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ブレーキを踏む

 クルマにとってエンジンかそれ以上に重要な部分がブレーキだ。しかし面白いことに、ブレーキにも国情の違いがかなりあると思う。
 日本では、低速時に軽い踏力でよく効くこと、低速時に鳴きがでないこと、そしてブレーキ・ダストによるホイール汚れが発生しないこと、ブレーキ・ディスクは10万kmていどは無交換であることなどが求められるのだ。
  ブレーキパッドの摩耗は、そのクルマの特徴やユーザーの使用状況により大きく異なるが、平均的な一般ドライバーであれば4万㎞以上、車検2回目ていどまで寿命があるといいうのが平均的なレベルである。もちろんブレーキパッドは、加減速の激しいスポーツ走行で使用すれば1万㎞でだめになることもありえる。
 日本のブレーキはクルマの開発者が追求した部分とユーザーが求めたものが一体化されたものだと考えられる。
 販売店での代表的なトラブルのひとつにブレーキの鳴きの発生があり、販売店のサービス(整備)では、対症療法としてブレーキパッドの面取り、ブレーキパッド裏金へ防振グリスの塗布、防振板の差し替えなどが行われるが、ブレーキの鳴きは走行条件によって一定ではないため、何度も対策を行うことにならざるをえないのだ。
 このようにトラブルになりやすいため、鳴きが発生しないことを前提に、注意深く開発が行われる。しかしながら、この問題はブレーキの効きとはあまり関係がないのだが。
 逆にブレーキの効きに対するクレームは、どのメーカーのクルマでもほとんど生じないといわれる。
 日本のクルマのブレーキは、信号によるゴー/ストップが多く、都市部の市街地では平均速度が20km/hていど、郊外の道路でアベレージ40㎞/h、高速道路でもアベレージは80㎞/hと相対的に低速といった条件の中で育ってきたのだ。
 一方で、高速走行からのブレーキでは摩擦力が低く効きが弱い、数回の繰り返しブレーキでフェードを生じやすい、ブレーキの空気冷却がふじゅうぶんなためフェードからの回復が遅いといった弱点を持つ。
 だから、箱根ターンパイクの下りでカーブごとに強めのブレーキをかけ続けると、ターンパイクを下りきる頃には相当なフェードが発生し、ブレーキパッドから白煙が上がるのも珍しくない。
 ただ、2000年頃から日本の自動車メーカーはヨーロッパ向けなど輸出モデルのブレーキの弱点を解消するのに合わせ、国内モデルのブレーキ性能向上を企図し、従来までの伝統的なブレーキ性能から、ヨーロッパで要求されるレベルまで引き上げるプロジェクトが行われたており、トヨタ・ゼロクラウンではトヨタとして初めてBMW並みのフェードリカバリー性能が達成されたという。
 
 ヨーロッパでは、クルマのブレーキはどのように位置づけられているか。それも国情に由来するところが大きい。ドイツでは、アウトバーンで走行中に突然遅いクルマが走行車線に出てくるような状況で、150㎞/hから80km/hまで一気に急減速する、あるいは地方の丘陵地の多い一般道路で120㎞/hで走行中に、丘を越え視界が開けた瞬間に前方にトラクターが30㎞/hで走行しているのを発見し急減速するといったシーンが想定されており、厳密に低速走行が支持される市街地でのブレーキの関与度はきわめて少ない。
 イギリスでも、郊外の道路は100㎞/hていどで走行し、都市部以外は信号交差路がほとんど存在せず、ロータリー路方式のため停止する場面が少なく、ゴー/ストップという条件は考慮されにくい。
 フランスは、地方道路では100km/h以上で走り、ヨーロッパ随一といわれるほど平均速度が高いため、障害物や低速車を発見して急減速するシーンが重視される。イタリアは、平野部が少ないためフランスほど平均速度は高くないが、老若男女を問わず急加速、急減速という運転モードが主流。
 このようなブレーキの使用状況を考えれば、ブレーキの効き、減速力や減速感が最優先されることは自明である。特に140㎞/hから50㎞/hていどに強いブレーキをかけて急減速するようなシーンでのブレーキ性能が重視されるのだ。
 このように考えると、日本で求められているブレーキの性能や特徴とはまったく異なることがわかる。またヨーロッパの人々は、高速から強めのブレーキをかけるという特徴があることもわかる。とても軽くブレーキを踏む日本とはかなり違うのだ。
 
 しかし1980年代に、ベンツ社がドライビングシミュレーターを使用し、一般ドライバーに危険な状態を体験させたデータでは、70%のドライバーが危険な状態であるにもかかわらずフル・ブレーキがかけられないことが判明したのだ。この結果を受けて開発されたのがブレーキ・アシスト(BA)だった。
 危険な状態であることをブレーキペダルの踏み方で検出し、自動的にフル・ブレーキをかけるという仕組みだ。
 危険は状態が目前に迫っているにもかかわらず、最大限のブレーキがかけられないのは、危険に対する恐怖から身体が硬直し、思い通りに足が動かない、また例え動いたとしても通常使用しているブレーキ踏力以上に強く踏み込んだ経験がない・・・などといった心理的な要素が大きいと考えられている。
 だから、危険に直面した場合は、日常で使用しているブレーキ踏力ではなく、自動的に強制的に最大限のブレーキ力が発生できる仕組みが必要と考えられたわけである。
 日本では、トヨタがほぼ同様な実験を行い、やはりブレーキ・アシストを開発している。
トヨタの実験は、社員をテストに使ったようだが、結果的にはベンツの例と同じように70%ていどの人が危険な状態でもフル・ブレーキをかけられなかったという。
 しかし、日本ではヨーロッパのような高速からの強いブレーキは多用しないという特徴を考えると、トヨタの実験結果は少し楽観的過ぎると思う。
 日常的に使っているブレーキ踏力が弱く、瞬間的に最大限のブレーキ踏力まで踏み込むことはまず期待できないし、また恐怖心で身体が硬直するという現象も生じるから、日本人はヨーロッパでのテスト結果よりさらに甘いブレーキしかかけられないと思う。
 実際、ドライビングスクールや安全運転講習会では、濡れた路面でフル・ブレーキをかける、あるいはABSを切った状態でフル・ブレーキをかけるという体験を行うことが多いが、
危険な状態ではないにもかかわらず、フル・ブレーキに達しないケースがほぼ100%なのだ。
 ABS装備車では、ABSが作動すればフル・ブレーキと判定してOKとされるが、厳密にはそれは正確ではない。ABSを切断した状態でフル・ブレーキをかけ、ほぼ瞬時に4輪が同時にロックするような状態が、本当の意味のフル・ブレーキであり、ABS装備車の場合はABSが作動した状態した現実を見ると、日本ではブレーキ・アシスト装置は必須の装備ということが実感できる。
 
 日常的なブレーキ、危険を回避するためのパニック・ブレーキの他に、より過酷な条件での高速ハード・ブレーキも存在する。それは特に上級ドライバーが超高性能車を操ってスポーツ走行する時に求められるブレーキ走行で、単によく効くということだけではなく、コントロール性や安定感、安心感も合わせて追求されている。
 このようなケースはどのようなブレーキングなのか。
 次の例は、プロドライバーがニッサンGT-Rでニュルブルクリンクを走ったときのデータである。
 
brake_Gs.jpg
↑アレンベルク・カーブに進入・通過する時のデータで、250㎞/hから90㎞/hまで急減速し、最高減速Gは-1.5G、カーブを旋回中は最高横Gも1.5Gを記録している。

frequece3s.jpg
↑同じカーブでブレーキをかけたときのブレーキ・ローター温度、マスターシリンダー液圧の波形。-1.5Gにも達するハードなブレーキではディスク・ローターの温度も急上昇するため、その後はより早く放熱すること、マスターシリンダーでも遅れなくブレーキ液圧が立ち上がるといった微細な点も重要であることがわかる。

 こうしたブレーキは、ドンとペダルを奥まで踏み込み続けるパニック・ブレーキとは異なり、強く踏み込み、ABSが一瞬作動した後は路面やカーブの状況に合わせて微妙にコントロールしている。それは、クルマを停止させることが目的ではなく高速からの急減速と同時に車体の横方向のふらつきやタイヤのグリップ力を制御するからだ。
 またツーリングカーによる耐久レースなどでは、レース専用にブレーキの能力を大幅に高めることが規則で制限されていることが多く、レース形態が長時間走行するため、常時ブレーキの能力を100%
引き出すのではなく、70%ていどで車速をコントロールすることも珍しくない。その場合は、ブレーキのフェードやヴェーパーロックを抑制するための配慮で、ペダル踏力は、弱い反復(フェードやヴェーパーロックの状態を確認する)→強い踏み込み(車速を落とす)→弱いコントロール(ブレーキの負担を少なくしつつ旋回姿勢をコントロール)、といった操作をしながらカーブに進入するといった方法であり、軽量なフォーミュラカーなどとはブレーキ操作が異なるのだ。

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