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ブレーキアシスト・システム(BAS)

 メルセデスベンツの市販モデルにブレーキアシスト・システム(BAS)が採用されたのは1996年モデルからである。
 ABSが初採用されたのが1978年であるが、ABSの採用にあたり電動ブレーキ液圧ポンプが装備されたため、このポンプ液圧を使用することで、ECD(電子制御デファレンシャル)、ETRC(トラクションコントロール)、さらにはESC(スタビリティ・コントロール)などに発展した。その過程でBASも登場したといえる。
 日本ではトヨタでもメルセデスベンツよりやや遅れて登場し、トヨタ以外のメーカーも数年で普及させている。
 BASはあまりコストをかけることなく採用できるので、普及が早かったと思われる。
 ただし、BASは本来はABSのポンプ液圧を使用するが、簡易型としてマスターバックで機械的に最大制動力を引き出すタイプも登場している。


↑BASの作動(出典:トヨタ)
 
 スウェーデンの交通安全コンソーシアムの研究結果では、30km/h以下での交通事故の事例では、ブレーキをまったく踏んでいない(わき見、不注意、居眠りなど)、ブレーキを踏むのが遅れた(不注意、パニック)、ブレーキ力が弱い(パニック、ブレーキスキル不足)が75%以上とされている。
 これは累積された実際の交通事故の調査研究をもとに最近発表された結果であるが、20年以上前からベンツ社は独自のアプローチを行っていた。
 その重要なツールが、ドライビング・シミュレーターであった。

driving_s.jpg
↑ベンツ社のドライビングシミュレーター。現在は最新式に更新され、これは使用されていない。


↑ベンツ社のドライビングシミュレーター。テストしているのはBASプラス

 これは実車が収納できる大掛かりなドライビング・シミュレーターで、一般的なドライバーにステアリングを握らせ、さまざまな走行シーンでの運転操作を分析した。つまりクルマそのものの動きより、ドライバーの心理や行動から安全性を探ったのだ。
 その過程で、一般のドライバーの70%は、事故が発生する寸前の危険な状態でもブレーキ踏力が不足していることが判明した。
 通常は、衝突事故を起こす寸前のブレーキは「パニックブレーキ」と呼ばれるが、パニック状態にもかかわらず、あるいはパニック状態であるがゆえに、最大のブレーキ力を得るためのブレーキ踏力が不足していたのだ。
 この結果から、ベンツ社は、緊急時特有のブレーキペダルを踏み込む速さやストロークを検知して、パニックブレーキと判定されると自動的にポンプ液圧を最大限にかけるBASを実用化した。

ph_technical_21b.jpg
↑BASのイメージ図

 トヨタはBASの開発にあたり、テストコースで事務職を含む多くの社員を動員して、緊急ブレーキテストを繰り返したという。テストモードとしては、ドライバーには情報を与えず、見通しの効かないカーブの先に障害物を置くというものだったようだ。
 テスト結果は、45%のドライバーが不十分なブレーキであった。

brake踏み
↑トヨタの調査結果

 ベンツ社より不十分なブレーキのドライバーの比率が少ないのは、おそらくテストコースという条件だからと思われる。ベンツ社のドライビング・シミュレーターは、一般的な道路環境が再現されている。
 なお、2009年11月から、EU ではブレーキアシストシステムがすべての乗用車と軽商用車の新型車に義務付けられ、2011年2月からすべての新車に適用されている。これは道路交通における歩行者安全性向上を目的とした新 EU 規制のひとつだ。
 
 なぜ、一般のドライバーは衝突する危険の直前にもかかわらず、じゅうぶんな、最大限に強いブレーキがかけられないのか。これは単純に、ブレーキをかけることに対するスキル、経験がないものと考えられる。
 一般に、運転操作には個人特有のパターンが身についている。市街地でも高速道路でも、
その人によって使用するブレーキのパターンは一定化し、弱いブレーキを好むドライバーは市街地でも高速道路でも、つまり車速に関係なく日常的に弱いブレーキを踏む。また、かなり強めのブレーキを多用するドライバーでも、公道では最大0.4gていどのブレーキとされる。
 これに対して、差し迫った衝突を回避するハードなブレーキは0.8g以上であるが、日常のブレーキはそれよりはるかに弱いブレーキなのだ。
 最大限に強いブレーキを踏んだことがない、経験したことがない、したがってスキルがないというドライバーが圧倒的に多いのだ。逆にいえば、安全運転スクールなどで最大限のブレーキを体験したドライバーはブレーキのスキルを備えているはずだ。
 もうひとつの重要なのは心理的な要素だ。例えば、日頃からレースで最大限のブレーキを多用する、ブレーキに関して高いスキルを持つレーシングドライバーでも、公道上で思いがけず事故に巻き込まれるようなケースで、かならずそのときに必要な最大限のブレーキがかけられる保証はない。
 まして、一般ドライバーの場合は、衝突事故に巻き込まれる寸前の状態では心理的にパニック状態になり、筋肉が硬直して動作が遅れ、ブレーキも思い通りに踏み込めなくなる。
 このようにブレーキのスキルがないことと、心理的なパニックにより、危険な状態でもブレーキの踏み遅れと踏力の不足が生じるのだ。メルセデスベンツ社は、こうした心理反応面に着目しているのは注目すべきだ。
 
 安全運転スクールでは、基本メニューとして緊急ブレーキを体験することから始まる例が多い。通常はウエット路面で、強いブレーキをかけABSを作動させることを体験させる例が多いようだ。
 しかし本来は、ドライ路面、ウエット路面の両方で、ABSなし、ABSありの最大ブレーキを体験することが望ましい。
 ABSなしのケースは、もちろんタイヤをロックさせることで車体の安定が失われ、スピン状態になることを体験できる以外に、ABSの介入なしで最大のブレーキかけるにはどのていど踏み込めばよいのかが体験できるからだ。
 一般的には、通常のドライバーがABSなしの状態で最大限のブレーキをかけると、フロントタイヤがロックし、リヤタイヤはロックしない。もちろんこの状態でABSが装備されていればABSが作動し、それが最大限のブレーキと考えてしまうだろう。
 しかしながら、本当の最大限のブレーキは、4輪ロックの状態であり、ブレーキの踏み初めからできるだけ短時間で4輪ロック状態にするということだ。
 このときなイメージ的には、ブレーキペダルが折れるくらいの力の踏み込みで、右足に全体重をかけるような感じだ。ABSなしで一瞬で4輪ロックに持ち込むほどの至難だが、まず前輪がロックしたのを感じたら、そこからさらに一段強くペダルを踏み込むことで4輪ロック状態の最大ブレーキとなる。
 ABS装備車は、この違いが体験できないのだが、同じABS装備車でABSが作動しても踏力の違いで制動距離に差が出るのはのペダル踏力の差による。
 
 BASは、緊急ブレーキを判定されると自動的に最大限のブレーキがかかるが、実はその状態でも、完全なフルブレーキのスキルを持つドライバーと、非熟練ドライバーでは制動距離に少し差が出るのだ。

brake効果
↑BASの有無、熟練ドライバーと一般ドライバーの制動距離の差

なお次世代のシステムとして、ボッシュ社から衝突予知ブレーキアシスト( Predictive Brake Assist=PBA)がすでに登場している。(ベンツ社ではBASプラスと呼称)レーダーやカメラなど車両センサーの前方認識情報を活用することで、実際に事故が起こるよりも前に事故に備え始めることができるというシステム。
 PBAはアダプティブクルーズコントロールのレーダーセンサーからのデータを使用して、事故になる可能性のある状況、その中でも急ブレーキが必要となりそうな状況を検出し、パニックブレーキングの前にブレーキシステムを準備する。事前にポンプ液圧をブレーキシステムに供給してより早く必要なブレーキ圧が作れるようにし、ドライバーが気付かないくらいごく軽いブレーキをかけブレーキパッドをディスクに押し当てるスタンバイ状態とする。
 さらに、PBAは油圧ブレーキアシストシステムの作動のための閾値を3 段階で下る。
 さまざまな研究により、事故が起きる状況下であっても適切に反応し十分な強さでブレーキをかけることができたドライバーは全体のわずか 3 分の 1 であり、ほとんどのドライバーは躊躇してブレーキを踏む力が弱すぎて、油圧ブレーキアシストシステムが起動しないことがわかったという。(これはきわめて強いパニック状態の場合と思われ、特にヨーロッパのように200km.hといった高速走行時)
 ブレーキがスタンバイされていると、ドライバーがブレーキをかけると1/100秒単位でより早いフルブレーキング効果を得られる。この1/100秒がきわめて貴重で、生死を分ける場合があるのだ。 このようにPBAシステムは、従来のBASよりさらに早く緊急ブレーキを作動させることができる。

コメント

非公開コメント

わかりやすい解説です

ブレーキアシストについて調べていてここにたどり着きました。

カタログやメーカーWEBサイトではわずか数行の記述しかないメカニズムなので、無くてもたいしたことのない装備なのかと思っていたのですが、有りと無しでは制動距離がずいぶん違う装備だったのですね。

車を買う前に読めて良かったです。

Re:aaaさん

コメントありがとうございます。

確かにシートポジション、着座位置についてもまだまだ一般的には基本知識が普及していない
ようですね。

まず、力いっぱいブレーキを踏み込めるようにシートの前後位置調整をし、次にステアリングホイールに対するリーチをシートバック角度で調整するという順番が徹底されていないように思います。

No title

こんにちは

いつも日本には貴重な解説で拝読しております。

とこで、今回のブレーキについでですが、
ご指摘通り、通常では十分な踏力が出来ていないことが根本的な要因と思われます。
ただ、その要因の一つとして、シートポジションもあると思われます。
小生は、エンジンを掛け、ブレーキを一番踏み込める位置にシートスライド&リクライニングを合わせますが、
社用車に時々乗ると、ブレーキを十分踏み込めるとは思えないシート位置にあることが多々あります。
BASも重要ですが、シートポジションの啓発も必要と思われます。
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