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ホンダ・インサイト

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 ホンダ・インサイトがデビューした。初代インサイトは1999年に、つまり初代プリウスを追う形で登場しているが初代プリウスがそうであったように、PRを兼ねた実験車的な性格が強く、当然販売すればするほど赤字になるというクルマである。
 当時、プリウスは1台あたり50万円近くの赤字であったと言われるが、インサイトはもっと大きな赤字だったと思われる。なにしろオールアルミ製で、NSXの生産設備を使用していたのだから。
 シャシーはアルミ製、ボディはアルミと樹脂フェンダーと言う凝ったもので、2座席のパッケージングであった。そして空気抵抗係数は0.25で、優れた空力と軽量ボディにより、当時は35㎞/L(10・15モード)とチャンピオンを狙った。燃費はマイナーチェンジで36㎞/Lに向上した。なおハイブリッドカーとしての基本システムは、ホンダは一貫してシンプルなパラレル式が有利と考えており、プリウスのシリーズ・パラレル式とは好対照である。
 初代のプリウスは約17000台程度の生産台数で、2007年に生産を終了した。ホンダのハイブリッドカーは、その後シビックに継承された。シビック・ハイブリッドは2001年12月に新発売され、その後2005年にシビックがモデルチェンジを行ったことに合わせてハイブリッドもこのモデルに移行。1.3Lエンジンは共通だが3ステージVTECに改良され、このモデルから低速走行時のエンジン休止、高速走行時の高速カムへの切り替えなどが行われるようになっている。
 ただ、シビック・ハイブリッドはやはり派生モデル扱いで、主力商品とはなっていない。

 今回の2代目インサイトは、初のハイブリッド専用量産モデルで、専用設計されているのが最大の特徴だ。そういう意味ではプリウスに真っ向勝負するクルマなのだが、ホンダはプリウスとはクラスも違い、世界にハイブリッドカーを普及させるためのクルマという位置付けだそうだ。またインサイトのパワープラントのレイアウトは、他車種にも容易に転用できるところが特徴だ。
 シャシーはフィットのコンポーネンツを使用し、しかも思い切った軽量化も行われている。
 ボディ・サイズはシビックとフィットの中間に位置するがホイールベースはフィットより50㎜長い。そしてフィットよりリヤのオーバーハングを延長したボディと言ってよい。
 車両重量は、フィット1300が1080kgであるのに対し、インサイトは1190kg(シビック・ハイブリッドは1270kg)で、この約100kgの重量差がハイブリッドに必要な重量と言える。価格差では約60万円となる。おそらく20万円くらいがバッテリーの価格と思われる。
  インサイトの開発コンセプトは、価格の低減、使い勝手、パッケージングの向上、爽快な走りといった点で、面白いことに燃費は30㎞/Lで、プリウスの35.5㎞/Lを少し下回っている。つまり特殊な技を使っての燃費トップ狙いはしていないということで、タイヤも低転がり抵抗タイヤではなく普通のラジアルである。
 ボディは4ドアクーペスタイルの5座席だが、リヤシートバックは6:4分割及び前倒し収納ができ、ラゲッジ容量は400Lとするなど実用性はじゅうぶんある。
 デザイン的には極端なフォワードキャビンで、リヤはハイエンドとし、後方視界を得るためにリヤエンドにはエキストラウインドウを備えている。このため後方視界は良好だ。
 フロントのマスクは最近のホンダのグリーンマシンと称するクラリティなどと共通のデザインだ。しかしボディサイドの面の仕上げなどは意外と抑揚がなくフィットに比べても平凡だ。そういう点がプリウス同様に弱く見える。
 そもそも、プリウスもインサイトも、先進性の表現として、思い切ったキャビンフォワードを採用し、ほとんどモノフォルムといえるシルエットになっているが、これはちょっと定型的過ぎはしないだろうか。キャビンホワード=ショートノーズは新しさを感じさせるものの、ダッシュボード面積は広大になっても、あまりキャビン容積の向上には繋がらないのだ。また副次的にAピラーが前進し、斜め前方視界は芳しくない。Aピラーはドライバーに近いほうが視界はよいのだ。
 またキャビンフォワードのモノフォルムは、デザイン的な洗練を加えないとぽっちゃりフォルムになり、プリウスなどもヨーロッパでは弱弱しく受け止められている。
 インサイトのボディデザインは2ボックスカーの実用性と空力特性の両立を狙ったもので、Cd=0.28。床下は樹脂パネルでカバーされている。このあたりはヨーロッパを重視した成果だろう。
 フレーム骨格部分は軽量化のために他車より高張力鋼板を多用している。なおフィットで採用されているセンター燃料タンクは採用されていないが、これはフロントシートの着座位置を低めて全高を抑えること、リヤ・タンクにして給油管の容積を減らし揮発ガソリンガスの排出を少しでも少なくするためという。

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 コンポーネンツのパッケージングは、エンジンとCVTの間に薄型モーター・ジェネレーターを装備し、リヤシートしたに燃料タンク、ラゲッジスペースの床下にニッケル水素バッテリーとパワーコントロールユニットを一体化して吊り下げているため、キャビンスペースへのハイブリッド・システムによる突出はない。
 サスペンションはフロントがハイキャスターのストラット(トレール=20㎜)で、リヤはトーションビーム式で、リヤのトーションビームの前に燃料タンク、後ろにバッテリーが位置している。インサイトもプリウスもリヤはトーションビーム式なのだが、この方式は煮詰めるのがすこぶる難しい。いまだに旧VWのトーションビームに到達していない気がするのだが、インサイトはどうだろう?
 電動パワーステアはラックギヤが3点キャノンマウントで、取り付け剛性は高い。

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 エンジンは、従来のインサイト、シビック・ハイブリッド以来の1.3Lで、細幅チェーン駆動のSOHC、2ステージVTEC・2バルブ。なおロッカーアームは油圧作動ピンによるオン/オフ式で、通常運転と全気筒停止のモードとなる。3ステージVTEC式の方がパワーは稼げるのだが、コストの問題とエンジン全高が高くなることから不採用となったのだろう。信号での停止時にはアイドルストップを行うが、再始動は駆動用モーターで行うため、エンジン側では特別な対策は行っていない。また、アイドルストップを行っても、エアコンの使用時や電気負荷が大きいとすぐに自動再始動を行う。

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 エンジンと薄型モーターは直結のため、全気筒休止モードが必要になる。モーターはフライホイールとスターターモーターの役目も兼ねている。バルブ作動をストップする全気筒休止モードは、圧縮・膨張を反復するが、燃料供給、点火は行われない。エンジン本体は、大量EGRを使用し、常用時のスロットル開度を大きくすることでポンピングロスを減らしているのがミソだ。プリウスはアトキンソン・サイクル(高膨張比)エンジンでパワー的には不利だが、ホンダは大量EGR路線を取っているところに違いがある。なおこのエンジンも少し排気バルブ閉じのタイミングを遅らせ、多少の膨張比増大も行っているという。
 ただ、このポリシーであれば、直噴+連続可変バルブリフトによるスロットルレスなどの方向に進むべきなのだが、やっぱりコストの壁が大きいか。
 点火プラグは2本装備し、しかもEGR環境下でも着火性能を確保するために両針式プラグを採用している。この両針プラグはデンソーにもNGKにも設定されているが、ホンダ専用設定だ。両針プラグは着火性、低速トルクアップ、燃費向上など性能的にはトップなのだが他社には使用できないのが残念だ。
 もちろんエンジン内部でも薄型ピストンピン、ショートスカート・ピストン、ピストン側面パターンコーティングの採用などフリクションの低減は徹底され、さらに低張力補機ベルトなども装備している。
 エンジンのパワーは88ps、最大トルクは12.3kgm、モーターのパワーは14ps、トルクは8.0kgmで、始動トルクは9.4kgmだという。出力図から明らかなように、モーターのトルクが極低回転でいかに大きく動力性能をアシストしているかがわかる。つまりホンダのハイブリッドシステムは、このモーターの特徴を100%生かすことを重視しており、モーターを小型化できているのだ。モーターに主動力の役割を与えるほどモーターは大型化せざるを得ないのが現状なのだ。モーター出力は、駆動アシスト効果がじゅうぶん確保でき、なおかつバッテリー・サイズが最小になるような出力サイズを選択している。つまりバッテリーを駆使したEV走行を重視するプリウスとは対照的である。
 CVTはトルコンなしの油圧クラッチタイプ。ホンダのガソリン・エンジン用のCVTはトルコンを採用しているが、このハイブリッドカーはモーターアシストのおかげで発進トルクが強力なため、トルコンなしの油圧クラッチ式にできるのだ。
 運転モードは、発進加速ではエンジンにモータアシスト、低速クルーズではモーターのみの駆動、加速ではエンジンとモーター、高速走行ではエンジンのみ、減速ではブレーキ回生を行い、停車時はアイドリングストップを行うというパラレル式ハイブリッドだ。
 プリウスとの燃費の差は、ブレーキ回生性能、バッテリー容量の差だろう。
 バッテリーはニッケル水素電池だが、かなりコストを落とすことに成功した模様だ。バッテリーモジュールは出力と耐久性をシビック用より30%アップし、なおかつ容量と重量を約30%低減しているという。
つまり出力は高めながらかなり小型化させているのだ。バッテリー電圧は、シビックが158ボルト、インサイトは100ボルトと下げられているが、電極板の拡大などにより電池側の出力を大きくすることで電圧低下を相殺している。
 またハイブリッドカーならではの心配である衝突時は、危険性の高い100V電源は自動的にシャットダウンされるが、12V電源は生かされるので、衝突時でもパワーステアやドアロックの作動は可能である。

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 ハイブリッドカー専用装備としてはエコアシストと呼ばれる運転モードを装備し、スイッチを押すと燃費優先エンジン制御となる他に、燃費運転のガイド、燃費レベルの判定、運転状態を採点し、エコのアイコンである木を育成するいったゲーム感覚の機能が備わっている。このグリーンの葉っぱの数を増やし木を育てるというゲームは燃費オタク向けのアイデアに過ぎるような気がする。
 インサイトの最高速は185㎞/hで、プリウスをわずかに上回る。ただし発進加速は、モーター出力の大きなプリウスの方が上だ。
 
 インサイトはプリウスより少し小型だが実用性は同等、価格は安いといった狙い通りのポジションになっている。一方で、ガソリン・エンジンのフィットに比べると燃費は約40%向上するのだが、価格面でもやはり40%ていどアップする。
 ということはやはり環境性能を買うという意味が強く、燃費コストで勝負できるかどうかは微妙なところだ。

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