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リコールに見るトヨタの失われた10年を考える(1)

 すべての発端は2009年秋にアメリカで発生したレクサスの暴走による死亡事故だった。
 この事故は、アクセルペダルが2重に敷いたフロアマットに引っかかり、走行中にアクセルペダルが戻らなくなったのが原因で最終的にレクサスは大破した。走行中にこのレクサスの乗員は電話で警察に助けを求めた音声記録が残り、マスメディアでセンセーショナルに取り上げられた。
 調査したトヨタは、ユーザーが追加した2重のフロアマットが原因による事故として、ただちにリコールを考えなかった。
 またこの件が引き金になり、トヨタの他車種でも走行中にアクセルペダルの戻りが悪くなり、ドライバーの意志に反して加速を抑制できない事例が2007年以来報告されていることがアメリカ運輸省・交通安全局により明らかにされた。
 これはアメリカの部品メーカーのCTS社が製造したトヨタ仕様の電子スロットル用アクセルペダルが使用条件により戻りが悪くなることが原因であった。
 この不具合情報に関してもトヨタUSAは調査に時間を費やし、迅速な対応を行わない印象をアメリカ運輸省・交通安全局に与えた。もちろんトヨタUSAはリコールを行う権限を持っていなかった。運輸省・交通安全局はトヨタに対してリコールするように要請した。トヨタ本社の対応は明解さやレスポンスのよさに欠けていたが、けっきょくリコールを決断することになる。
 年末にはアメリア運輸省・交通安全局はトヨタ本社を訪れ、トヨタとリコールの実施を再確認したが、ラフード長官はトヨタ側の決断の遅さに不快感を示したという。
 アメリカ市場を舞台にした一連の動向は、GMの破綻後、GMとの合弁自動車製造会社NUMMI(ニューユナイテッドモーターマニュファクチャリング会社)をあっさり閉鎖することを発表したトヨタに対し雇用を重視するアメリカ政府の政治的プレッシャーという穿った見方もある。けっきょくトヨタは、一連の不具合に関してUSAの社長のみならず豊田章男社長までアメリカ議会の公聴会で証言を行わざるを得ない事態に追い込まれた。
 その後、トヨタは電気自動車製造ベンチャー企業のテスラーと業務提携を行い、旧NUMMIは新たにテスラーとの共同製造工場とすることで決着をつけた。
 つまり、トヨタはGM破綻にともなうNUMMIの閉鎖決定によって引き起こされる政治的な反応を検知できなかったといえる。そもそもトヨタと GMの合弁事業は、日米貿易摩擦の過程から生まれた政治政策的な事業であったにもかかわらず、である。
 北米市場をメインにしたトヨタのリコール台数は700万台以上に達した。
 
 
 結果的には、同じトヨタ仕様のCTS社製のアクセルペダルは、イギリス市場では実は前年にリコールを実施していたことが判明した。つまりトヨタ本社内のイギリス市場担当品質管理部署と北米担当の品質管理部署の品質に関する情報の共有が行われていなかったことが明らかになる。
 またこの大規模リコールと連動して、日本において新型プリウスのブレーキ問題がマスメディアで取り上げられた。発売直後の2009年から国交省サイトの不具合情報報告ページに新型の30型プリウスがある条件でブレーキの効きが弱くなるという現象が報告されていた件がマスメディアによって大々的に報じられたのだ。
 この件でもトヨタの対応は後手に回り、的確ななユーザー不具合情報を持っていなかったことや、報告されたような現象が発生する可能性はあるがリコールに値するような問題ではないという認識を持ってマスメディアに対応したことが逆効果を生み、国交省の指揮のもとでけっきょくリコールを行うことになうことになった。さらにプリウス問題に関して豊田社長自らが説明会見を開かざるをえなかった。その一方で、おそらく社内の実験部門では以前から問題点を把握していたことも推測された。
 業界的な視点で言えば、世界的な自動車製造のリーディングカンパニーであるトヨタの情報収集能力や企業の見解、意志を発表する広報体制が崩壊していることをあらわにしたといえる。かつての雪印事件や三菱事件と同等レベルで、危機管理体制は皆無に等しかったといわざるをえない。
 
 
 北米での大規模リコールと日本を舞台にしたプリウス・リコール問題により、トヨタ社長は社内体制の再構築を決定した。
-----------------------------------------------------------ニュースリリース
 2月17日:今まで以上に各地域のお客様の声に耳を傾けるために、各地域の品質特別委員「チーフ・クオリティ・オフィサー(Chief Quality Officer)」を新たに任命し、「グローバル品質特別委員会」を設置する。各地域のお客様の声をより早くダイレクトに、品質本部・開発本部に伝え、品質改善に結びつける仕組みの強化として、まずは米国において、技術分室の増強により情報収集の網の目を細くし、原則24時間以内に現地に向かい、一件一件調査できる体制を目指す。
 
 3月30日:第1回「グローバル品質特別委員会」(委員長:豊田社長)を開催し、各種業務におけるお客様視点の強化に向けた抜本的見直しを各地域事業体含め全社一丸となって取り組むことを確認した。
 委員会には、北米、欧州、中国、アジア・オセアニア、中近東・アフリカ・中南米の各地域のお客様の声を代表する「Chief Quality Officer(以下、CQO)チーム」をはじめ、社内の各機能の代表者、及び関係者が出席。リコール等の品質問題の要因を検証しながら、「設計品質」、「製造品質」、「販売品質」、「サービス品質」の全ての工程における振り返りを実施。各地域のお客様の視点を踏まえ、グローバル規模での情報共有の強化、活動の高い透明性確保を念頭に、各種課題の解決に向けた改善内容を策定した。
 会議の内容
【リコール等の市場処置決定について】
各地域の車両品質責任者がお客様の声をお聞きし、グローバル本部でのリコール等の市場処置決定に参画して、お客様の声や地域の意思が確実にリコール等の市場処置決定に反映される仕組みを構築する。
各地域のCQOチームやリコール検討に参画する車両品質責任者は、苦情、不具合、リコール情報等をグローバルに素早く共有する。
これらを実現することにより、「地域とグローバル両面で、最適かつスピーディなリコール等の市場処置決定プロセス」の構築を図る。
【情報収集力の強化】
できるだけお客様に近いところで品質情報を収集する体制を各地域で強化。一例として、米国ではSMART活動により迅速に現車確認を実施する。また「技術分室」を北米では現在稼動中の1ヶ所を7ヶ所に拡充するとともに、欧州7ヶ所、中国6ヶ所、その他地域についても同様に新設予定。
事故原因の究明のため、北米では当局と連携しながら、事故時の車両状態及びドライバーの操作状況の把握ができるイベントデータレコーダー(EDR)の使用環境を整備し、調査への活用を拡大。他地域においてもEDR調査について当局と話し合い、活用の検討を進めていく。また、既存のリモート通信機能(G-BOOK等)を通じ、品質改善につながる情報収集の仕組みを構築する。
【タイムリー・的確な情報開示】
地域レベルの品質向上活動内容を各地域の外部専門家に評価を依頼することに加え、
「グローバル品質特別委員会」で策定された改善内容についても外部の各種専門家・有識者4名により確認・評価を実施。「グローバル品質特別委員会」の第1回の評価結果については2010年6月頃を目途に公表予定。
メーカー・販売店が一体となり、安全技術や安全運転の方法など、お客様のクルマの安全使用に寄与する啓発ツール等を活用したコミュニケーションを充実する。
【製品のさらなる安全性と安心の向上】
より迅速かつ確実にお客様の声を設計に反映するために、専門部署を技術部内に設置する。
お客様のさらなる安心のために、アクセルペダルが踏み込まれた状態でブレーキペダルが踏まれた場合に、エンジン出力を抑制するBOSを2010年より、世界各地で生産されるモデルに順次搭載する。
【人材育成】
品質管理のプロを各地域で育成すべく、2010年7月迄に「CFトレーニングセンター」を日本、北米、欧州、アジア、中国に開設。

 4月30日:技術管理本部に設計品質改善部を新設。お客様の声のより迅速な設計への反映と製品開発プロセスの見直しによる設計(図面)品質の更なる向上を図る。
 
 7月30日:日本科学技術連盟と外部専門家による「品質保証体制の改善に関する評価報告書発表。内容はより迅速にユーザー不具合情報を把握する体制を構築することと、重要問題発生時の社内外コミュニケーションの改善。
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 このように矢継ぎ早に社内での体制、特に品質管理体制の見直しが行われた。
 また、従来はリコールに対して抑制的な姿勢を改め、不具合が発生した場合は従来よりリコール判断基準を下げ迅速にリコールを行うことも決定した。
 リコール制度は設計や製造段階を原因とする不具合が発見された場合、道路運送車両法第63条の3に基づき、メーカーが国土交通大臣へその旨をあらかじめ届け出て、該当する製品を無料で修理をする制度のことで、一般的には安全上で重大な危険を招く恐れがある場合に実施すると考えられている。実際には不具合対策として、リコール以外に、改善対策 、サービスキャンペーンというレベルがあり、どのレベルの対策を行うかは自動車メーカー側の考え、国交省との協議によって決定されるので、自動車メーカーにより温度差があるのも事実だ。
 かつての例では、スバルがアイドリング制御の不具合により一部の車両でエンストする可能性があったため、ECUの交換をサービスキャンペーンで実施しようとしたが、国交省との対応がまずく、国交省の指示によりリコールに変更された例がある。三菱自動車、三菱ふそうのリコール隠し事件も、当初はサービスキャンペーン、あるいは改善対策といったレベルで国交省と協議済みであったようだが、実際にはマスメディアの報道が先行し、最終的に事故の裁判では「事故原因を(部品の)強度不足と断定できなくても、その疑いがあった時点でリコールすべき」と言う判決が出された。
 つまり当初のリコールの概念より拡大した解釈がこれで一般化したといえる。
 その一方で、VW社のように設計、テスト段階では発見できず市場で発見された不具合は事象の大小によらず躊躇なくリコールを実施するという企業ポリシー持つ例もある。こうした点はメーカーによりかなり温度差があるのも事実だ。
 結果的にはトヨタもリコールをできる限り抑えるという発想から、市場で不具合が発見された場合は迅速にリコールを行うことになった。
 いうまでもなく、クルマのリコールは、販売台数が多いほど膨大なコストを要する。市場で販売された車両を全車追跡し、対策部品への交換を100%完遂する必要があり、販売店にも大きな負担を課すことになるからだ。しかし、そうしたコストや工数負担よりもメーカーとしての責任や信頼を重視せざるを得なくなっている。
 
 
 しかし、これらと相前後して、ある意味でより深刻な不具合、リコールがトヨタで発生する。
 4月にはアメリカのコンシューマーリポートの指摘により、レクサスGX460(ランドクルーザー・プラド)が高速の右カーブで急激にステアリングを切った場合、VSC(ESC)が適切に作動せずスピンにいたるという案件である。トヨタは、同車は燃料タンクが左側にあり左ハンドル車では、重心が左寄りになる。このため車両傾斜制御(KDSS)とVSCが採用された車両で特に18インチタイヤ装着車はVSCの効きが弱まるときがあると弁明したが、リコールを決定した。
 これは車両テストが行われていなかったことを意味しているのではないか。
 あるいはテストでは確認されていた現象であるにもかかわらず、発売されてしまったのではないのか。
 5月21日にはLS460、LS460L、LS600h、LS600hLの可変ギヤ比ステアリングの制御プログラムのリコールが行われた。「ギヤ比可変ステアリングシステム(VGRS)の制御プログラムが不適切なため、通常の据え切り操作から急ハンドルのような素早い戻し操作をすると、一時的にハンドルの中立位置が大きくずれることがあります」という内容だ。この現象は発売時から認識され、取扱説明書にも中立位置がずれる場合があると記入されていたが、けっきょくリコールに踏み切った。
 つまり現象は把握されながら発売されていたのだ。

 また7月には、クラウン、レクサスGS350、GS450h、GS460、IS350、LS460、LS600h、LS600hLで、「動弁機構のバルブスプリングの材料中に微小異物があるとスプリングの強度が低下して折損することがあります。そのため、異音が発生してエンジン不調となり、最悪の場合、走行中にエンジンが停止するおそれがあります」としてリコールを決定した。
 これも衝撃的なリコールである。これが発生した場合にはエンジン停止ではなくエンジン破損である。他社を含めてこうしたクルマの基本要素に関するリコールは前代未聞といえる。また、単純に部品メーカーの一定ロットの部品(バルブスプリング)不良であったとはとても考えられない。
 対策としては、販売店でシリンダーヘッドを分解し、バルブスプリングを交換するというかつてないリコール作業が行われることになったが、販売店でこうした作業を行った場合、精密なバルブクリアランス調整は本当に実施できるのだろうか。

 同じ7月には、ランドクルーザーが「ステアリングシャフト連結部の構造が不適切なため、大きな段差乗り越え時にシャフトの抜け方向の固定部品が外れることがあります。その状態で、ハンドルを一杯に切る操作を繰り返すとシャフトが抜け出して、かじ取り操作ができなくなるおそれがあります。」としてリコールされた。
 これはヘビーデューティ・クロスカントリー4WDとして致命的ではないのか。
 実は2005年にランドクルーザープラド、ハイラックスサーフが「ロアアームとナックルアームを連結しているボールジョイント内部の組付け工程が不適切なため、ジョイント球面部に傷がついたものがあります。そのため、そのまま使用を続けると、ボールジョイントの摩耗が早期に進行してガタが増大し、最悪の場合、ボールジョイントがナックルアームから外れ、走行不能に至るおそれがあります」といったリコール例や、2006年に同じくランドクルーザープラドで、「リヤアクスルシャフトのフランジ部の強度が不足しているため、高速で山間の屈曲路等を繰り返し走行すると、フランジの付け根部に亀裂が発生するものがあります」としてリコールが行われている。
 これらは、リコールとして最も多い、部品の組み付け不良、特定部品の不良などとは次元が異なる重大なリコールといわざるをえない。
 プリウスのリコールは、確かにリコール前でも車両としては安全基準をパスしており、特定の条件化でドライバーがブレーキ力を適切にコントロールすれば、危険といえるまでの事態にはならないレベルであったが、バルブスプリングやステアリングシャフトの不具合は、それとはレベルが異なるのは明らかだ。
6月にはカローラ系で、「助手席用エアバッグのインフレータ(膨張装置)内のガス発生剤組付け作業が不適切なため、ガス発生剤の装填量が不足しているものがあります。そのため、車両の振動でガス発生剤が粉状となり、エアバッグが展開するとインフレータ内圧の異常な上昇で容器が破損して構成部品が飛散し、乗員が負傷するおそれがあります」というリコールが行われているが、内容的には一般的で、ありがちなリコール事例だ。
 こうしたいわば常識的なリコールとは根本的に異なるクルマとしての生命線にかかわるリコールがあったのである。
 いいかえれば、リコールというひとつの対策以前の、クルマ作りに関わる大きな問題が背景に横たわっていると考えざるを得ないのである。

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