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レーシング・エンジンを作る

 レース用のエンジンと言っても様々な種類がある。F1エンジン、インディカー用エンジン、ルマン24時間レース用エンジン、WRC用エンジン、ダカールラリー用エンジン、ツーリングカーレース用エンジンなど多様である。量産ツーリングカーレース用は量産エンジンを改造したものだが、それ以外は純粋な競技専用エンジンであり、専用設計である。ドイツのGTカーレースであるDTMなどは量産エンジンブロックを使用して入るものの、事実上はレース専用設計だ。
 純粋なレース専用エンジンは、通常は自動車メーカー内部のモータースポーツ部門のエンジン設計者が設計を行い、モータースポーツ部門で専門の熟練工が組み立てる・・・というのが一般的だ。
 このあたりはヨーロッパの自動車メーカーは手馴れたものだが、日本の場合はエンジン設計者の出発点はあくまで量産エンジンであり、いざレース用のエンジンを設計するに当たり、レースに関するノウハウを持っているかといえばそうでもないのだ。それはある意味では当然で、それまで学んできたのはすべて量産エンジンに関する知識や常識なのだから。
 ヨーロッパの自動車メーカーの多くははるか昔からメーカーチームとしてレースやラリーなどモータースポーツ活動を行い、膨大な自社設計のレース用エンジンに関する技術を蓄積してきた。かつての東ドイツの、ボール紙でできたクルマと嘲笑されたトラバントでさえも実はラリーやマラトン・ドラルートなどの出場していおり、それなりの技術やノウハウは持っているのだ。
 日本では、第1回、第2回日本グランプリでは全自動車メーカーがほとんど知識を持たないまま、市販モデルを改造したレース車を作って参戦した。しかしその後は多くの自動車メーカーが参加しなくなり、オイルショックや排ガス規制の始まりとともにすべてのメーカーがレース活動を休止した。またそもそも日本ではモータスポーツ部門はメーカーの社内で重視される部署ではなく、本物のエンジニアが技術を蓄積や継承していくような余地はなかったり、あるいは少なかった。
 では日本製のレーシング・エンジンはどのようにして設計されたのか。実態はヨーロッパのレース用エンジンの書籍による研究やヨーロッパ製のレース・エンジンを購入して検分しながら習得したのが実態であり、それ以外に設計担当者の独学もあったはずだ。
 また日本では、設計は社内で行ったとしても、組み立ては社外のレース技術職人に依頼するといったことも行われた。ヤマハ製のF3000フォーミュラー用エンジンなどはその実例である。しかし、いうまでもなくエンジン設計とエンジンの組み立て、実戦での使用状況は相互に密接な関係にあり、レース現場から即座に設計にフィードバックが行われることで技術的なノウハウの蓄積がはかられるのだが、そうしたリアルな関係が伴わなければ技術的な向上もノウハウの蓄積も多くを期待できないのだ。

 レース用エンジンに限定した話ではないが、エンジンとシャシー、車体との関係も密接である。しかしこうした点も大所帯の自動車メーカーの中では実感しにくく、ましてフレームと剛結され、荷重をダイレクトに受け持つフォーミュラカー用のエンジンなどは想像外なのだ。
 一般的に、競技用のエンジンに求められるのは、軽量・コンパクトであること、競技車のパッケージングに適合していること、重心が低いこと、高出力、大トルク、高燃費、高Gに耐えられること、剛性が高く、振動耐久性に優れること、想定した寿命内で耐久・信頼性が高いことなどが上げられる。特にF1を始めとするフォーミュラカーはエンジン搭載スペースと空力的な要求に合わせ、V型エンジンのバンク角度もエンジン側より車体側の要求で決定されることがほとんどである。
 したがって結局のところはエンジンも、レースの統括エンジニアがどれだけうまく要求性能や要求仕様をまとめることができるかという点にかかっているともいえるかもしれない。今日においてはレース・エンジンにも多くのセンサーが装備され、競技走行中のエンジン状態をリアルタイムでデータ送信できるため、エンジニアは克明にそのデータを知ることができるが、一昔前はそれは不可能で、エンジン設計者がどれだけ競技走行に関する想像力を働かせることができるかにかかっていた。
 いいかえれば、その想像力は過去の技術的な蓄積がカバーしてくれたのである。
 1960年代に、プリンス自動車の高名なエンジン設計者の中川良一氏はヨーロッパでF1グランプリを初めて視察し、その音やエンジンの外観からエンジンのスペックを想像し、猛烈にレース・エンジンを作りの衝動に駆られたという。中川氏はもともとは戦前の中島飛行機で大馬力のエンジンを設計し、戦後はプリンス自動車、日産自動車で活躍した一級のエンジニアで、レース専門のエンジン設計者ではないのだが、世界トップレベルの戦闘機用エンジンを設計した経験からレース・エンジンを直感的に理解、想像できたのであるが、中川氏より下の世代のエンジニアにはそれは無理だろう。
 ただ、当時は自動車メーカーのモータースポーツ部門には、エンジン設計者以外にエンジン実験担当のエンジニアが存在し、現場からの技術的なフィードバックを行うことができたのだが、その後はこうした体制は存在しなくなってしまった。
 レース・エンジンの組み立てについても、同様な経過をたどっている。じゅうぶんな経験を持つ熟練工はエンジン設計者と対話ができる能力を持っていたが、その後の世代は指示書通りに正確に組み立てる熟練工となり、エンジン設計者へのフィードバックはなくなっている。
 だから、量産使用に近い性格の競技用エンジンであれば大きな問題はないのだが、フォーミュラカーやルマン24時間レース用のエンジンなどは今日の日本で作ることは大変難しいといわざるを得ない。
 かつてトヨタ、日産、マツダが参戦したルマン24時間レースでも、エンジン制御システムや考え方はヨーロッパに学んだところが多かったが、それは今でも継承されているのだろうか?
 また、もうひとつは大出力の競技用エンジンは、基本技術に忠実にという点も忘れることはできない。各気筒の燃焼室の冷却はできる限り均一に、どのような方向からの加速度がかかろうとオイル潤滑が均一で油圧が安定させられるかや、水温や油温の安定性、エンジンの軽量さや剛性の高さなど、出力以外の基本要素も問わる。そのためには燃焼室回りの冷却水は温度差がなく均一に流れるクロスフロー方式や、強い加速度がかかった状態でも確実にオイルを吸い出し、クランクケース内を負圧にしてクランク回転抵抗を低減させるための複数のスカベンジポンプの配置、加速度に対応したオイル通路・・・こうしたエンジンの基本に関する見識の高さも問われるが、大組織の中では案外と基本原則を学び、守ることは難しいと思う。
 
 純レース用エンジンを設計するのではなく、市販車のエンジンをレース用に改造したり組み立てるという技術は、現在では自動車メーカーより社外のレース・エンジン屋の方がノウハウを多く蓄積しているように思われる。日本のレース・エンジン屋も老齢化が著しい状態だが、彼らは日本製エンジンの改造で苦労した経歴の後に、フォードDFVやブライアンハートBDA、BMW・M12などヨーロッパ製のレース用エンジンのオーバーホールなどの経験を経て、多くの技術やノウハウを持ってるからだ。ただし、エンジン制御に関してはやはり自動車メーカーに依存せざるをえないのであるが。
 こうした貴重な経験や蓄積した人たちも今では50歳以上の世代で、今後は経験や技術が伝承されない危機に瀕しているといえる。
 もっともレース仕様の話以前に、20年近く前の日本の量産エンジンの常識と現在の量産エンジンの違いも認識しておく必要がある。以前のエンジンの精度のレベルに対し、現在の量産エンジンは高精度自動組み立てが行われているため、格段にベースになるエンジンの精度が向上しているのだ。
 例えば、20年前にはクランクジャーナル部が鏡面加工仕上げされたエンジンは数えるほどしか存在しなかったが、現在では多くのエンジンに採用されており、ピストンも格段に軽量なショートスカート式に変わっている。また個々のピストンやコンロッドの重量ばらつきも3グラム以内といったレベルの、高精度・選択組み付けの効果が出ており、ボアの真円度も大幅に向上しているのだ。
 そういう意味では、量産エンジンがかつてのレース用エンジンのレベルに近くなったといえるかもしれない。
 また以前は、燃焼室のバルブシートの打ち替えやシートのカット角度などは職人技のひとつであったが、現在ではシリンダーヘッドごと新品交換する方がコスト的に安くなっているため、シートの打ち替えなどは過去の話となった。しかしバルブとシートとの擦り合わせなどは現在でも有効である。
 量産エンジンとレース用への仕様変更で大きく異なるのは、ピストンと壁面やメタルのクリアランスであろう。量産エンジンは、精度の向上に合わせて、騒音低減をはかるためにクリアランスは30ミクロン以下といったレベルに、つまりクリアランスは縮小されているが、レース仕様では可能な限り摩擦抵抗を減らすために逆に大きめのクリアランスとする例が多い。目標としては60~80ミクロンとすることが多い。
 このために、シリンダーボアのホーニングを行う。もちろんこの場合にはダミーヘッドを製作し、ダミーヘッドを締め付けた状態でホーニングを行い、スタッドボルトを締め付けた状態での真円度とクリアランスの適正化を行う。
 メタルのクリアランス調整はメタルを研磨することで行う。
 ピストンや今ロッドの重量合わせは、現在では1g以内、できれば各気筒ばらつきなしを目標に行う。
 またより基本的な作業として、鋳造されたシリンダーブロックの鋳造バリ取り、オイル穴の清掃や拡大修正、吸気ポートや排気ポートの段付きの修正や研磨なども量産エンジンをベースにする限り不可欠となっている。
 こうした高精度加工・修正を行った手組みエンジンはやはり機械組み立ての量産エンジンとは別物の仕上がりになり、時間と工数をかけただけのクオリティや性能が得られるのであるが、残念ながらこれらも今では忘れられつつある技術になっているのだ。
 
 
 

 

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