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2009年から2010年へ

 昨年秋以来の経済危機、デフレーションの中で今年のクルマの販売は苦戦をきわめた。しかし、業界には思わぬ旋風が。いわゆるエコカー減税+スクラップ・インセンティブが導入されたおかげで特定の車種は大いに恩恵を受けたのだ。
 エコカーに認定されれば、自動車税、重量税、取得税など最大(100%適用)で総額約35万円の減税となり、購入時現在となり、さらに13年以上前のクルマを所有し、これを廃車にすることでスクラップ・インセンティブが25万円得られ、エコカー減税対象車は60万円ていど割安になるのだ。
 もっとも、もともと売れ筋のヴィッツやフィットなどコンパクト・サイズの売れ筋は50%~75%減税なのだが。
 したがって販売ではフィット、ヴィッツの販売首位争いに、100%現在のハイブリッド車が新規参入し、インサイト、そしてプリウスが参入。
 インサイトはフィットに迫る販売台数、月平均7000~8000台を記録。5月に登場したプリウスは爆発的なヒットとなり、月2万台を超える販売が持続している。
 現在でも受注から納期までに半年という、国産車にとっては驚くべき状態が続いている。
 プリウスの納期遅れは、主としてモーター、インバーター、バッテリーの3要素の生産レベルに限界があるからだ。
 もちろんトヨタにしても、月2万台超えの販売は予想外で、旧型は販売好調という位置付けながら月販6000台前後であった。
 プリウスの爆発的な販売は、メディアによるハイブリッド車の決定版といった極端な評価がクルマに詳しくない一般大衆を引き付けた上、減税の恩恵が付加されることで加速したと思われる。
 販売店の話では、販売トレンドから見ると、初代プリウスは燃費ではなく環境オタクが購入し、2代目は環境オタク層+燃費マニア層が、そして3代目は普通に一般人がなだれを打って購入しているそうだ。実際に、ほとんど試乗もしないでの注文も多いといわれる。
 もちろん、インサイトも、プリウスもマスメディアがいうほど低価格車ではなく、プリウスにいたっては300万円クラスで、日本のマーケットではかなり高価格ゾーンに入る。減税は100%対象だが、値引きはきわめて渋いはず。
 もっとも、ハイブリッド車の製造原価は、他のガソリンエンジン車より高く、利益率は圧縮されているはずで、メーカの利幅がそれほど大きいわけではない。
 歴史的に言えば、初代プリウスやインサイトは完全な赤字車種という特殊な存在で、プリウスは1台売ることに30万円ていどの赤字と噂されている。少量生産であったため開発費が償却できないことに加え、高価なバッテリーやインバーター、モーターが足かせになったのだ。
 収益体制は2代目で改善され、利益の出せるクルマにはなったが利益率は通常のクルマよりは低い。
 インサイトも初代のプロトタイプ/ハンドメイド体制からシビック・ハイブリッドを経て、収益が確保できるクルマに仕上げてきてるがやはり利益率は低めだろう。
 
 今年の空前のハイブリッド・ブームは、他のメーカーにも大きな影響を与えた。将来を見据えた電池メーカーの自動車メーカーごとの囲い込みを加速させた。トヨタは系列子会社のパナソニックEVエナジーで、日産はNECと、三菱はGSユアサ、ホンダはサンヨーやその他のメーカー、VWは東芝と連合を組んでいる。
 また韓国、中国のリチウムイオン電池メーカーは今後のハイブリッドカー、EVの行方を左右するかもしれない。ただ、いずれにしても現在のターゲットであるリチウムイオン電池は、コスト、量産性のいずれの点でも容易ではない。
 三菱、日産はEV路線を鮮明にし、トヨタ、ホンダはハイブリッドのフルライン化を、マツダは従来からの水素エンジン、既存エンジンの高燃費化、スバルはEVと4WDハイブリッド…といった流れを加速させ、2年前までのクリーン・ディーゼルの動きは止まってしまった。
 EV、ハイブリッド路線は日本でもてはやされているという理由より、アメリカ市場で重視されることになったことが世界的なトレンドを決めたといってもよい。欧州車ももはやターボディーゼル路線からハイブリッド路線に転換せざるを得なくなったのはアメリカ市場でのグリーン・ニューディールの影響が大であるといえる。
 ドイツでは、自動車メーカーのみならず、コンチネンタル/ATEグループがハイブリッドシステムを開発して自動車メーカーに納入しているなど、大規模システム部品メーカーの参入により、ハイブリッドカーの開発速度は予想以上に加速しているのだ。
 VWが開発している小型ディーゼルエンジンを使用したハイブリッドカーシステムは、プリウスなどをはるかに上回る燃費性能を持ち、同時にプラグイン・ハイブリッド車もすでに実現間近だ。もっとも、VWの開発ロードマップで、ハイブリッドカーやEV一本槍ではなく、天然ガスTSIエンジンなど、従来技術との組み合わせにより技術開発も進めており、こういう点では日本メーカーを上回っているのだ。
 EVは内燃エンジンに決別できるコンセプトではあるが、ハイブリッド車以上に電池性能に依存せざるをえないので、電池技術のブレークスルーがない限り、限定的な使用に限られる。航続距離がたとえ100kmまで伸延されたとしても、電池が放電してしまえばストップし、外部からの充電には時間がかかるという決定的な弱点を持っているからだ。
 また電池としても、満充電から完全放電までのサイクルを繰り返ため、条件は過酷なのである。
 そういう意味でEVは、ハイブリッドカー以上に普及するポテンシャルは小さいといわざるを得ない。

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