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新型スイフトと低価格車の概観

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 8月26日、新型スズキ・スイフトが発表された。
 初代スイフトは2000年に。カルタス(海外ではスイフトの名称)の後継モデルとして発売された。
 2代目は2004年に登場し、日本マーケットでも販売を開始。従来以上にグローバルカーとして特化され開発された。日本以外に、ハンガリー、インド、パキスタン、中国で生産が展開され、世界124カ国で販売され、累計販売段数は180万台に達している。
 なお最大の販売国はインドで、ついで日本、ヨーロッパである。ただ、日本やヨーロッパはこのクラスは激戦区であるため、メイン市場は圧倒的に優位に立つインドと考えてよい。
 スズキは、スイフトは世界戦略車であり、世界に通用する走りを開発テーマとしたが、3代目に当たる新型スイフトもこの路線を継承。開発コンセプトは「モア・スイフト」とされ、キープコンセプトを明確に打ち出している。
 面白いことに、デザインも2代目のイメージをそのまま流用している。
 ダイナミック&エレガンスというキーワードを使用しているが、ショルダーラインを高めにしてグリーンハウスはやや小さめに、ボディ側面はラウンドした張り出しを持ち、Cピラーを太い台形形状とするなど、これまでのデザイン基調を保っている。
 スズキは、かつては平板なパネルデザインに終始していたが、2代目スイフトでデザイン革新を行い、海外市場において存在感を強めるためにソリッドで抑揚の感じられるデザインと、これが世界のマーケットで定着したことを重視したため、あえてデザインもキープコンセプトとしたのだろう。
 デザインやクルマ全体はキープコンセプトだが、プラットフォームは新開発されている。これはおそらく、従来から存在するフィアットと共同開発のSX4、GMとの共同開発であるスプラッシュ(ハンガリー生産)など各種のプラットフォームを統一するため、新型フレキシブル・プラットフォームを開発したと考えられる。
 このプラットフォームの変更により、ホイールベースは40mm、トレッドもフロント20mm、リヤ15mmほど拡大された。


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 アッパーボディは、骨格部分に590MPa級以上の高張力鋼板を採用し、従来より10kg軽量化するとともにねじり剛性を15%ほどアップしたという。
 サスペンションはフロントがストラット式、リヤはトーションビーム式で従来と同じだが、リヤのトーションビームはU字型2重構造(従来型はV字+スタビライザー)とすることでスタビライザーを省略した。またビームの取り付けに角度を付け、トー変化量を少なくしている。

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 ステアリングギヤは可変ギヤレシオを採用。
 1.2Lの4気筒DOHCエンジンは継承され、新たに吸排気カムにVVTを採用し、吸排気バルブの遅閉じを行うことで燃費を向上させている。

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 排気量1242cc、ボア×ストロークは73.0×74.2mm。レギュラーガスで圧縮比は11.0。
 最高出力は91ps/6000回転、最大トルクは118Nm/4800回転。日産マーチの3気筒1.2Lエンジンよりパワーは12ps、トルクは12Nm大きいが、エンジン特性としては日産のほうがより低速型で、それに対してスイフトのK12B型はより高出力・高速型で、従来の価値観にこだわっているように思われる。

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 燃費はマーチが26km/h(アイドルストップなし仕様で24km/L)で、スイフトは23Km /L。(欧州ミックス燃費は5.0L/100km 、CO2排出量は116g)。

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 トランスミッションは、主力は2速副変速機付きCVTで変速比幅は7.3。廉価仕様には5速MTも設定されている。もちろん海外市場では、この5MTが大半を占める。
 スズキはすでに軽自動車に副変速機付きCVTを投入しているが今回のスイフトにも採用。メーカーはマーチと同じJATCO製である。
 性能は、ヨーロッパ仕様で0-100km/h加速が12.3秒、最高速は165km/h。
 価格は124万4250円~147万5250円、最上級4WDモデルで165万3750円。
 ヨーロッパでは、3ドアの最廉価仕様で1万999ユーロ、上級グレードで1万5499ユーロ。
 なお、スイフト・スポーツは、恐らく来年に追加発売されると予想される。現在はニュルブルクリンクでのテスト
などを行い、サスペンションを熟成中と思われる。
 
 スズキは世界屈指の軽自動車を含むコンパクトカーメーカーという特徴を持ち、サブコンパクトカークラスのグローバルカー、スイフトはその主力車種である。
 主要生産拠点として日本以外にハンガリー、インドに大規模工場を持ち、圧倒的なコストパフォーマンス、つまりは低価格を最大のアピールポイントとしている。インド生産での現地部品調達率は95%だという。
 注目すべきことにスイフトはスズキの軽自動車の多く(アルト、MRワゴンなど低価格車種を除く)より低価格なのだ。
 この点が、VWが注目し提携に至った理由だと思う。もちろんそれ以外に、注目市場であるインドでスズキが圧倒的なシェア、販売体制(スズキの国別販売台数ではインドがトップ)を備えていること、世界的には知られていないもののローカルな軽自動車を長年作ってきたユニーク技術もVWには興味、魅力であっただろう。企業哲学的にはまったく異なる2社の関係は世界的に注目されている。
 憶測すれば、VWはスズキ車をセカンドブランドにしようと考えているのではないかとも考えられる。下記のルノーとダチアのような関係だ。
 もっともスズキとしては対等な提携関係であり、今回のスイフトもVWとはまったく無関係の自力開発である。
 世界的に見て環境・燃費を重視すればダウンサイジングは必須である。もともとサブコンパクトカー作りに絞ってきたスズキは、今後の販売の飛躍的な伸びが期待できる新興国向けの低価格車作りのノウハウを持っていることで企業価値が大きく高められているともいえる。
 低コストの小型車作りは世界的な規模で激しい競争が行われている。
 世界に先駆けてドイツで行われたスクラップ・インセンティブ(買い替え政府補助金制度)では、シュコダ、スズキ・スイフト、ヒュンダイなどの低価格車が著しく伸び、VWにも大きなショックを与えたことは容易に想像できる。
 しかし、上には上があり、最近ではヒュンダイ以上に販売が好調なのが、ルーマニア製のダチア・ロガンである。VW傘下にあるチェコのシュコダ・ファビアが1万6000ユーロ、スイフトは平均1万3000ユーロであるが、ロガンはなんと7300ユーロなのだ。

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*ダチア公式ホームページ

 ロガンはルノーの傘下にあり設計はルノーが担当しているが、労働賃金がドイツの1/10といわれるルーマニアの特色を生かした驚異的な低価格車なのだ。ドイツの雑誌には「デラックス感や格好良さはない。このクルマに乗って、ディスコの前で女の子を誘うのは難しいだろう」と書かれているのだが。
 その一方で2008年のユーザーの自動車メーカー・ロイヤリティ(買い替え時の忠誠度)評価では、1位:スバル、2位:ポルシェに続き、なんとダチアが3位にランクされているのだ。同調査では、トヨタは6位、スズキは11位、ヒュンダイは17位、メルセデスは18位であった。
 つまり、クルマを生活道具として考えるユーザー層にとっては、ロガンは圧倒的にコストパフォーマンスが優れた得がたい存在と考えられている。ちなみにロガンは、ルノー/日産で共同開発したBプラットフォームの改良仕様であるBゼロプラットフォームを採用する。
 このロガンは、2007年からインドにも投入され、生産も現地のマヒンドラ・ルノーで行われている。
 またヒュンダイは、2007年からサブコンパクトカークラスのプレミアムモデルという位置付けで、i10アスタをインドのチェンナイ工場で生産・販売を開始。現地価格は49万4000ルピー(90万円)。

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 VWはインドのプネ工場で2009年からポロの生産を開始した。旧型ポロのダウングレードバージョン1.2Lモデルは43万4000ルピー(80万円)としている。
日産マーチは、インドでは46万から49万ルピーで販売されている。
 なおヨーロッパだけでなくインド市場における各車の標準はすべて5MTであり、オプションで4ATの設定だ。マーチやスイフトが日本で設定しているCVTは、4ATより高価格というコストアップ要因を持つため採用されていない。

 スズキはインド政府が構想した新国民車構想の合弁会社、マルチ・ウドヨグとしてインドビジネスをスタートさせ、1980年代以降に大成功を収めた。マルチ・スズキは地域で最大規模の自動車メーカーとなり、強固な販売体制を築きあげた。
 しかし、インドが興隆する大規模市場を持つ新興国として注目を浴びるようになると、他メーカーの動向を概観したように、今後は激しい競争を迎えることになる。
 低価格車は、価格が安いということ以外に、どのようなクルマ作りを目指すのか、どのような先進性、革新性を備えるかという点が最終的には問われることになると思う。
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ツインエア2気筒 フィアットが描く未来像

 フィアットパワートレーンテクノロジー社の、最新技術のマルチエアテクノロジーを採用した第2弾が「ツインエア」エンジンである。ツインエアエンジンは、今年3月に開かれたジュネーブオートサロンでフィアット500(チンクェチェント)との組み合わせで発表された。
 現行のフィアット500は、1.2L、1.4Lの直4エンジンを搭載しているが、今年秋にはこの新開発の2気筒「ツインエア」エンジンが搭載される予定になっている。
 ツインエアエンジンは、世界で最もグリーンなエンジンを標榜し、燃費、排ガスで世界トップレベルとなるダウンサイジングコンセプトのエンジンだ。
 逆にいえばA、Bセグメントをカバーするダウンサイジングコンセプトの新開発エンジンとしてツインエアは検討され、低フリクションと熱効率を両立させるために、直列2気筒、875ccというパッケージが選択された。
 面白いことにダンテ・ジアコーサが開発を担当した2代目フィアット500も直列2気筒(空冷)エンジンであったが。
 ちなみに日産が開発した1.2Lエンジンが3気筒、VWグループが開発しているとされるA、Bセグメント用の0.9Lエンジンがやはり3気筒という噂だ。


 
 先行したマルチエアエンジンは、エンジンの基本骨格は既存の4気筒をベースにしていたが、ダウンサイジングを意図したツインエアは近未来に向けた完全な新設計である。
 したがって、設計コンセプトは直列4気筒の1.4Lエンジンクラスなみの出力を狙いながら、大幅なフリクションの低減を行うため2気筒とし、かつ低回転での最大トルクとエンジン回転数を大幅に下げようというのだ。
 ツインエアエンジンに採用されている「マルチエア」テクノロジーは、チェーン駆動される排気カムで各気筒の油圧ポンプでオイルを加圧し、チャンバーに加圧されたオイルを蓄圧し、電子制御ソレノイドバルブにより油圧を制御して、油圧により吸気バルブの開閉を行う。このため、吸気バルブの開閉タイミング、リフト量は任意に制御でき、吸気量をコントロールできるためスロットルバルブは使用されず、ポンプ損失が生じない。また吸気バルブは、エンジン負荷に応じて、早閉じ、2段開閉なども行うため、燃焼の制御も優れている。

07 FPT 900 SGE black

04 FPT 900 SGE black

*エンジンスペック------------------
・排気量:875cc 2気筒 ターボ付き
・ボア×ストローク:80.5mm×86.0mm
・動弁機構:チェーンドライブSOHC・8バルブ+吸気マルチエア(連続無段可変吸気タイミング&リフト+スロットルレス) HLA付きフィンガー式ローラーロッカーアームによる排気バルブ駆動
・圧縮比:10.0
・最高出力:85ps (63kW)/5000回転 (リッター当たり出力=97ps/L)
・最大トルク:155Nm/2000回転
・寸法:307mm× 500mm×596mm(全長×全幅×全高)
・機関重量:85kg(DIN)
・排ガス:ユーロ6
------------------------------------
 このスペックからも分かるように、マルチエアエンジンがベルトドライブであるのに対しより新しいチェーン駆動とし、排気バルブの駆動はカム直動式であったものがフィンガーローラーロッカー式になり、さらなるフリクションの低減を行っていることがわかる。

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 また圧縮比もマルチエアよりアップされている。
 直列2気筒エンジンの場合は、クランクシャフト位相角は180度と360度タイプがあるが、ツインエアは等間隔爆発の360度タイプとし、クランクシャフトの側面に1次振動を打ち消すためのバランサーシャフトを装備する。

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 性能的には、同出力(1.4Lクラス)のエンジンと比べ、CO2を30%削減、CO2排出量はフィアット500(2ペダルMTで92g/km 、MTで95g/km。現行の1.2Lで119 g/km)。これはダウンサイジングコンセプトと、ターボ過給、スロットルバルブレスのマルチエア技術により達成されている。つまり徹底した低フリクション(低回転化も含め)、高い熱効率、ポンピング損失低減によるものといえる。

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 燃費性能も傑出している。エンジン本体での燃費性能だけではなく、アイドルストップシステム(標準装備)により燃費は同出力(1.4Lクラス)より30%以上低減。さらにアイドルストップシステムと組み合わせギヤシフトインジケーターも標準装備することで実用燃費も高めている。また同時にドライビングプレジャーを感じられる特性としたという。
 燃費は、MTで4.91L/100km、2ペダルMTで4.0L/100km(いずれも欧州ミックスモード)
 現行フィアット500(1.2L)は、MTで5.1L/100km(ミックスモード)
 マルチエアイテクノロジーにより、875ccの小排気量エンジンにもかかわらず、最大トルクはわずか2000回転で得られ3500回転まで持続する。これは、慣性のきわめて小さな新開発のターボや、最適化された吸気流デザインによって成し遂げられたという。したがってドライバーは、低速からのフレキシビリティと独特のドライビングプレジャーを実感できる。
 フィアット500に搭載した場合、最高速は175km/h、0→100km/h加速は11秒。(現行1.2Lは最高速160km/h、0→100km/h加速は12.9秒)
 こうした性能だけにとどまらず、このツインエアエンジンは、今後の戦略的にも重要なエンジンと位置づけられている。つまり、近い将来にはCNGなどマルチ燃料に対応し、さらに超コンパクトなパッケージングはハイブリッドカー、レンジエクステンダーEVにも適合させるという狙いがある。
 
 このようにツインエアエンジンは、きわめてチャレンジングな拡張性の高い戦略的なパワーユニットであることが実感できる。
 875ccという排気量は、日本の軽自動車規格の660ccに近い。その軽自動車もかつては2気筒エンジンが主流であったが、現在は3気筒化されている。そして設計コンセプトも保守的でターボ過給エンジンを含め、大きな革新は行われてこなかった。
 日本には今日的な意味を持つ660cc軽自動車という最高の材料があり、最新のテクノロジーを取り入れることで燃費、排ガス、出力など性能面での大幅な飛躍が期待できはずなのだが、革新は省みられず、コスト低減運動に終始しているのは残念といわざるを得ない。
 実は、昨年の東京モーターショーにダイハツがコンセプトエンジンとして、2気筒+ターボ過給+直噴エンジンを出展している。

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↑ダイハツ2気筒コンセプトエンジン

 最高出力は47kW/4500回転、最大トルクは100Nm/1500-4000回転。高圧縮比化や大量EGRシステムを組み合わせることによって、燃費を従来比30%以上改善するという狙いとなっていた。これはかなりツインエアに近いコンセプトといえる。
  しかしその一方で既存エンジンの改良や大量EGRの採用により、燃費30km/Lを達成できるとしており、ターボ過給+直噴というコストアップ要因を考慮すると既存エンジン路線に軍配が上がり、2気筒エンジンはまだ研究段階の域を出ないと見られる。
 そもそも、ツインエアエンジンで標準採用されるアイドルストップシステムでさえ、日本の軽自動車(だけには限らないが)には絶望的である。アイドルストップ採用に伴うコストアップが吸収できないからである。
 それに比べ、はるかに財務体質が弱いといわれるフィアットは近未来の生き残りをかけて大きく動き出していることは評価に値する。

マルチエアエンジン フィアットグループが実現した圧倒的技術革新 

 フィアットグループのFPT(フィアットパワートレーン・テクノロジー社)が、世界的に見ても圧倒的に革新的なエンジンを開発し、まず最初にアルファロメオ MiToに搭載され日本では今年3月に発売された。(グレードは、スプリント、コンペティティオーネ。いずれもアルファTCT「DCT」トランスミッションとの組み合わせ)
 さらに7月からはよりースポーツ仕様で装備も充実したクアドリフォリオヴェルデを追加発売。ベースモデルが1.4Lターボで135psに対して、クアドリフォリオヴェルデは170ps(リッター当たり出力は124ps/L)にパワーアップ。ただしこのモデルは6速MTのみの設定になっている。

*FIAT POWERTRAIN TECHNOLOGIES

 これらのベースになるエンジンは、直列4気筒16バルブ+ターボで、排気量は1368cc(72.0×84.0mm)。圧縮比は9.8となっている。また吸排気バルブのバルブ挟み角がきわめて狭く、超コンパクト燃焼室を形成。燃焼速度の向上を重視していることが分かる。
 チューニングにより135ps、170psがラインアップされているが、今後はNAエンジンも追加されるようだ。
 この新開発エンジンは「マルチエア」と名付けられ、グループのFPTで開発され、アルファロメオブランドで年末頃に発売されるジュリエッタに搭載されるだけでなく、フィアット(プント・エヴォ、ブラーヴォ)、ランチア・デルタにも順次採用される。

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 マルチエアという名称はちょっと分かりにくいが、ダウンサイジングコンセプトのエンジンであり、小排気量+過給により燃費とパワーを両立させる。ダウンサイジングコンセプトの先駆者であるVWが連続可変バルブタイミング+直噴+過給であるのに対し、マルチエアは連続可変バルブタイミング&リフト(スロットルレス)+過給を採用した。
 連続可変バルブタイミング&リフト機構は、吸気量を吸気バルブの連続可変リフト化により制御するためスロットルバルブは不要となる。この発想はBMWのバルブトロニックを先駆けとし、日本でも日産のVVELなどが登場しているが、いずれもモーターと機械的な可変リフト構造を組み合わせたシステムになっている。
 これに対して、マルチエアは電子油圧制御により吸気バルブの連続可変タイミング+リフトを実現。つまりカムシャフトによる作動から切り離したのだ。

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 吸気バルブの開閉を油圧制御のみで行う、つまり機械的な要素を持たないため、バルブタイミングとリフト量には大きな自由度が与えられるという点できわめて革新的であり、システムとしてBMWのバルブトロニックを上回っている断言できる。マルチエアエンジンはこの新機構とダウンサイジングコンセプトを組み合わせることで、高いパフォーマンスを実現した。
 もともとアルファロメオは、ねじりギヤ式の連続可変バルブタイミング機構を世界に先駆けて開発するなど、バルブ可変技術の研究に関しては世界でもトップレベルにあった。
 
 ここ10年間、コモンレール方式の高圧直噴技術が開発されたことで乗用車用ディーゼルエンジンは飛躍的な進歩を遂げたが、フィアットグループはガソリンエンジンの分野で競争力を高めるため、同様な手法で画期的な技術革新を目指した。
 従来型のガソリンエンジンは、燃焼室へ供給される空気量は吸気バルブのリフト量やスロットル開度、そして上流側の気圧(ブースト)に左右されざるを得なかった。このメカニカル制御の空気供給方法の欠点は、吸気マニフォールド内の気圧が大気圧よりも低くなるためポンピングロスを避けられず、これは約10%のエネルギーロスを生じる。
 ガソリンエンジンの供給空気量のコントロールを革新するには、吸気バルブで直接空気量を制御する方法が必要で、これによってスロットルバルブは不要となる。
 これを達成するため、電子制御式のマグネチックアクチュエーター(磁気駆動機構)の利用が着目され、上下両側に設置した電磁石で生じる磁力を交互に切り換えることで、アーマチュア(対応する磁性体)を取り付けたバルブを開閉する仕組みが考案された。この電磁バルブ駆動システムは、バルブ開閉で優れた応答性を持っている。しかし、その反面でフェイルセーフの点で不安が残ること、エネルギー効率が低いことから約10年の歳月が費やされたにもかかわらず実用化はされなかった。
 その結果、BMWを筆頭によりシンプルで信頼性が高くすでに広く普及している電子制御式メカニズムに基づいた可変バルブタイミング&リフト機構の採用に方針変換された。カムシャフトの位相制御機構に組み合わせたバルブのリフト量や開閉タイミングの制御も機械的に実現された。しかしBMWのバルブトロニックシステムなどの宿命的な限界は、バルブ開閉タイミングについての自由度や応答性が低いことだ。たとえば全シリンダーが一括制御されてしまうことから、特定のシリンダーに対して個別に制御はできないのだ。また機構的に複雑で部品点数も多くなる。
 1990年代半ばにフィアットの研究開発チームはコモンレール式ディーゼルエンジンの開発中に得たノウハウから、電子制御式油圧駆動メカニズムの開発を指向した。開発のゴールは個別シリンダーごと、吸気や圧縮、燃焼、排気の工程ごとに供給空気量を調節するためのバルブ開閉制御に要求される自由度を狙ったのだ。フィアットが開発した電子制御油圧駆動式可変バルブ開閉メカニズムは、シンプルで、駆動エネルギー要求量が低く、本質的にフェイルセーフ機能を備え、量産にあたっても比較的低コストな可能性を持っていることから開発ターゲットとされた。
 
*マルチエアの作動原理

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 吸気用カム(排気バルブ用のカムシャフトを兼ねる)により駆動される油圧ポンプで発生した油圧が、蓄圧チャンバー内のオイルを介して吸気バルブを作動させる。このチャンバー内の油圧制御はノーマルオープン型ソレノイドバルブのON/OFF、つまり開閉作動により油圧を保持したり開放を行う。
 ベルト駆動される1本のカムシャフトは、排気バルブを作動させることと、吸気バルブ作動用の油圧加圧のためのカム山を持つ。加圧用のカム山の動きは、ローラーロッカーアームを介して吸気バルブ作動用の油圧ポンプ部に伝達される。したがって、メカ的にはSOHC・16バルブとなる。
 ソレノイドバルブが閉じている時は、油圧チャンバー内に満たされているオイルが固体のように作用するので、吸気バルブの開閉タイミングは吸気用カムのプロファイル(カム山特性)に直接連動。一方、ソレノイドバルブが開くと内部のオイルが油圧チャンバーから流れ出すので、吸気バルブの結合が解除される。その結果、吸気バルブは吸気カムと連動せず、バルブスプリングの作用により吸気バルブが閉じる。また、エンジンの作動状態にかかわらず吸気バルブが閉じる時の最終段階では、ハイドロリックブレーキ(Hydraulic brake)と呼ばれるプランジャー部の油圧抵抗が作用することで、バルブシートに対して衝撃を与えないようソフトで着実にバルブが閉じる。
 これらの仕組みにより、油圧チャンバーに備えたソレノイドバルブの開閉時間を制御することで、吸気バルブの最適な開閉タイミングを広範囲に制御することが可能になるのだ。



*吸気バルブの作動状況

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 最高出力時には、ソレノイドバルブを常に閉じ、吸気バルブが最も大きく開くよう吸気カムと直結の状態になり、高回転域での最高出力発揮に特化する(吸気バルブを長く開ける)。
 低回転域で出力・トルクを向上するためには、カムプロファイル(カム山)の終わり付近でソレノイドバルブを開けて油圧を逃がし、吸気バルブとの連結を解除することで、吸気バルブを早く閉じる。この結果、混合気が吸気マニフォールドへの逆流を防ぎ、シリンダーへの供給空気量を最大にすることができる。
 部分負荷の状況では、ソレノイドバルブを早めに開けることで、要求されたトルク量に見合うだけの空気量を供給するよう吸気バルブの開度を制限する。
 また、吸気カムが作用を始めた後、タイミングを遅らせてソレノイドバルブを閉じることで吸気バルブを少しだけ開けることがでる。この結果、シリンダーへ吸気流速が速くなることからシリンダー内渦流を効果的に発生させ燃焼速度を高める。
 また1回の吸気行程(ストローク)中に、これら2つのモードを組み合わせることができ、きわめて低い回転域で負荷が低い状況であっても、渦流形成と燃焼速度を向上させることができる。これはマルチリフトモード名付けられている。
 
*マルチエアの効果
1. 最高出力優先型の吸気カムプロファイルを採用すると、最高出力を約10%向上。
2. 吸気バルブを早く閉めることでシリンダーへの充填効率を高める結果、低回転域でのトルクを約15%向上。
3. 同じ排気量ならば自然吸気やターボチャージ式エンジンにかかわらず、ポンピングロスを削減することで、燃料消費量とCO2排出量を約10%低減。
4. 同等の動力性能を維持しながらも、ダウンサイジングとマルチエアテクノロジーを採用することで、従来型自然吸気式エンジンに比べ、約25%の燃料消費量を低減する。
5. 暖気中のバルブ開閉タイミングの最適化や内部EGR効果、排気行程中に吸気バルブを再び開ける効果により、エミッションレベルを大幅に改善。HCとCOを最大約40%、NOxは約60%低減。
6. 自然吸気式エンジンでは、吸気バルブの上流側で常に大気圧並みの気圧を保ち、ターボチャージ式エンジンではより高めの気圧を維持。さらに、シリンダーごと、ストロークごとに、より速い吸気流速を維持することで、卓越したエンジンのダイナミックレスポンスを提供。
7. 従来のDOHCエンジンよりもカムシャフトが1本少ない分だけカム駆動抵抗が減少し、燃費向上に貢献。

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 この革新的なマルチエアエンジンは1.4Lの16バルブからスタートし、自然吸気式とターボを設定する。次の段階では、新型スモールガソリンエンジン(SGE:排気量900cc/2気筒)を開発。このエンジンのシリンダーヘッドは、最初からマルチエアテクノロジーのアクチュエーターを組み込むことを前提にした最適設計とされている。この2気筒エンジンでも自然吸気式とターボを設定。そして、ターボエンジンには、ガソリンとCNGという2つの燃料に対応した専用のバイフューエルバージョンを用意する。
 この2気筒ターボエンジンは、ダウンサイジング効果のためディーゼルエンジンに匹敵するCO2排出量を達成するという。さらに、天然ガスを燃料にした仕様では80g/km以下のCO2排出量が達成できるという。
 
 なお、マルチエアテクノロジーは汎用性に優れ、あらゆるガソリンエンジンに容易に適用できるほか、将来的にはディーゼルエンジンへの対応も可能という。
 今後の開発プロセスは、まず直噴化で、これによりエンジンの過渡特性と燃費をさらに向上できる。またバルブの開閉もさらに多段式開閉モードを行うことで燃焼改善を実現する。ディーゼルでは排気工程で吸気バルブを開けることで内部EGR量を拡大でき大きなNOX低減効果が得られることがメリットである。
 
 このマルチエアを初めて採用したFPT 1.4Lターボエンジンは、2010年のエンジン オブザイヤー賞(ベストニューエンジンオブザイヤー部門)を受賞した。
 マルチエアは最新のダウンサイジングコンセプトを牽引する興味深いエンジン技術であり、大いに評価できると思う。





日産エルグランド雑感

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 8月4日、大型ミニバンの日産エルグランドがフルモデルチェンジし、3代目となった。
 エルグランドは1997年に、キャラバン/ホーミーをベースにした大型高級ミニバンとして誕生した。2002年に2代目が登場。初代は5リンク式リジッドであったが、この2代目はリヤマルチリンク・サスペンションを採用した。駆動方式は従来通りFRでフロントシート下側に縦置きエンジンを配置していた。
 3列シート、2000kg、V6/3.5Lエンジン、全長4.7m、価格は400万円前後というこのカテゴリーのミニバンの基準は、日産エルグランドが作り出したマーケットである。そして初代の最盛期には月販1万5000台のレベルに達した。
 しかし、エルグランドの2代目と同時期に発売された同等カテゴリーのトヨタ・アルファードの登場により事情は一変する。
 アルファードは3.0L・V6エンジン以外に2.4L・直4エンジンをラインアップし、直4エンジンをメインにした低価格戦略を展開し、その一方で豪華感のあるインテリアをアピールし、販売面でエルグランドを上回ることになった。エルグランドのインテリアはモダンで明るく機能的なトーンでまとめられていたが、アルファードは古典的なデラックス感を備え、けっきょく後者がユーザーの心を掴んだといえる。
 エルグランドも直4エンジンを追加したが、アルファードとの販売台数差はその後は広がる一方となった。
 2008年にアルファードはモデルチェンジされ、同時にネッツ店用に姉妹車のヴェルファイアも新設定した。ヴェルファイアは販売チャンネルの性格を考慮し、アルファードより若々しくアグレッシブなイメージを訴求した。このトヨタ2車はエルグランドを完全に圧倒し、不況下の現在でもヴェルファイア=5000台、アルファード=3000台という驚異的な月販レベルを維持している。
 350~450万円という高価格帯のクルマでこの販売台数はきわめて収益性が高く、トヨタのドル箱になっているといえる。

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 このような背景のもとで新たに登場したエルグランドは、「キング・オフ・ミニバン」というわかりやすいキャッチフレーズで、劣勢挽回を狙っている。
 プラットフォームは、半商用車系であった先代までとは異なり、大型乗用車用のDプラットフォームを採用し、アルファードと同じFF駆動方式となった。またこれに伴い生産は、従来の日産車体・湘南からインフィニティを生産している日産車体・九州工場に移管されている。
 さらにアメリカ向けミニバン、クエストもこの新型エルグランドをベースにすることが決定している。

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 FF駆動形式にしたことで従来より約10cm(フロント部)~約5cm(リヤ部)の低床化が実現した。これにともない、全高も9cm低められた。
 また上級乗用車並みの走り訴求し、エンジン/トランスミッションの低重心化、超扁平な大容量(73L)床下燃料タンク、リヤ・マルチリンクなどを採用。
 つまりトータルで重心を下げることで走りの資質を高めたわけだ。
 当然ながら開発のベンチマークはアルファード/ヴェルファイアで、すべての点でこれを上回ることが開発目標とされた。
 エンジンは、VQ35DE型(280ps)、QR25DE型(170ps)、トランスミッションは6速MTモード付きCVT。このCVTはECOモードではナビ(地図情報)協調変速機能も持つ。
 サスペンションのダンパーは4輪リバウンドスプリング内蔵式と走りのフラット感を高めている。細かい所ではステアリングコラムの取り付け剛性を3.5倍にしたという。これは操舵の正確性などに大きな効果があるはず。
 ボディはねじり剛性、曲げ剛性とも大幅に向上させ、横風安定性もアルファードに対して約2倍の安定性を得ている。
 性能面で、動力性能、燃費、乗り心地・快適性などすべて競合車を上回ったとしている。
 装備面では、7人乗り(キャプテンシート)には世界初のシートバック中折れ機構、クッション一体型オットマン、3層構造(中間層に低反発ウレタンを採用)シートクッションを採用。サードシートはフォールドダウン格納式とし、座面のクッション量も向上した。

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 装備面では世界初の11インチモニター画面やBose5.1サラウンド・オーディオも設定されている。また機能を使いしたアラウンドビューモニター、高濃度プラズマイオンクラスター(匂いの除去だけではなく肌の保護もできる)といった装備も設定されている。

 デザインは、クロームメッキを多用し、サイドウインドウのグラフィックス全周もクロームで飾られている。ボディロアをグラマラスにするとともに、全高を低く見せるデザインを基調にしている。
 フロントグリルは異様に大面積で、クロームを全面的に取り入れ、威圧感を排除しながら存在感を残したという。
 しかしながら、デザイン面ではトヨタのアルファード/ヴェルファイアも垢抜けないことこの上ないが、新エルグランドもソリッド感に乏しくアンバランスな印象を受ける。アルファード/ヴェルファイアもエルグランドも大面積のボディサイド造形などはプアである。
 確かに1.5ボックスフォルムのミニバンという制約はあるとはいえ、1850mmの全幅を持つこの上級ミニバンクラスのデザインは、デザインと呼ぶには抵抗がある。
 
 パッケージは、7人乗り(2/2/3)、8人乗り(2/3/3)の2種類が設定されるが、当然ながらセカンドシートでの大人の3人乗り、サードシートでの大人3人乗車での長距離移動は改定とは言えず、2/2/2乗車でもサードシートの大人は圧迫感が強く、強いて言えば子供用のシートである。
 ファミリー層は休日の長距離ドライブ時での家族利用がメインで、平日は主婦層のショッピング用となる。
 しかし一方で、大企業のエグゼクティブにもこのクラスは案外愛用されている。もちろんエグゼクティブはセカンドシートに座りドライビングを担当するのは運転手だ。このケースではセカンド・キャプテンシートでの居住性・快適性が最も重視されることは言うまでもない。

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 車両重量2000kg級で、中心価格帯が350~450万円というこのクラスのスペックは、アッパーDセグメントであり高級車クラスであるが、同等レベルのセダンの数倍も販売実績がある。収益性を考えるとメーカーにとっては大きな魅力的であることは理解できるが、真実はアッパーDセグメントに成り切れない、国内専用車の域を出ていないと感じられる.

ボルボXC60のシティセーフティ

 2009年6月から発売されたボルボXC60には、シティセーフティと名付けられた低速走行時に作動する自動停止ブレーキが採用されている。
 
 *2010年5月22日の記事
 
 ボルボは、政府、警察、大学の研究室、自動車関連企業による交通事故研究機関で長期的に交通安全を研究した成果として、交通事故で比率の高い市街地での衝突事故を防止するシティーセーフティを開発した。
 ドライバーの不注意による、対人、対物の衝突を防ぐ、あるいは衝突電被害を低減するために自動ブレーキをかけるシステムである。

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 シティセーフティの詳細概要は・・・
 センサーは赤外線レーザーレーダーを採用しており、前方障害物の認識は約6mだという。
 したがって、このレーザーレーダーは小出力である。
 このセンサーが前方障害物を認識し、閾値を超えて接近するとブレーキのプレチャージ(ブレーキスタンバイ=油圧をアップしブレーキパッドをディスクローターに接触寸前までせり出す)を行い、同時にシートベルトの緩みを巻き取り、エアバッグもスタンバイ状態になるなど、完全にプリクラッシュ待機状態となる。
 この状態でドライバーがブレーキを踏まないと、約0.7gの制動力で自動ブレーキがかけられる。その時、車速が15km/h以下であれば衝突は回避でき、それ以上の車速であれば衝突被害を軽減できる、というシステムだ。
 
 このように、衝突を回避できる設定車速と、予備動作がスバルのアイサイトと異なっている。スバルのアイサイトは、より遠方から前方障害物を認識し、ドライバーがブレーキを踏まないと弱い1次ブレーキが自動作動するとともに警報音を発する。この1次ブレーキは、ブレーキスタンバイの役割を果たしている。ただし、シートベルトなどのプリクラッシュ待機作動は行われない。
 周知のようにスバル・アイサイトは30km/h以下であれば衝突を回避できる能力を持ち、
つまり、ボルボのシティセーフティよりはやや早く自動緊急ブレーキが作動するといえる。

 スバルのアイサイトはステレオカメラという単一のセンサーを使用し、こうしたプリクラッシュ自動ブレーキを作動させるだけではなく、ドライバー支援としてレーンキープ機能やアダプティブクルーズ機能を一体化させたシステムだが、この点もボルボは異なる。
 つまりボルボは、シティセーフティは今後は全車標準装備化に向かうと見られ、その一方でレーンキープ機能や、アダプティブクルーズコントロールは従来通りのオプション装備と位置づけているのだ。
 XC60では、アダプティブクルーズコントロールやレーンキープは「セーフティパッケージ」という名称のオプションとされている。
 このシステムのために、ミリ波レーダーセンサーと単眼カメラを装備し、ミリ波レーダーは測距距離150m、照射角15度で前方の障害物を認識する。一方、単眼カメラは走行レーンを認識するためと前方障害物の形状認識に使用しているものと考えられる。(65km/h以上でレーンキープが作動する)
 またアダプティブクルーズコントロールが作動している場合は、最大0.4gの自動ブレーキは作動するが、強い緊急ブレーキの作動は行わない。
 カメラの作動により、ドライバーのふらつき運転を検出すると、警報するシステムも備えている。
 このようにセーフティパッケージ・オプションは、従来型アダプティブクルーズ機能であり、シティセーフティのシステムとあわせると、3個の障害物センサーを備えていることになる。
 今後はセンサーと機能システムを統合するのか、シティセーフティのみを標準装備化し、セーフティパッケージは別個に進化させるのだろうか。

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 なおボルボXC60は、これまで直列6気筒・3.0Lターボ(304ps)エンジン、4WD、6速ATというラインアップのみであったが、8月からはダウンサイジング・コンセプトともいえる直列4気筒・2.0Lターボ(203ps)、FFモデルを追加した。トランスミッションは、フォード、ボルボ、三菱とゲトラグが共同開発した横置きエンジン用DCTを採用している。このDCTミッションはすでにV50で採用されている。

SAAB 現状と販売再開

 このほどサーブ・オートモビルABと日本のPCI㈱が総輸入代理店契約を結び、今年9月からサーブの販売が再開されることが発表された。現在は、GMからの補修パーツの移管や全国の販売店との再契約を進めている。
 なお、今後の販売店でのクルマや補修部品の発注はすべてサーブ本社のWEBを使用したクラウド・システムを採用するという。
 販売モデルは、9-3セダン、エステート、そして新車種の9-3X。今年の年末か来年初頭には新開発の9-5セダン、エステートを発売する予定だ。

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↑9-3セダン

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↑9-3エステート

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↑9-3X
 
 日本でのサーブは、かつては西武自動車販売が長く取り扱い、マニア向けのクルマとして定着してきた。しかし1989年にサーブがGM傘下に入り、1992年からはミツワ自動車(サーブ・ミツワ)が輸入権を持ち、その後は日本GMがインポーターに。97年にはヤナセに販売権が移った。2000年にサーブはGMの完全子会社となったため、日本では2002年から日本GMが輸入・販売を行うなど曲折があった。
 そして周知のようにGMの経営破綻によりGMグループの解体が行われ、2009年2月にサーブは会社更生手続きに入った。このためスウェーデン政府の管理下におかれ、生産は7ヶ月以上に渡って全面的に停止した。

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↑全面停止した組立ライン

 今年2月にサーブ・オートモビルABはオランダのスパイカー社(ハンドメイドのスーパーカーメーカー)の傘下に入り、自動車メーカーとして再出発し、生産・販売を再開した。
 そしてヨーロッパ、アメリカを中心に販売網を再建し、日本での輸入販売も今回のPCI社との契約により決定。販売店ネットワークは、GMアジアパシフィック系の既存販売店をそのまま継続する。なおスパイカー・サーブ・オートモビルABは従来通りスウェーデンのトロールハッタンに本社・工場を置いている。
 サーブ社はきわめて小規模(最高で年産10万台程度)にもかかわらず歴史から消えず、新たな資本投入会社が登場するという事実は、得がたいブランド力がある証明といえる。
 
 サーブ社はスウェーデンの軍用航空機製造会社として1937年にスタートし、第2次世界大戦後の1947年に自動車製造に着手。ユニークでプレミアムなクルマとして1970~80年代に評価を得たが、自動車メーカーとしての生産規模は驚くほど小さく、自国のマーケットも大きくないので、主として西ヨーロッパ市場とアメリカ市場での販売に力を注ぎ、輸出依存性が高いのが特徴のひとつ。
 1989年にGM傘下に入る段階で、航空機、軍備製造分野はサーブABとなり、自動車製造部門はサーブ・オートモビルABと分離され、相互の資本関係はなくなった。
 GM傘下となったことで、プラットフォーム共通化の一環としてスバル・インプレッサがベースの9-2X、シボレー・トレイルブレーザーがベースの9-7Xなどがアメリカ市場向けに作るなど、GMに振り回された形になったが、本来のサーブは軍用航空機メーカーらしいアイデンティティの明解なクルマであり、クルマ作りの哲学はドイツ的な技術指向とスカンジナビアのデザインセンスを融合させた独特のものだ。

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↑92プロトタイプ(1947年)

 サーブ社初のクルマ、つまり1947年型試作車の92プロトタイプは、ドイツのDKWを手本にした2ストロークエンジン/FF駆動であったが、航空機的な発想で作られた空力/モノコック・ボディは、同社の特徴をよく表していた。
 DKWはその後アウトウニオン→アウディとなったこともあり、サーブのエンジニアはアウディを意識していた。このため1970年代後半頃には、当時のアウディ100に対して、先駆的なターボエンジンを搭載した99、900を開発したサーブのエンジニアは、「アウディは高速直進性しか評価できない」といっていた。つまり、同じFFでありながらサーブはコーナリングやハンドリング、インテリアの作り込みの質が高く、アウディよりスポーティでプレミアムだと断言していた。
 サーブ900はアメリカでも日本でも評価が高く80年代後半には、日本でも作家など文化人が愛好して独自の価値観を持つプレミアムカーとしてちょっとしたブームにもなったほどだった。
 しかし皮肉なことに、アウディは80年代後半からF.ピエヒの指揮のもとで「A1」プロジェクト(ヨーロッパNo1のクルマを実現するというプロジェクト)を開始し、90年代に入るとその成果であるA4、A6を送り出し、従来のアウディのイメージを大幅に高めることに成功した。
 今日、サーブ社の取締役は、「サーブはアウディA6に匹敵するクルマでなければならない」と考えている。現在開発中の新型9-5は、まさにアウディA6をベンチマークとして作り込みを行っており、A6を超える先進性を備えているという。
 
 現在と今後のサーブのラインアップは、9-3(セダン、エステート)、9-3X(クロスオーバーカー)、今後新型の9-5(セダン、エステート)となる。つまりミディアムクラスとアッパーミディアムクラスという展開だが、同社の悲願としてコンパクトカークラスをラインアップしたいと考えている。なお車名は正式には93、95となるが、かつで93や95というモデルが存在したためナイン・スリーのような呼称とし、ハイフンを記入して識別している。
 現在の9-3シリーズは、2002年に登場した。プラットフォームはオペル・ベクトラ/キャデラックBLSと共通のGMイプシロンだ。開発コンセプトは「Sporty Driver Focus」で、これはサーブが従来から一貫して追求しているドライビングプレジャーを意味している。
 ドライビングプレジャーを重視したスポーツ性と、ラグジュアリーなテイストを持つため、アメリカではスモール・エグゼクティブカーと位置付けられている。

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 エンジンは新開発の横置き直4/2.0Lターボで、ベースはGMのエコテック・シリーズだが、ターボ装備やサーブ・トリオニック8エンジン制御システムなどサーブ独自の開発要素が大きい。
 直4エンジンはバランスシャフトも内蔵している。
 出力は低圧過給仕様が175ps、高圧過給仕様が209ps。いずれも最大トルクが2500回転で、
ターボエンジンのパイオニアらしさが感じられる。
 上級モデル用としてV6・2.8Lターボ8280ps)もラインアップされている。
 エンジン制御のサーブ・トリオニックは、点火プラグを燃焼モニターとして使用し、イオンを検出して燃焼をモニターして過給圧(電子制御アクチュエーターを採用)や点火時期制御を行う先進的なシステムだ。
 
 サスペンションは、フロントがストラット式、リヤはマルチリンク。堅固で安全性に優れたボディ、スポーティでクイック、そして正確なハンドリングがサーブの持ち味だ。

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 また装備面では、シフトレバーの後方のセンターコンソールに配置されたイグニッションキー、夜間走行ではスピードメーターのみの表示になるナイトパネル、ドライバーの前面でわずかに湾曲したインスツルメントパネル配置などは、航空機メーカー、サーブのDNAである。
 シートのホールドのよさと長時間座っても疲れにくい人間工学的に優れたデザインで、シートの作りのよさも定評がある。
 またエクステリアでは、3分割されたフロントグリル、クラム(二枚貝の片側)シェル形状と呼ばれる表面がなだらかな凸面で厚みのあるボンネットフード、大きく湾曲したフロントガラス、Cピラーのウインドウがホッケーステック・デザイン、リヤランプのレンズがアイスキュービックがサーブのアイコンである。
 かつての900まではFFであるにもかかわらずエンジン、トランスミッションは縦置きで、
前方からトランスミッション/デフ/エンジンと逆直列レイアウトであったが、フェンダー面まで開くクラムシェル・ボンネットは、整備性を高めることも評価されていた。

 9-3、9-3Xの技術的な特徴のひとつが、ハルデックス社(スウェーデンの駆動システム企業)と共同開発したXWD(クロスホイールドライブ)だ。システム的にはオンデマンド4WDともいえるが、さらに電子多板クラッチをリヤアクスルにレイアウトし、組み合わせて統合制御することで、リヤの左右輪のトルクも可変制御し、旋回性もコントロールすることが特徴になっている。
 このXWDは9-3の上級グレード、9-3Xに装備される。

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↑XWDのユニットレイアウト

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↑LSCユニットと多板クラッチパック

 ハルデックスカップリングは、1998年にVWゴルフ・シンクロ、99年にはボルボS60 AWDに採用されている。2002年にはCAN通信で制御する第2世代となり、2004年の第3世代からはフィード油圧ポンプに与圧を与えるPreXを採用。そして2007年からデファレンシャルポンプを廃止した第4世代に進化している。そして、この第4世代に組み込まれたのがXWDだ。
 XWDはハルデックスLSC(リミテッドスリップカップリング)とリヤデフの側面に装備されたeLSD(多板クラッチ)から成る。
 eLSDの多板式クラッチパックが、空転する後輪のもう一方の車輪により多くのトルクを流し、空転も抑制することで、ブレーキを利用したシステム(EDS)よりも効率よくトラクションを向上させることができ、空転防止のEDSのような不快な動作感覚もないのがメリットだ。また性能面では、ヨーダンピングを向上させ、ハンドリングではパワーアンダーステアを抑制することができる。
 乾燥路での急加速の場合はトルクの65%がリアアクスルに配分され、スピードが増すにつれ、トルクはフロントアクスルにシームレスに戻されていく。
 90km/h程度の安定走行時には、前後のトルク配分比率を90:10、状況によっては95:5に変化させる。
 しかしクルマがが水たまりを踏んだような場合、より大きなトルクがリアアクスルに伝達され、最大80%後輪に配分され、より大きなトラクション性能が得られる。またこの時に、後輪の片側が空転した時はもう一方のホイールにより大きなトルクを流し空転の抑制と、クルマの駆動力、安定性を両立させる。
 追い越し加速のような状態では後輪に45%、前輪に55%のトルク配分へと変化する。追い越しが完了すると、前後配分は90:10に戻る。
 このような前後駆動力配分と後輪の左右輪の駆動トルク制御を行うことが出きるのがXWDだ。
 オンデマンド方式は各種類が存在するが、ハルデックスシステムは駆動トルク伝達の応答性きわめて高いのも大きな特徴といえるだろう。

*PCI株式会社
*SAAB AUTOMOBILE

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