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シトロエン2CV

日産のデザイン担当重役の中村氏は、「キューブは世界一遅く走るように見えるクルマ」といっていたが、いやいや世界にはもっと走りが遅く見える車があるのだ。今のところ世界No1はシトロエン2CVではないのかと思う。
シトロエン社は第1次世界大戦後にスタートした歴史の浅い自動車メーカーだが、早い時期から鋼鉄製ボディや油圧ブレーキを導入するなど先進技術の採用には積極的なメーカーであった。また当初からフォード式の大量生産を目指した点もヨーロッパでは画期的であった。1934年には7CV、すなわち「トラクシオン・アヴァン」(前輪駆動)を発表している。コンセプト作りにおいて前衛的な自動車メーカーだったのである。ただ、7CVを市販するための投資がたたり、シトロエン社は経営危機となってしまった。その結果、タイヤメーカーのミシュランの資本が導入され、ミシュラン出身のピエール・ブーランジェがシトロエンの実質的な舵取りになる。彼が1935年にミシュランの本社所在地であるクレルモンフェランの郊外で、農民が人力や牛馬が牽引する荷車を見て、シトロエンのカーラインアップに大衆車を加えるべきだと考えた。シトロエンはそれまでは中型以上のクラスが主流だったのだ。ブランジェは農民が購入できるような大衆車を作れば、国民車として大ヒットするに違いないと考えたのだ。1936年、ブーランジェは、シトロエンのアンドレ・ルフェーヴル技師らに、農民、庶民向けの超小型自動車開発を命令した。この小型車は「Toute Petite Voiture(超小型車)」を略した「TPV」というコードネームが与えられた。ちなみにアンドレ・ルフェーヴル技師は、第1次世界大戦中は航空機製造会社のヴォアザン社で軍用機の設計を担当していたエンジニアである。戦後はヴォアザン社を離れ、自動車設計エンジニアとなり、シトロエン社に入社して7CVの開発を担当したきわめて優秀で、しかも独創的なエンジニアだった。
ブーランジェの提示したTPVのテーマは、「こうもり傘に4つの車輪を付ける」という、シンプルさの極致を示唆するものであったという。価格は7CVの1/3以下、かつ自動車を初めて所有する人々でも容易に運転できることが求められたという。まさに国民車構想である。経営者のブーランジェはルフェーヴル技師に、大人2人とジャガイモ50kgを載せて田舎の悪路を50km/hで走れること、籠一杯の生卵を載せ、卵を割ることなく荒れ地を走れること、ガソリン5Lで100km以上走れること を求めたといわれる。旧日本海軍のゼロ戦の開発時の要求性能は実現不可能な内容だったが、このTPVに対する要求も同じようなレベルである。もうひとつ、伝説になっているのが、農民は正装して教会や祭りに行くもので、彼らがシルクハットを被ったまま乗れるようなクルマであることも求められたという。これは並外れた室内スペース、室内高が求められる要素となった。
アンドレ・ルフェーヴル技師は、TPVの駆動方式に前輪駆動方式を採用した軽量でコンパクトなパッケージングに前輪駆動方式は不可欠と考えた。もちろん、当時は横置きエンジンではなく、縦置きエンジンを前提とした前輪駆動方式である。
1939年頃には、TPVの開発は進行し、試作車が完成た。試作車はアルミニウムを使用して軽量化され、外板にはアルミの波板を使うという当時の航空機の発想が駆使されていた。ただしこれはコスト過大と判断され、TPVはスチールパネルを使用することになる。
Citroen2CV_prototype.jpg

ルーフは巻き取り式のキャンバストップで、軽量化をはかり、シートは金属スプリングの代わりに、ゴムベルトを用いたハンモック構造を採用していた。これは戦闘機のシート構造そのものである。ヘッドライトはコストダウンと軽量化のため片側1個だった。エンジンは専用開発の水冷OHVを採用した。しかし、時代は第2次世界大戦の真っ只中であり、フランスは1940年にドイツに占領下された。そしてシトロエン社もドイツ軍の管理会社となりトラックの増産が求められた。開発中のTPVは秘匿され、試作車は破壊され、一部の試作車は厳重に隠された。国は違うけれども、ドイツのVWタイプ1(KdF=ビートル)とTPVは似たような運命をたどっていた。結局戦争によりプロジェクトは頓挫してしまったのだ。しかしフランスは1944年に連合軍によって解放され、早期にTPVのプロジェクトは再開された。当初の水冷エンジンは所期の性能を発揮できないことが分かったため、タルボ社から移籍してきた有能なエンジン設計者のワルテル・ベッキアが、新たに信頼性の高い空冷水平対向2気筒OHVエンジンを開発した。排気量は当初は375cc、9馬力であった。このエンジンはOHVクロスフロー、半球形型燃焼室など、あなどれないコンセプトである。ちなみにこの水平対向2気筒の空冷エンジンはトヨタ・パブリカの原型にもなっている。パブリカは同様のエンジンを搭載したFF車として企画されたが、FF駆動に自信が持てずFR駆動になってしまった。2CVのもうひとつの特徴であるスタイリングは、イタリア人のデザイナー、フラミニオ・ベルトーニが手を加え、TPVのデザインはまとまりを見せることができた。フラミニオ・ベルトーニもまた傑出したデザイナーである。彼は後に宇宙船のようなクルマ、シトロエンDSを作り上げる。
TPVの市販名称は、課税馬力そのものの2CVとされ、戦後の混乱が収まりつつあった1948年
に発表された。しかし、2CVのスタイリングは、さすがのフランス人も言葉を失った。たちまに2CVには、「醜いアヒルの子」、「乳母車」、「ブリキの缶詰」などと酷評したあだ名が付いたのももっともである。2CVは不恰好で、遅く見えるクルマなのである。
Part2_803.jpg

2CVが市場に出ると、廉価なだけでなくランニングコストが安く、扱いやすくて信頼性が高いことは短期間のうちに大衆ユーザーたちに理解された。1949年から開始された本格生産はすぐに軌道に乗り、翌1950年には早くも日産400台のペースで量産されるようになったといわれる。
2CVのボディサイズは、全長3830㎜、全幅1480㎜、全高1600mmで、全高は現在のSUV並みに高いことが分かる。車両重量は極めて軽く、375ccの初期形で495kg、602ccの末期形で590kgと、徹底した軽量化コンセプトが貫かれている。ボディ構造は、フラットな形状のプラットフォームがフレーム構造となっており、軽量構造のキャビンはプラットフォーム上に架装されという構造だ。アッパーボディのサイドパネルは平板な形状で、左右のサイドパネルはストレートなパイプで結合するようになっていた。
ホイールベースは2400㎜。当時としてはロングホイールベースである。サスペンションは、フロントがリーディングアーム、リアがトレーリングアームで、前後とも基本的には横置きトーションバーが使用されている。前後のサスペンション・アームはそれぞれ前後を結ぶコイルスプリングに接続され、これらのスプリングは横置きのサスペンション・シリンダー内に収められている。つまり前後関連懸架と呼ばれるシステムである。左右それぞれの前後アームからはロッドが伸び、サイドシル下でスプリングを介して連結されている。この前後関連懸により、前輪がバンプすると前輪側のスプリングが収縮しサスペンション・シリンダーは前方に移動し、後輪ロッドをリバウンドさせて 車体をフラットに保つよう働く。悪路でのロードホールディングの良さはここにある。この前後関連式では旋回時には車体のロールを抑制する働きをする。旋回外輪は前後輪ともにロバウンドに方向に働き、ローリング角度を減少させるのだ。ダンパーは摩擦式で、横置きコイルスプリングにはダイナミックダンパーを装備した。当時は油圧ダンパーは使用されなかったので、とてもユニークなダンパーシステムになっているのだ。もちろんの地には油圧ダンパーに改良されている。タイヤは135/15で、ボディサイズに比べ細く大径のタイヤであり、これも悪路を走る性能に貢献している。
2CVの駆動方式はFFで、エンジンは縦置き。同じく縦置きのトランスミッションは4速MTで、変速レバーはダッシュボードに配置された。空冷の水平対向2気筒であるため、縦置きでもデメリットはなく、むしろ2CVはみかけより低重心である。なお排気量は初期型が375cc、中期型が425cc、後期型は602ccで、ちょうど日本の軽自動車の排気量の動向に似ている。
またブレーキは前後ともドラム式だが、フロントブレーキはインボード式である。(最終モデルはフロントはインボード・ディスク式になった)
最高速は最初期型で55㎞/h、425ccに拡大された仕様では90㎞/hで、当時としては十分過ぎる性能だった。
2CVは結局のところ、醜いデザインどころか、最高のデザインといわれるようになった。デザインと密接に関連するコンセプトも揺るぎがなく、究極的な大衆車と断定できる。
このクルマの最大の欠点は豪華な部分がないところだが、時代を突き抜けるインパクトのあるクルマである。
Schaffhausen_14082006(029).jpg

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