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リコールに見るトヨタの失われた10年を考える(2)

 トヨタのクルマ作りが大きっく転換したと考えられるのは、2000年7月から始まった3ヵ年計画の「CCC21」が契機になったと考えるのが妥当だろう。
 当時の渡邊社長が推進したCCC21活動は大規模な、内製品を含む総原価低減運動であるが、従来の原価低減は、既存の部品からどれだけコストダウンするかという相対目標型だったのに対し、CCC21は各部品やコンポーネンツについて世界で最も高い品質、価格競争力をベンチマークとする原価低減を目指す絶対目標型としている。
 そしてこれを実現するために、トヨタと部品を購入しているサプライヤーが一体になって取り組むことになった。中でも購入部品は、購入総額の90%以上を占める170品目について重点的に大幅なコストダウンを実施することにした。
 このためにトヨタの技術部門、生産&生産技術部門、購買部門、サプライヤーが一体で取り組むサイマルテニアス・エンジニアリング(SE)と位置づけられた。
 実際には部品メーカー、素材メーカーとトヨタが製品の設計段階から連携し、部品の共通化や製造方法の抜本的な見直しを行い、設計・技術、生産、購買、固定費という4つのフェーズからアプローチされた。
 合言葉としては、1~2割のコストダウンではだめで、4~5割コストダウンできるような技術や製造法が模索されたのだ。またこの過程で、トヨタは1次下請けから末端下請けまで、原料費、加工費、労賃×工数、利益など部品単価を構成する要素を丸裸にし、コスト低減ができる部分に指摘した。
 逆にいえば、サプライヤーはこうした課題の元で従来の部品の価格を抑えるのではなく、課題をクリアできる新たな製法の部品を提案する必要に迫られたともいえる。
 トヨタサイドからいえば、世界で最も良いものを、最も安く、最もスピーディーに、そしてタイムリーに調達するということだ。そしてコスト削減で得られた利益の一部を新型車の商品力向上に割り当てるしくみとした。
 CCC21の達成目標は3ヵ年で1兆円のコスト削減としていたが、実際には4ヵ年で1兆円を上回るコスト削減を達成している。

04減価推移
 
 いうまでもなく、トヨタのこの活動は他の自動車メーカーにも伝わり、各メーカーともにトヨタのプロジェクトに追随した。ただし、トヨタと同等の部品購買数でなければ同じようなコスト削減のメリットは得られない。
 トヨタがCCC21を実施した背景には世界No1の自動車メーカーの座を目指し、研究開発、生産投資、部品購入を含め拡大の一途を遂げていたことが考えられる。
 また過去にもたびたび指摘されたように、車種ごとの部品を共通化、モジュール化徹底することにも改めて挑戦されている。
 例えば2000年時点で、トヨタのドア・アシストグリップは130種類あったが、同時期のVWグループは3種類とされていた。当然ながらVWグループの同部品の購入コストはトヨタよりはるかに安い(もっともVW/アウディグループは種類を少なくして量産効果を生かしたコストダウンと、そのメリットを生かして上級品質の部品を下方展開し、下級グレードの車種の質感を高めて他社との商品差を拡大するするという戦略を採用している)
 またVW/アウディグループが最初に着手し、日産などが追従したライン外(またはライン傍でのサプライヤーによるユニット組立)でのモジュール組立に関してはトヨタは関心を示さなかった。サプライヤーにモジュールの組立を依頼して導入するよりトヨタのラインでの組み付けのほうが安いという判断だろうか。
 いずれにせよこうした背景もあってCCC21は、従来の設計チームごとの車両最適化設計を否定するという、これまでの常識を根底から覆すチャレンジでもあった。部品の共通化や部品の種類の抑制のためにはサプライヤーが他社に供給している部品を流用することも容認された。
 

06ccc21_VI.jpg
 
 販売台数の増大により売上高、営業利益、純利益ともに過去最高を記録していた2005年4月からは、また新たなフェーズに入り、CCC21を進化させたVI(バリューイノベーション)活動をスタートさせた。
 VI活動は、設計思想にまで踏み込んで開発先行段階からコスト/バリューの見直し行い、原価低減の対象は従来の部品単位に加えて、複数の部品を組み合わせたシステムの単位にまで拡大させることになった。
 自動車メーカーの多くは、VA(バリューアナルシス。本来の意味は価値分析だが、実際には同程度の性能であれば低価格の部品に置き換えるコスト低減を意味する)を行っており、ランニングチェンジの機会に、部品をより安いものに置き換えるという手法をとっているが、トヨタのVIは名称は似ているが、発想は根本的に異なっていた。
 クルマに搭載されるエンジン系統や安全装備系統など、システムごとの機能や配置を見直し、同じ機能を持つ部品やシステムを統合することで部品の数を削減するなど、従来常識としていた設計や工法を見直すことにより、商品の品質は落とさずに、使用部品の数や材料使用量を低減することとされた。例えば樹脂部品は性能はそのままで厚さを半分程度にすることによって材料の使用量を3割低減し、原価を下げる、ECUを統合することでECUのユニット数を減らすなども推進した。

06 VI詳細

 もうひとつは、生産面の大幅な見直しは2000年頃から着手されている。クルマ作りの工程はどこまでシンプル化できるか、生産設備はどれだけスリム化できるかをテーマに、これまでの常識を破る生産技術革新も同時に進行され、これたUMR(Unit & Material Manufacturing Reform)プロジェクトと名付けられた。生産システム全体の簡素化、生産ライン長の短縮など、生産工程でのリーン&シンプル化が推進された。
 プロジェクトの合言葉は、桁違いへの挑戦、非常識への挑戦とされた。金型や生産設備、さらには生産ラインを究極までシンプル化・スリム化しようとするもので、これにより設備の初期投資や製造コストの大幅削減だけではなく、海外拠点でも作業効率を向上させ、安定品質を確保するために必要とされた。
 このため、型の設計見直しにより工程もシンプルにすることが追求され、ダイキャストや樹脂射出成形型は従来の体積の1/3~1/10へとコンパクト化され、そのためにトヨタ内製のマシンを開発。これらの活動により生産ラインでは機械加工と組立のライン総延長は従来と比べ1/3~1/6に短縮されたという。
 また同時に、バーチャル技術を採用したデジタル組み付け検討システムも全面的に取り入れられている。
 VIはCCC21を上回るスピード、規模、低減効果額を目指して展開することになった。(VI活動が反映された第1号車は2008年2月に発売した新型クラウンである)
 このように、大幅なコスト削減活動と、世界的な規模での販売の拡大をもとに、2008年度には売り上げ、利益ともに過去最高水準に達し、同時に世界No1の生産台数を記録し、念願の世界一の自動車メーカーの称号を手に入れた。

08 価格高騰VI

 しかし、2008年秋のリーマンショックによる大幅な経済の減速と、新興国需要の拡大という背景を持つ原料費(鉄、ゴム、、樹脂、貴金属など)の大幅な価格高騰が襲いかかってきた。
 このため売り上げ高、収益が大幅に低下事態に直面し、2009年からは緊急VA(バリューアナルシス)が実施された。
 このVAは、既存車種のより安い部品への置き換えによるコスト抑制を意味している。

09 緊急VA
 
 
 このような2000年から10年間にわたる原価低減活動は、確かに1兆円をはるかに超える、年平均で2000億円~3000億円というコスト低減効果を生み出し、その何割かは商品性の向上にも割り当てられ、ユーザーもまたその効果の一端を享受している。
 またこのような原価低減活動の中から生まれた3代目プリウスは爆発的なヒット作となり、トヨタは大きな自信を持ったはずである。
 その一方で、クルマ作りの概念が大きく変わったことも見逃せない。
 ひとつは、クルマの開発体制の変化である。トヨタでは製品企画部の車種担当の主査(現在はチーフエンジニア=CEと呼ぶ)制度のもとで、CEの強力なリーダーシップにより開発が推進された。CEは与えられた予算をもとに、妥協のない開発を行うことが使命であり、優れた設計ができない担当者にはムチを振るうということさえ珍しくなかった。
 また、CE制度と同時に製品企画の担当者や実験部の担当者の独善を排除し商品性のレベルをユーザー視線からチェックする商品監査室がCEの直属として存在していた。商品監査の担当者がNGを出せば設計や実験部署はやり直しになることもあった。
 つまり、顧客にとって妥協のない最高のクルマ作りを行うという体制、システムがあったのである。
 しかしCCC21活動以降は、設計思想が大きく変化し、CEは最適なクルマの開発を指揮・推進するというより開発コンセプト(トヨタ流では主査構想)や目標性能を作ることと、VIを推進している各設計部署の統括管理に限定され、極端に言えばクルマ開発のプロフェショナル・エンジニアから商品企画担当&開発プロセス推進者に変質したといってもよいだろう。
 またバルブ期には鳴り物入りでメディアに登場したトップガン・ドライバー(実際にはトップガンという制度は存在せず、ドライバーは商品監査室に所属したり、設計、実験部署に所属していた)、つまりクルマの走りを総合的に評価する高度な技能レベルを持つ評価ドライバーの存在感が失われ、各実験部署での個々の評価で満足されるようになる。
 トヨタより早い時期に日産では「評価ドライバーの声は神の声」が定着し、商品評価を担当するエキスパート・テストドライバーにクルマの作り込み、熟成に大きな権限が与えられた話は有名だが、日産もおよそ15年でこのシステムはほぼ消滅し、テストドライバーは昔通りに各実験部署での実験データ取りと評価報告を行うことになっている。そういう意味ではこれはトヨタだけの特別な現象ではないといえる。
 1980年代にトヨタで確立された開発・設計のフロントローディングで、設計の出図(設計詳細の決定)から14ヶ月でラインオフ(量産1号車)を行うという驚異的な開発速度は世界の自動車メーカーを驚愕させた。日本だけではなくドイツの自動車メーカーもこぞってこの方式、発想を採用した。開発工数、つまり開発にかかわる人件費や試作費を劇的に低減できるからだ。(その対極として、トヨタ/GMの共同開発車キャバリエは5次試作車まで作ったという)
 ただし、ドイツの自動車メーカーは、この方式を導入するにあたり、性能や品質に問題がある場合は品質管理部門の決定で量産ラインを停止できる権限を与えている点がユニークだ。
 フロントローディングでは開発の段階では1発試作車(開発のフェーズごとに試作車を作って評価を行うのではなく、開発末期に1回だけ試作車を作る)が常識となり、開発の節目ごとに評価するという手法は消滅した。
 2000年代にはトヨタに限らないが出図から12ヶ月以内にラインオフするクルマも珍しくなくなっている。もちろんこうしたクルマは他車との共通のプラットフォーム、共通のコンポーネンツを採用しアッパーボディのみを新設計したクルマである。
 こうした流れの中で、共通のプラットフォーム、共通のパワーユニットや主要コンポーネンツを搭載したクルマは、そのパワーユニットやコンポーネンツの評価テストは省略する、あるいは簡単な確認テストに限定することが常態化した。つまり実験に要する工数を低減させることを狙ったわけである。
 こうした状況が、プリウスやレクサスGX460(ランドクルーザー・プラド)などに象徴されるのリコール事件の背景になっていることは間違いないだろう。
 2005年にがCF(カスタマーファースト)と名付けられた、市場に不具合を出さないとう活動を開始しているが、2007年からは自工程完結と呼ばれる活動に変化した。自工程完結は品質は各工程で造り込み、後工程に最高品質の仕事を手渡すということを意味するが文字通り該当部署内で作り込みを完結させる発想になっているのだ。担当セクション内で自己完結することによりリスクを抱えることになったといえるかもしれない。
 渡邊社長から豊田社長に代わり、リコール事件が発生した後、豊田社長は開発期間をプラス1ヶ月とすることを決めている。この1ヶ月は最終評価テストを行うことにあてられることになるだろう。
 10年間にわたる徹底した原価低減活動は、トヨタの収益を向上させただけではなく、商品性の向上などにもあてられたが、問題点はやはりクルマ作りの体制や思想を変えてしまったこと、クルマ作りに要する工数を大幅に省略したことに尽きると思う。
 企業にとって原価低減は必然であり、トヨタ方式の強力な原価低減は他の自動車メーカーを戦慄させるにじゅうぶんであったが、クルマ作り、熟成という本質的な部分にま大きなで影響を与えたことが最大の問題点であり、これを失われた10年と呼ぶゆえんである。
 2009年に就任した豊田社長は、規模の拡大を急ぐあまり人材育成が追いつかなかったと語っており、その結果多くの見落としや体制の不備が発生したことを認めている。
 また技術開発的にも、1997年に発売されたプリウス以降停滞しているのも事実である。
 これらの問題点を解決すべく、トヨタの豊田社長ははとりあえず舵を切った。
 ただ、かつてのCEのような、クルマ開発のプロフェッショナルは世代交代によりもはや現役ではなくなっているので、新たな体制の下でクルマの開発を行うための人材不足はしばらく続くものと思われる。

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