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コンチネンタルタイヤの小研究

 ドイツのコンチネンタルタイヤは、現在ではヨーロッパ車の標準装着率はNo1で、ミシュランとともにタイヤのビッグ2である。

conti.jpg

 しかし日本では知名度が極端に低く、情報もほとんどないのでその実像がわかりにくい。
 かつてはヤナセが輸入代理店となっていたが、現在は日本法人の取り扱いになっている。
また、企業名はかつてはコンチネンタルタイヤであったが、現在ではコンチネンタルAGと呼ばれるドイツの巨大自動車部品サプライヤーに変貌し、タイヤはその1部門であることも知られていない。言い換えれば、自動車用のコンポーネンツメーカーとしてタイヤを生産しているのはコンチネンタルだけで、その他のタイヤメーカーは純粋なタイヤ専業メーカーだ。ここにコンチネンタルタイヤのユニークさがあるように思われる。

 コンチネンタルタイヤの創業は1871年と古く、自転車用のタイヤとドイツ車用のタイヤ製造を行っている。戦前のメルセデスやアウトウニオンのグランプリレーサーのタイヤはすべてコンチネンタルであり、1929年にはドイツのゴム工業企業を吸収合併して一大企業となった。
 戦後はマッド&スノー(M+S)、世界初のスタッドレスタイヤ(コンチ・コンタクト)を発売するなど革新的であったが、グローバル化対応が遅れてしまった。しかしドイツの自動車工業のバックアップを受ける形で再生をはかる。
 アメリカ資本のユニロイヤルタイヤの買収(1979年)、オーストリアのセンペリットタイヤの買収(1985年)を行うなど規模を拡大。
 ドイツ車の標準装着タイヤメーカーNo1の地位を確立した上で、さらに1998年にアルフレッドテーベス社と合併し、シャシー、ブレーキ・コンポーネンツ事業を取り込んだ。近年では2006年にモトローラ社のカーエレクトロニクス部門を買収、さらに2007年にはシーメンスVDOオートモーティブを買収した。
 この結果、コンチネンタルAGはブレーキシステム(ABS、ESCを含む)、エアバッグシステム、センサー類では世界No1のシェアを占め、ピエゾ・コモンレール噴射システム、補機ベルト、CVT、DCTなどでもライバル企業とわたり合っている。またハイブリッドカー用のシステム&コンポーネンツ、ターボチャージャー(旧KKK)、テレマティックス、マルチメディア、メーター類(旧VDO)などもラインアップする巨大パーツサプライヤーになっているのだ。
 タイヤ事業は依然としてAGのメイン事業であるが、よりクルマ寄りの、つまりシャシーやABSブレーキシステムを前提にした開発を行い、革新的なタイヤを作り出すことでドイツ企業としての枠を超え、グローバルに展開していおり、ドイツ圏のクルマだけではなくフランス車などにも幅広く採用されるようになっている。
 かつて日本では自動車メーカーのエンジニアはタイヤメーカーに向かって「クルマがわかっていない」といい、タイヤメーカーは「自動車エンジニアはタイヤが分かっていない」と相互に嘆くという笑えない状態にあったが、少なくともコンチネンタルタイヤにはそうした弱みは皆無なのだ。
 
 コンチネンタルタイヤが企業としての基盤再構築を終え、タイヤの革新を成し遂げる過程で誕生したのがスポーツコンタクトだ。
 シリカ・コンパウンドを採用するとともに、独自のタイヤ設計コンセプトを採用した。
 設計コンセプトは、マクロ/ミクロ・コンタクトコンセプトと呼ばれる。マクロ=キャットポー(猫の手)設計、ミクロ=前後方向と左右方向の弾性をコントロールしたスパイダーウェブ(くもの巣)コンパウンドを意味する。
 キャットポーとは、猫が着地する時のようにブレーキング時に接地面積が拡大し(接地面がフラットでなおかつ拡大する)て制動力を高めること、スパイダーウェブは前後方向の剛性と左右方向の剛性をコントロールすることでハンドリングとブレーキ、トラクション性能を両立させることを意味する。
 扁平率の大きなハイパフォーマンスタイヤは、構造設計の上からケース剛性を高める必要があり、結果的に接地面変化が急激になりやすいが、その問題点にフォーカスを当てているといえる。

接地面1
↑第1世代と第2世代の高速走行時の接地面圧比較

せり上がり
↑高速走行時の接地面圧の均一化のためのキャップベルトデザイン

 もうひとつの特徴は、ABSの特性を研究した上でのリブ重視のトレッドパターンである。

リブラグ接地圧分布
↑ラグパターンとリブパターンでの接地面圧の相違

 コンチネンタルのこうしたコンセプトをベースにさらに新しいスポーツコンタクト2を生み出した。このスポーツコンタクト2の性能が高い評価を受け、ハイパフォーマンス・タイヤのベンチマークとなり、結果的にヨーロッパの多くの高性能車に標準装着されるようになっている。
 (注:タイヤ業界におけるハイパフォーマンスタイヤという呼称は、タイヤの諸性能を全方位で高めたタイヤを意味する。当然タイヤメーカーにとってはフラッグシップに相当する。しかし日本のメーカーの場合はその存在感が希薄で、宣伝もほとんど行われない。逆に宣伝されるタイヤは補修市場向けの特定性能だけを突出させた銘柄である)
 スポーツコンタクト2の後に、さらにシリカの含有量を増した性能向上タイプのスポーツコンタクト3を送り出したが、今年中には、新たにナノカーボン粒子(従来以上にゴムの柔軟性と耐摩耗性を両立)、デュアル・トレッドコンパウンド(ベース・コンパウンドの剛性を高くし、表面のトレッドコンパウンドはグリップ重視とすることで転がり抵抗の低減とグリップ力を両立)、コーナリング時のドライグリップ向上、ステアリング・レスポンスとプレシジョン(正確さ)の大幅な向上(太いセンターリブとアウター側のマクロブロック形状)、転がり抵抗の低減を目指したスポーツコンタクト5が登場する。

コンチ5
↑スポーツコンタクト5の性能

 性能面では、低転がり抵抗、ウェット/ドライグリップの向上と、ステアリング・プレシジョンを大幅に高め、燃費と安定性、ドライビングプレジャーや快適性の向上を狙ったと考えられる。
 なおコンチネンタルのタイヤはいずれも純正装着タイヤであり、メーカー承認を得ていることも注目したい。ヨーロッパでは、新車時のタイヤが磨耗してタイヤを交換する場合でもメーカー承認を受けた同じブランドの同じにタイヤに交換するのが常識で、この点は日本やアメリカ市場とは大きく異なる。
 そのため、コンチネンタルタイヤは、市販店頭の補修用であってもメーカーごとの承認マークがサイドウォールに刻印されたタイヤが販売されているのも異例といえる。
 現在の自動車メーカーは、ハイパフォーマンス・タイヤであっても、ドライ/ウェット・グリップや耐磨耗性以外に、転がり抵抗の低減、乗り心地を重視しているので、これらの点も標準装着タイヤに盛り込まれている。
 
 コンチネンタルタイヤの技術的な特徴は、接地圧の均一化(特に高速走行時の均一化や真円度の高さ=高速走行時の接地感や安定感、より良いロードホールディングをもたらす)、排水性と横方向グリップ&剛性の両立(太く深いセンタグルーブによる高速走行時の排水性とステアリング・プレシジョンを両立させる)、転がり抵抗の低さとグリップ(特にブレーキング時)の両立である。
 ウェットグリップや低転がり抵抗を達成するためにフル・シリカコンパウンドを採用。シリカ配合が多量の場合はタイヤに静電気が帯電するため、トレッドのセンター部にカーボンベルト(非シリカ帯)を設け、アース放電するようにしている。逆にいえば、アース放電させなければならないほどシリカ含有量が多くしているのだ。

コンパウンド
↑最新世代のシリカ配合の特徴

 シリカは親水性を高めウェット・グリップを高めるだけではなく、低温グリップ性や耐摩耗性を高める役割があり、コストが高くなるものの現在ではタイヤの重要な配合剤となっている。したがって、シリカの多量の配合や、構造材にアラミド繊維などを採用すると、タイヤのコストは高くなる。現在はオープンプラス製であるため、販売価格の高さは材料コストをある程度反映していると考えるべきだろう。
 タイヤのゴムは低温度域では硬化し、グリップが低下する傾向を持つが、低温でのウェット路面が多いヨーロッパでは、低温時のブレーキ・グリップ力は日本とは比較にならないほど重視されている。このためシリカをより積極的に採用しているといえる。

グルーブ断面
↑幅広で8mmと深いセンターグルーブの断面形状デザイン。操舵感やグリップを配慮した技といえる

 接地面圧の均一化のため、コンチネンタルはリブパターンを基調にしたパターンデザインが特徴になっている。
 通常のハイパフォーマンスタイヤは、大型のブロックを設けたリブ&ラグ・デザインだが、コンチネンタルタイヤは、ABSの制御特性を踏まえ、あえてリブを重視したパターンとしているのだ。
 ABSなしでのブレーキ性能比較では、ブロックパターンの方が特にスリップ率が大きくなるほど有利だが、ABSの制御領域ではむしろ接地面圧が均一なリブパターンの方が有利になる。またコーナリング時の方向安定性もリブパターンの方が有利なのである。

リブラグとABS
↑ラグパターンとリブパターンの雪上でのグリップ比較。青線がラグ、グレー線はリブパターン。ABS制御域では
 リブパターンが有利。

 滑りやすい路面でESCが作動した場合、ラグ型重視のパターンはグリップが回復するプロセスで急激にグリップ力を生じ、逆方向のヨーモーメントの大きくなり、車両の安定収束を乱すケースもあるという。

リブラグ安定性
↑ESC作動時のラグパターンとリブパターンでは修正モーメントに違いが出る。

 また、転がり抵抗や接地面圧の均一化はリブパターンの方が有利だ。
 これらの理由で、コンチネンタルタイヤはリブを基調としたパターン・デザインが採用されている。リブパターンで弱点とされる側面方向への排水性は、3Dグルーブと呼ばれる放射状の横溝で確保されている。
 接地面圧の均一化や高速真円度に貢献しているのはトレッド補強ベルトのフラット配置である。このベルト配置により、高速走行時のトレッド面の荷重の不均一化を抑え、接地面の安定をはかっている。
 日本ではハイグリップ系のスポーツタイヤはソフトなゴムを採用することが多いが、これは耐摩耗性と背反する。したがって、月間走行距離が日本の数倍となるヨーロッパでは耐摩耗性の観点からこのような手法は受け入れられない。
 このためトレッドゴムは日本のメーカーのハイパフォーマンスタイヤより硬めで、タイの構造やゴム配合によりグリップ性能を確保しているといえる。

ブレーキ接地
↑ベースタイヤと第2世代のブレーキ接地面の相違。このコンセプトによりブレーキグリップの進化が行われている

 概略では、日本製のハイパフォーマンスタイヤよりゴム配合は、1~2ランク硬く、逆に耐磨耗性は1.5~2倍。高速域での排水性が高い、ウェットブレーキ性能が高め(特に低温域)、乗り心地は硬めだが減衰性に優れている、高速域での安定感、ロードホールディングが良好・・・といった特徴になるだろう。
 
 コンチネンタルタイヤは、自動車メーカーの標準装着を前提にしたタイヤ作りをしていること、小型車、大型車、ハイパフォーマンスカーといった用途別はあるにしても基本は1種類のタイヤしか製造していないこと、ABSやESCといったシャシー電子制御を前提にしたタイヤ設計を行っていることなど、他のタイヤメーカーとは大きく異なるところといえる。

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Re: 316Compact さん

コメントありがとうございます。

> 15年ほど、BMWの3シリーズのあれこれを乗り継ぎましたが、自分のお気に入りのBS、ちょっと縁がなかったミシュラン(←評価はダントツ、というほど良くないのに、値段はダントツ)、悪くはないが消去法で選んでしまうダンロップ、意外にがんばっているピレリ、やっぱり値段なりらしいFuldaといったところまでは、だいたい予想内の感触でしたが、ContinentalのPremiumContactを使った時には、ずいぶん違う印象を受けたことをよく覚えています。今日、ちょっと理由(背景)がわかった気がします。

実際、タイヤ選びは自分で試せるわけではないし、外見では判断がつきにくいので難しいですね。また価格にとらわれがちですが、耐磨耗性を考えると、多少販売価格が高くてもコストパフォーマンスは逆転するケースもあります。

> 実際、前述のAM&S誌でも、ADACの会報でも、そのようなことがないことを前提に、年2回のタイヤテストのレポートが書かれて掲載されていたと理解しています。

これについては、事故に関する裁判などで、承認タイヤ以外をユーザーが選択すると、その分マイナス要素になるとのことですが。もちろん承認以外にタイヤごとにロードインデックス、速度レンジなどの規格がありますので、上位交換をするのであればそれほど問題ではないと思いますけど。

No title

最近いつも読ませてもらっています。

ドイツ語圏に住んでいたときには、AutoMotor&Sportを毎号読んでいましたが、Continentalが特に取り上げられることは意外になく、今やタイヤだけじゃないんだよ、くらいには知っていましたが、今日はいい勉強になりました。
15年ほど、BMWの3シリーズのあれこれを乗り継ぎましたが、自分のお気に入りのBS、ちょっと縁がなかったミシュラン(←評価はダントツ、というほど良くないのに、値段はダントツ)、悪くはないが消去法で選んでしまうダンロップ、意外にがんばっているピレリ、やっぱり値段なりらしいFuldaといったところまでは、だいたい予想内の感触でしたが、ContinentalのPremiumContactを使った時には、ずいぶん違う印象を受けたことをよく覚えています。今日、ちょっと理由(背景)がわかった気がします。

ひとつだけ僭越ながら指摘させていただくと、私の周囲で見ている限りでは「タイヤを交換する場合でもメーカー承認を受けた同じブランドの同じにタイヤに交換するのが常識」ということはないと思います。あったとしても、ごく一部の高級車にとどまると思います。
実際、前述のAM&S誌でも、ADACの会報でも、そのようなことがないことを前提に、年2回のタイヤテストのレポートが書かれて掲載されていたと理解しています。
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