立て式ステアリングコラムとパッド付きステアリングホイール
・ シートベルトの装備
・ ボディ前後セクションの修理の容易化

3) よりリアルな安全性の追求
 ダイムラーベンツは安全ボディを備えた市販モデルが発売された後も衝突試験を繰り返し、さらに道路での事故車の調査などから、現実の事故では前後の衝撃吸収構造が必ずしも有効に働いていないことが確認された。つまり高速での事故では衝撃吸収構造がうまく機能せず、シートベルトを装着していない場合は乗員には強い衝撃がかかり、インテリアの突起物などで傷害を受けることが確認された。こうした認識から、今後はよりリアルな実験が必要という結論に達したのである。このため66年にジンデルフィンゲンに安全研究センターが開設され、以後のクルマの安全性の研究の先端を走ることになる。
 この安全研究センターでは、今日使用されている「アクティブセーフティ」、「パッシブセーフティ」といった用語や概念が確立され、世界の自動車メーカーに大きな影響を与えることになった。
 なおインテリアについては、乗員に安全なキャビン内装とすることでより傷害を低減できることが明らかになったが、次の課題は、より安全なシートベルトシステム、燃料漏れ対策、ステアリングシステムの開発であった。
 ちなみに1964年当時、他社のクルマとメルセデスベンツと比較試験が行われているが、安全性でメルセデスベンツは競合車より圧倒的な優位があることが確認されている。
 60年代の大きな革新は、安全なステアリングシステムの開発であった。60年にコラプシブルステアリングコラムの特許が取得され、68年に市販モデルに採用された。このシステムは衝突時にステアリングシャフトとコラムが変形し、室内に突出しないように設計されていた。ステアリングホイールには大型の衝撃吸収パッドが装備され、ステアリングギヤボックスもフロントアクスルより後方に配置されるなど、まさにステアリングシムテム全体での安全対策である。(なお、アメリカでリジッドバリアに50km/hで衝突した時のステアリングコラムの突出量を5インチ以内に抑えるという初の安全法規ができたのは70年のことである)
 1969年にはダイムラーベンツの事故調査チームが発足した。警察と地元のバーデン・ヴェルテンブルグ州の協力を得て事故現場での車両調査を開始した。この背景にはドイツ(当時は西ドイツ)では、年間交通事故死者数が1万9000人を超え、まもなく2万人に達すると想定され、交通事故に対する危機感がかつてないほど高まっていたことも見逃せない。
 ジンデルフィンゲンから半径100km以内で自社のクルマが関与した事故の場合、警察から連絡を受けると、速やかに事故現場に急行し事故車両の調査を行う。したがってこれ以後ダイムラーベンツは膨大な交通事故のデータと事故車の実態データを蓄積すると同時に同社が採用した安全設計や安全装備が現実に機能しているかどうかを調べることで、その後のより有効な安全性能追求を行う原動力になっている。
 この時代はシートベルトを装着せず、事故時にフロントガラスの破片で顔面に傷害を受けることが多かったため、メルセデスベンツはいち早く樹脂入り合わせガラスを採り入れたメーカーのひとつでもある。

4) ESV
 70年代に入ると、クルマの安全性に関する関心が深まり、アメリカでは安全法規が次々に制定され、その一方で国際ESVのプログラムにより15の自動車メーカーがプロトタイプを開発した。
 メルセデスベンツのESVは、前席のシート一体型シートベルトアンカー、全席のヘッドレスト、3点式オートシートベルト、ベルトフォースリミッター、エアバッグ、前後の衝撃吸収構造と強固なキャビン、衝撃吸収式ステアリング、歩行者・2輪車への安全対策など今日注目される技術を取り入れていた。
 なおアメリカでは、フルラップ衝突試験、ロールオーバー試験の基準が決定されたが、この過程ではベンツの手法がそのまま採用されている。

5) 新しい時代の始まり
 1972年にジンデルフィンゲンに新しい安全センターが作られ、すべての衝突実験は天候に影響されない屋内で実施されることになった。試験棟は全長100mあり、試験車両はリニアモーターカーによって加速されバリアに衝突させる方式を採用している。また多目的エリアは、側面衝突、後突、ロールオーバー試験などに使用される。
 またベンディックス社製衝突シミュレーションスレッドを使用することで世界最高の効率的な衝突再現能力を備えており、拘束装置やステアリングシステム、インスツルメントパネルなどの安全性評価を適格に行うことができるようになっていた。
 一方、数年間にわたる実際の事故調査の蓄積の過程で、法規で決められた前面衝突はきわめて稀で、リアルワールドでは非対称オフセット衝突が圧倒的に多いことが発見され、これがその後の衝突試験法や安全設計に大きく貢献することになった。
 W126は、このオフセット衝突に対応した世界初の新ボディ骨格を持つクルマである。
同時に前後席3点ベルト、ショルダーベルト位置調整式アンカー、インテリアの木目板にアルミシートをサンドイッチ化、さらに歩行者保護対策も取り入れられている。
 この安全設計は、W126以降、Cクラス、Eクラス、SLクラスと順次採用され、オフセット衝突対応のボディがリアルワールドでもきわめて有効であることが確認できた。
 このことからも明らかなように、ダイムラーベンツは安全性を高めるために必要かつ有効な技術は、各国政府の安全基準にとらわれることなく、まず社内基準化され、社内で実証し、積極的に量産車に反映させて行くことをポリシーとしている。

6) アクティブセーフティ
 ダイムラーベンツのABSの研究の源流は戦前の1941年に原理特許を取得したことに始まり、機械式のアンチロック・レギュレーターのテストが行われた。もちろんこれは大きな効果は期待できなかったが、4輪の車輪速を測るセンサーが必要であること、4輪のブレーキ圧を独立して調整できなければならいなことなど、ABSを成功させるための技術ターゲットが明確になっている。
 中でも車輪速センサーは、鉄道技術で使用されてきた機械式はクルマ用には不適当で、新たなセンサーの開発が1952年以降に着手され、67年にダイムラーベンツとテレディックス社の共同開発により非接触型センサーの開発に成功した。
 したがって、第1世代のABSはこのセンサーを使用したアナログ制御のABSとなり1970年に公開実験が行われ大きな反響を得た。
 しかし、実際にはアナログ式は実用化されず、この後ダイムラーベンツとボッシュが集積回路を持つデジタル制御ABSの開発に8年間を要した。
 そして1978年に、世界初の量産ABSが実現し、Sクラスのオプション設定とされた。
 ABSの実現以後、ASR、BAS、ESPなどドライバーを支援する車両安定化制御システムは一挙に大きな発展を遂げることになり、ダイムラーベンツは常に世界を一歩リードしたのである。その中でも特にBASは、運転シミュレーターを駆使し、一般のドライバーは危険に瀕した時でもブレーキ踏力がじゅうぶんではないというヒューマンファクターを発見したことから開発され、他メーカーは完全にそのコンセプトに追従することになった。(写真は巨大なドライビングシミュレーター)
driving_sym3.jpg


7) 新安全コンセプト
 ダイムラーベンツはクルマに盛り込まれる機能すべてを安全というキーワードの元に帰結させることが設計思想として徹底されている。
 そして常に世界をリードする新しい安全の概念を作り出しているのも事実である。
 その例は2005年に登場したSクラスに見ることができる。従来の直面した危険性を回避するというフィードバック制御に対して、新型Sクラスは危険が生じる前に事前に回避するといういわばフィードフォワード安全に挑戦したのだ。
 これはダイムラーベンツの安全に対する本質的な考え方である、クルマの安全性は統合的なものであり、細分化はできないということから得られた新たな方向性である。
 その新たなコンセプトはプレセーフと呼ばれる。 
従来の安全コンセプトであるアクティブセーフティとパッシブセーフティのそれぞれの守備範囲の間に、ほんのわずかながら、安全性を高めるためのもうひとつの領域があることに着目し、予測される事故に備えて、乗員保護性能をあらかじめ最大限にまで高めるということである。
 このコンセプトも、実際の事故調査データやドライビングシミュレーターを使用した実験により、危険回避操作をしてから事故の瞬間までにわずか数秒の時間があることや、シートポジションなどが不適切な場合はより乗員の被害が大きくなることなどに着目し、このため事故の可能性を予測し、衝突の事前段階でドライバーに警報を発し、自動ブレーキをかけ、シートポジションやシートベルト張力を補正するフィードフォワードコンセプトなのである。
 このコンセプトを実現するために、3個のミリ波レーダーを装備して、前方の障害物を捕捉し、衝突の可能性を判定するという新たなシステムを構築しているのだ。

8) 歴史的な評価
 ベンツ社の安全技術の開発の過程を見ると、1980年以前は同社が安全技術に関しては圧倒的に先行していたことがわかる。アメリカのラルフ・ネーダーが、1965年に「どんなスピードでも自動車は危険だ:アメリカの自動車に仕組まれた危険(Unsafe at Any Speed:The Designed-In Dangers of the American Automobile)」を出版し、アメリカ社会に大きな衝撃を与え、自動車の安全性が喚起されるようになったが、これは主として性能的な欠陥を意味していた。その代表がスピンを発生しやすいシボレー・コルベアだった。しかし、交通事故におけるパッシブセーフティや、事故回避能力高めるアクティブセーフティの概念は、やはりベンツ社がもたらしたもので、1970年代のESVにより、ようやく安全コンセプトが各自動車メーカーの共通認識として確立された。
 今日においては、自動車のパッシブセーフティ分野での安全基準が世界共通の安全法規として定められ、もはや以前ほどベンツの優位性は見られないが、アクティブセーフティに関するドライバー心理学的蓄積やマン・マシンシステムに関してはやはり多くのノウハウを累積しているのである。

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