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ペダルの踏み間違いに関する考察

 相変わらず、交通事故でアクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違いとされる事例が後を絶たない。コンピニやスーパーマーケットに突っ込んだ、駐車場のフェンスを突き破ったといった事故例は、ほとんどがペダルの踏み間違いが原因である。
 (財)交通事故総合分析センターのデータと思われるが、公表されているペダルの踏み間違いが原因による交通事故は年間7500件ていどで推移しているらしい。
 もちろんこれは乗員や歩行者が死傷した事故データであり、物損など軽微な事故、あるいは事故に至らずケースはその10倍ていどと推定される。
 つまり、ペダルの踏み間違いの事故、あるいは操作ミスは、日常的に発生していることが考えられる。

事故原因
↑(財)交通事故総合分析センターによる工作物に対する事故の分析

 なお、ペダルの踏み間違いを犯しやすいのは高齢者と思われがちであるが、実際には極端な年齢的な片寄りは見られず、若者にも多い。強いて言えば、運転スキルの低い層が多いのではないかと相即できる。
 ただ、ペダルを踏み間違えても、修正操作により軽微な事故で終わるか、パニックになり修正操作ができず大きな事故になってしまうかという点を考えると、一定の属性があると推測できるが、こういう点はあまり研究されていないようだ。

 (財)日本交通安全教育普及協会で公表されている事故例は次の通り。
 
事故の概要
 平日の朝、Aさん(35歳)は、営業に出かけるため、会社の駐車場から表通りに出ようとしていた。駐車場の出口に近づいたところ、駐車場に入って来る同僚の車があったため、Aさんはアクセルペダルを放し、オートマチック車のクリープ現象を利用して車を低速で前進させた。その時、右方向から接近してくるBさん(63歳)の自転車が急にAさんの目に入った。Aさんは慌ててブレーキを踏んだつもりだったが、間違ってアクセルペダルを踏み込んでしまった。Aさんの車は急発進し、Bさんの自転車と衝突した後、道路の向かい側の金属製のフェンスを倒して停止した。

この事故から学ぶこと
 1986年頃、オートマチック車が低速走行中に急加速する事故が米国と日本で問題になった。当初は車の欠陥が疑われ、欠陥車を製造したと疑われたドイツのアウディ社は、売り上げを大幅に落として業績不振に陥った。しかし、その後に行われた大規模な調査により、これらの事故のほとんどがアクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違いが原因で発生したことが明らかになった。オートマチック車は運転しやすい車として近年では乗用車の大部分を占めるようになっている。しかし、便利な一方で、このような人為ミスがときどき発生することをオートマチック車に乗る人は忘れてはならない。

*この事故例では、Aさんはそもそも駐車場出入り口を通る歩道を通行人、自転車が通ることに対する予測が出ていておらず、突如発見した自転車に驚いたことが引き金で、とっさにブレーキ操作が実はアクセルペダルを踏んだことになる。また、事故から学ぶことの項目では、ATのためと断定されているが、MTでも起こりえると考えた方が妥当ではないか?
 
 このような単なる状況とやや乱暴なな結論付けが行われているだけだが、ペダルの踏み間違いによる事故が発生しているのは圧倒的に低速走行、あるいは発進、停止時、後進時であることは注目したい。
 稀には中速域、あるいはそれ以上の速度で走行中に、減速のためにブレーキペダルを踏みべきところをアクセルを踏んでしまったという事例もあるようだが、これは極端にスキルの低いドライバーであったり、パニック反応が極端なドライバーといえるだろう。
 低速走行、あるいは発進、停止時、後進時といった場合は、その時に必要とされるブレーキ踏力は弱い。イメージ的には、ブレーキペダルに足を載せ、軽く踏み込むといったレベルである。また同様な走行シーンでアクセルペダルを踏む場合も、微速前進というイメージで軽くアクセルペダルに足を載せるといったレベルである。
 そして、踏み間違いが生じて、ブレーキペダルのつもりでアクセルペダルを踏んでしまった場合、減速するはずが、逆に緩加速をする。この段階で操作間違いを知覚できれば修正操作が可能である。
 しかし、ドライバーの意志に反して緩加速をした状態で操作間違いが知覚できず、ペダルの踏み込み力が弱いものと錯誤してさらに踏み込むことによって、暴走事故となる。
 なおペダルの踏み間違いはAT車に集中しているのは確かだが、実はMT車でも発生することは把握しておきたい。
 
 研究機関では、このようなペダルの操作間違いは「認知」錯誤とされることが多い。
 しかし、実際にはペダル操作は「反射」操作と考えるべきだと思う。認知は、状況判断→減速または加速意志決定→(減速であれば)ブレーキペダルを踏む意志を持つ→右足をブレーキペダルの位置で踏み込むといった、頭脳で意識した上での肉体的な操作を意味するが、反射は意志決定以降は、無意識の、習慣付けられた操作なのだ。
 つまり右足で踏む、ブレーキペダルはアクセルペダルより左側にある・・・といった思考回路ではなく、減速、あるいは加速といった意志に対して反射的に右足を操作している。
 右カーブだから、ステアリングは右方向に回すべきといった思考回路を経て右にステアリングを切るのではないのと同様だと思う。
 したがって、踏み間違いを犯しにくいペダル配置、デザインは心理学や、反射行動分析、触感など多角的なアプローチが必要だろう。
 
 日常的に運転しているドライバーであれば、極低速や高速道路の巡航状態、つまりアクセルもブレーキも緩やかに操作する状態では、右足の踵はアクセルペダルとブレーキペダルの中間、あるいはブレーキペダルの下側に置かれている。ブレーキを軽く踏む場合はそのまま踵を支点に踏み込み、アクセルペダルを踏む場合は右足の踵を床につけたまま、右足を外側に倒すように動かす。つまり右足裏の上半分の右側でアクセルペダルを踏むイメージである。(もちろんこれは今日の車での話で、過去にはバスのように床面から突き出しているペダルもあり、この場合は踵を床に置く操作は不可能)
 より強くアクセルペダルを踏み込む場合は、右足の指の付け根あたりに力を入れるような操作であり、逆により強いブレーキが求められた場合は、踵を浮かせる膝全体で力を加えることになる。最も強力な緊急ブレーキではさらに腰全体を少し浮かせ体重を右足にかける。
 これに対して、スキルの低いドライバーは、右足全体をアクセル、ブレーキを移動させて踏み変えている可能性が高い。この場合は、踏み替え幅が一定しない、着座位置がずれる、などの理由で踏み込み位置がずれてしまうことが考えられるのだ。
 チェックポイントは、後進を想定し、ステアリングに手を添えたまま上半身を内側に大きくねじり、リヤウインドウ越しに後方を見るという姿勢で右足を大きく動かすことなく、ブレーキ、アクセルいずれも自由に操作できるかどうかである。
 
 ドライビングポジションの基本の1番目はシートの前後スライドを調整し、ペダルの踏み込み操作の確認と右足を置く位置の確認、2番目がステアリングのリーチ調整である。こうした基本事項も調整することは教えられても、その意味するところが教えられていないという現実も問題といえば問題である。

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↑スカイラインGT

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↑マツダ・ベリーサ

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↑VW ポロ

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↑VWゴルフ6

 なお技術的に、ペダルの踏み間違いを防ぐということはきわめて難しいため、今後は踏み間違えても事故を抑制する技術がメインになるだろう。
 その意味で、レガシィのアイサイト2に含まれている「AT誤発進抑制制御」はひとつの方向を示している。
 前方に障害物が検知された状態で、停止あるいは徐行状態のとき急なアクセル操作があった場合は、警報すると同時にエンジン出力を抑制するというものだ。障害物センサー(スバルの場合はステレオカメラ)は前方に指向しているため、後進では作動しないのだが。
 また、この技術は、停止あるいは徐行状態での、ブレーキ並みの踏み込み速度でアクセルペダルが踏み込まれる、つまりアクセル開度の速度を判定基準していると思われ、障害物が検知されていなくてもアクセルペダルをブレーキのように踏むと出力は駐車場のクルマ止でストップするほどのレベルに抑制されるのだ。
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BMWのエンジン技術を見る

 BMW Mobility of the Future - Innovation Days in Japan 2010が開催された。
 BMWとしての環境技術や、今後の技術的なロードマップを示すもので、東京だけではなく、ヨーロッパ、中国などでも開催されている。

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 まずはその技術的なロードマップ。いよいよ大型車、7ハイブリッドに続き、今年中にX6ハイブリッドが投入されることになった。BMWも近い将来は、ハイブリッドカーとコンパクトサイズカーにはEVの採用を決定したことを物語る。MINI Eはすでに実証実験車として600台がドイツ、ヨーロッパ、アメリカを走っている。また引き続き1シリーズ・クーペをベースにしたBMWコンセプト・アクティブEが2011年から実証実験走行車が登場するという。ただいずれにしてもEVは都市内のコミューター的な位置づけて、その先にはレンジエクステンダーを考えているのだろう。
 その一方で、従来からBMWが推進してきた水素エンジンは、否定をしないまでもトーンは低くなっている。水素タンクの問題より、水素生成のロードマップが不明確だからだろう。

次は現在採用されている個別技術に目を移してみる。

直噴インジェクター

 まずはガソリン直噴インジェクション・システムだ。噴射圧が200気圧のスプレーガイデッド・インジェクションである。デザイン的な特徴はこの高圧噴射と、インジェクターが燃焼室の真上、点火プラグに接するように位置にあることだろう。燃焼速度が最大限に追及されていることが分かる。また、リーンバーン運転も行っているとしている。この高圧インジェクターは、コモンレール式ピエゾインジェクターで、シーメンス(現コンチネンタルAG)製。3ステージ噴射を行うといわれている。またこのインジェクションシステムは、メルセデスの直噴エンジンにも採用されている。
 リーンバーンは4000回転以下の低負荷運転で行われる。現在では、他のメーカーはリーンバーンは放棄しているが、BMWは直上配置のスプレーガイデッド・インジェクターと組み合わせた成層燃焼にこだわっているようである。
 リーンバーンでは3元触媒が機能しないためNOx吸蔵触媒を装備し、この触媒を劣化させる硫黄成分対策も加えられているようだ。
 また注目されるのは、自然吸気の4気筒、6気筒エンジンは、リーンバーン採用に伴い、バルブトロニックを廃止し、ダブルVANOS(連続可変バルタイ機構)としている。つまりバルブタイミングの可変化により、吸気遅閉じなどミラーサイクル的な要素も取り入れているのだろう。(ただし、よりハイパワーのターボ版にはバルブトロニックを採用し続けているので、コスト的な要因も大きいと思われる)
また高圧直噴とあわせ、ターボを採用する方向も明確になっている。VWほど明確にダウンサイジング・コンセプトを提唱していないが、直噴+過給により小排気量化は間違いないだろう。

 BMWはターボシステムに関して「ツインパワーターボ」という呼称を採用している。
・直6用ターボは2種類
 べースはツイン・スクロール・ターボだ。
 BMW 335iやBMW 535iなどの直列6気筒3.0Lエンジンではツイン・スクロール・ターボを採用している。実はBMW初のターボ、BMW2002tiターボはツインスクロール・ターボであった。ただ当時はターボの材質などで完璧ではなく、短命に終わっている。
 ツインスクロールターボはシングル装備で、ターボチャージャーの排出ガス導入口を2
つに分けることにより、各気筒の排気の流れの干渉を抑え、バルブトロニックと組み合わせることで、これまで以上にシリンダーに吸入する空気のレスポンスが高まり、さらには燃焼ガスのシリンダー外への排出も促進されるため、過給圧の立ち上がりが早く、結果としてターボ・ラグが解消るというもの。ターボの2つの排ガス導入口にはそれぞれ1~3番気筒と4~6番気筒の排出ガスが導入される。直列6気筒エンジンの点火順序は1-5-3-6-2-4なので、排ガスはそれぞれの導入口に交互に導入されることになり、互いの排ガスの流干渉がなく、排ガスのエネルギーが効率よくターボ翼に導かれるのだ。
 一方、同じ直列6気筒でもパラレル・ツインターボが採用されている機種もある。BMW 740i/740Liなどの直列6気筒3.0Lエンジンはよりパワーを引き出すべく小型ターボを2連装する。それぞれのターボが1~3 番気筒と4~6 番気筒の排ガスを受け持つ。ひとつのターボ・チャージャーが受け持つ排ガスが少ないためターボが小型化でき、レスポンスを向上させることが出来る。

直6ツイン

・V型8気筒ツインターボ
 BMW 550iやX5 xDrive50iに搭載されるV型8気筒4.4Lツインパワー・ターボエンジンは、2基の小型ターボ・チャージャー(4気筒に各1基)をV型のシリンダー・バンクの間に配置する独特のレイアウトを採用する。このレイアウトのため、外側吸気、Vバンク側排気と、通常とは吸排気を逆転したレイアウトである。このレイアウトのため排気マニホールド、吸気経路がともに短く、エネルギー損失や圧力損失を最小限にし、エンジンのレスポンスを向上させている。

V8ツイン

・V型8気筒Mシリーズ用ツインターボ
 Mモデル用のV8エンジンは、もちろんツインターボだが、ツインスクロール・ターボをV型8気筒エンジンのバンク谷間に配置する。つまりVバンク間にレイアウトするのは通常のV8と同じだが、ツインスクロールタイプであることが特徴だ。このツインスクロールターボと排気ポートを接続するために独特のクロスバンク・エキゾーストマニホールドを採用している。つまり2個のタービン入り口を持つツインスクロールとし、V8エンジンの排ガス干渉を抑えてより強力なトルクとクイックなレスポンスを追及し、エンジンが持つポテンシャルを最大限引き出し、アクセルを踏んだ瞬間から強力なパワーを発揮されること狙った、まさにパラノイア的なレイアウトといえる。
 このエンジンの中核を成すのがクロスバンク・エキゾーストマニホールドで、このエギゾーストマニホールドは対向するバンク間の2気筒ペアで排出ガスを集約し、合計4本の独立した排ガスの流れを作り出す。その4本の排ガスは2基のツインスクロール・ターボに2本ずつ導かれる。それぞれのツインスクロール・ターボは、2本の排ガスの流れは、相互の干渉を回避でき、独立したまま2つの導入口を介してタービン翼まで導かれる。この結果過給圧の立ち上がりが早く、自然でダイレクトなレスポンスを実現するのだ。
 このクロスバンク・エキマニはBMWが特許を保有する。
 また、このMモデル用のV型8気筒は、ドライサンプに匹敵する強力な複数のオイル・サクションポンプを装備している。これは高い横gがかかった状態でも確実なオイル循環をはかるためだ。

V8ツイン 2

・V型12気筒ツインターボ
 BMW 760LiのV 型12気筒6.0Lツインパワー・ターボは、片側バンクごとに1基ずつターボを装備。つまりこれは通常のレイアウトである。V型12気筒のバンク角は60度とV型8気筒エンジンよりも狭いため、Vバンク間にはレイアウトできず、エンジンルーム内の空間を有効に活用する観点から、ターボ・チャージャーは両バンクの外側に置かれている。

・電動ウォーターポンプ
 一般的なエンジンではウォーター・ポンプはエンジンの動力で駆動され常にポンプは作動し冷却水を循環させている。そしてポンプの容量はエンジンが最も高温となる運転状態でもじゅうぶんな冷却を行えるように設定されており、冷却水の水温調整はラジエーターに送る冷却水の量を変化させることで行っている。一方電動ウォーター・ポンプは電気モーターで駆動されるためエンジン回転数とは関係なく、冷却水循環量を自在に制御することができ、エンジンが冷えている時には冷却水循環量を極力抑えることで、ポンプ駆動のためのエネルギーを節約できる。また、冷却水の温度をきめ細かく制御できるため、通常の走行時には冷却水温度を高めにしてフリクションを抑え、高速走行をする場合には、ウォーターポンプを積極的に駆動させ、冷却水温度を低めにして、出力を最大限まで引きすことができる。
 日本では、プリウスなどごく一部しか採用されていないが、本来は全てのエンジンに有効な技術だ。

電動ポンプ

・マップ制御式オイル・ポンプ
 エンジン内にオイルを循環させるオイルポンプもエンジンの動力で駆動され、オイルポンプはアイドリングのような低回転でも十分な循環量を確保するように設計されているため、エンジン回転が上昇するに従って循環量は増加する。一般的なエンジンではオイルの流路に単純なバネを用いた調節弁がついているだけで、日常よく使用する2000rpm前後の領域では必要以上にオイルを循環させ、結果的にフリクション、駆動損失を生み出している。マップ制御式オイルポンプはオイルの循環量をきめ細かく制御すらため、常にエンジンが潤滑に必要としている分だけをオイル循環させることができる。
 これもすべてのエンジンに有効な技術である。

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・カップリング付エアコン・コンプレッサー
 エアコンのコンプレッサーそのものをクラッチによってエンジンの駆動から切り離し、無駄なエネルギーの消費を抑制するもの。
 エアコンのコンプレッサーは、近年は可変容量型コンプレッサーが使用され、エアコンがOFFの時にはコンプレッサーは最小の容量で作動しているが、そのような状態でもコンプレッサーが回転する際の摩擦抵抗等により、エンジンにかかる負荷はゼロではない。カップリング付エアコン・コンプレッサーは、この負荷を取り除くものだ。

・ブレーキ・エネルギー回生システム(マイクロ・ハイブリッド・テクノロジー)
 ブレーキ・エネルギー回生システムでは、加速時には発電は行わずバッテリーが蓄えいる電力を消費。つまり加速時にはオルタネーターは駆動されない。バッテリーの充電は、クルマが減速時(すなわちドライバーの足がアクセルペダルから離した時)、これまで捨てられていた運動エネルギーを使用してオルタネーターを駆動することで得られる。
 従来の車両はバッテリーを充電するためにオルタネーターは常に駆動され加速時にもエンジンの動力を使用し、バッテリーがフル充電の状態では、それ以上充電は行われないようになっていた。

電気回生

 ブレーキ・エネルギー回生システムでは、インテリジェント・バッテリーセンサーが、バッテリーの充電状況をモニターし、バッテリーの残量が一定のレベル以上(図の緑色のゾーン)ある場合、加速中にはオルタネーターの駆動を停止。車両が使う電力はバッテーに蓄えられた電力によってまかなわれる。減速中にはオルタネーターは最大出力で発電する。減速する頻度が少なくバッテリーが蓄えていた電力を消費し続け、残量が中程度に下がると(図の黄色のゾーン)、オルタネーターは加速中でも発電し、車両が使要している電力を補う分だけを発電。バッテリーの充電のための発電は行わないので、オルタネーターが必要とする動力(燃料消費)は少ない。そして減速時には充電が行われる。さらにバッテリーの残量が一定レベル以下になると(図の赤色のゾーン)オルタネーターは従来通りの発電、つまり加速中でも発電を行う。つまり電力マネジメントを行えば、ブレーキエネルギーを回生でき、燃料消費を少なくすることが出来るのだ。
 残念ながら日本車全般では、充電制御(加速時や、満充電時に充電を抑制する)といったシステムが採用されているていどで、この面では遅れている。

・ハイブリッドカー
 BMW ActiveHybrid 7のシステム合計最高出力は342kW(465ps)、最大トルクは700Nm(71.4kgm)。0→100km/hは4.9秒という圧倒的な運動性能を発揮する。つまりBMW ActiveHybrid 7は、世界で最も高性能なハイブリッド・システム搭載モデルで、このあたりにBMWのハイブリッド観が見える。
 BMW 750iおよび750Liに比べ、最高出力が14%、最大トルクが17%の向上を実現しているが、10・15モードで燃量消費率が約40%向上する。小型軽量設計のリチウムイオン・バッテリーの採用により、ハイブリッド・システムによる車両の重量増は75kg、トランクスペースは460Lを確保し、実用性と機能性を犠牲にしていない。
 また、ニューBMW ActiveHybrid 7は、BMWのオートマチック・トランスミッション車としては初採用となるアイドリング・ストップ機能、「ハイブリッド・スタート/ストップ機能」を装備する。このハイブリッド・スタート/ストップ機能の搭載によりアイドリング中にエンジンが自動的に停止し、信号待ちや渋滞での無駄な燃料消費を抑え、CO2 排出量および燃料消費量を削減する。特に発進と停車を頻繁に繰り返す日本の交通状況に
おいては、このハイブリッド・スタート/ストップ機能が燃料消費量の削減に非常に大きな効果を発揮するわけだ。
 なおこのアイドルストップ/ハイブリッド適合8速ATはZF社の最新ユニットである。

2010 ルマン24時間レース

*ルマン24時間公式サイト

 6月12~13日に開催される第78回ルマン24時間レースは、またもやアウディ、プジョーのディーゼルターボ・エンジン同士の戦いになる。
 アウディは1999年以来、企業スローガン「Vorsprung durch Technik」を実践する場としてルマンに出場している。当初はV8直噴ガソリンターボエンジンで挑み、2006年からはディーゼルターボエンジンで参戦して優勝し世界を驚かせた。こうした高速・大出力ディーゼルターボエンジンの技術は、日本ではもはや到達不可能なほど先に行ってしまった
気がする。また、ルマン24時間レースは、F1グランプリをはるかに凌駕する本物の自動車レースだということを実感させられる。

 2010年、アウディは燃費をさらに向上させたマシンでレースに臨む。昨年の3位という結果を受けて、ディーゼルレーシングカー「Audi R15 TDI」は数多くの部分に改良が施され、さらに燃費の良いマシンに進化させたのだ。アウディスポーツの技術者達は、広範囲にわたり、細部を詳細に見直すことで、新設計の5.5L、V10・TDIエンジンの出力を、レギュレーションによる厳しい規制が行われたにも関わらず、昨年と同レベルの600ps、1000Nmという出力にまで高めている。旧型エンジンより軽量コンパクトなエンジンに進化したのだ。

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 R15プラスと呼ばれる徹底的に改善された空力特性によって、最高速度も向上。ラジエーターはその取り付け位置を変更。コクピットは、以前のそれよりもさらに人間工学的に進化した仕様となっている。
 さらに高性能スポーツカーR8に装着されているLEDヘッドライトシステムが、2010年型AudiR15 TDIの補助灯として採用され、夜間走行において高い視認性が得られるという。
 またバッテリーは小型のリチウムイオン電池も採用。
 今年3月以降、R15プラスは4万km以上におよぶテスト走行を消化した。テスト走行は、異なった路面での30時間に及ぶ2度の耐久走行や、各種の状況を再現した風洞を使った空力解析、ラジエターに悪影響を及ぼすことを想定した非常に汚れた路面でのテスト、ルカステロとスパフランコルシャンで行われた2回のルマンシリーズレースへの出場、そして5月末に南フランスで行われた最終テストが含まれており、最終テストでは空力特性とマシンのセットアップ、タイヤのコンディションなどのバランスが確認された。
 参戦車両は、シャシナンバーR15-202(7号車)、R15-203(8号車)、R15-204(9号車)の3台だ。
 
 アウディの最大のライバルとなる、プジョーは同じくディーゼルターボを搭載した908HDi FAPを送り込む。プジョーも、早い時期からルマンに備え、3月にはアメリカのセブリング12時間レースに出場し、1、2位を独占した。
 その後もヨーロッパで実戦テストを行い、ルマン24時間レースに備えた。
 908は、5.5Lの100度V12ディーゼルターボエンジンを搭載。730ps、1200Nmの出力といわれる。エンジンはオールアルミ製、6速トランスミッションは電動エア圧式でリカルド製。パワーステアは電動式。エンジン総合制御はボッシュ製。
 出力に関してはプジョーが有利と思われるが、問題は燃費だろう。

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 なお6月9日に行われた予選1回目では、プジョーが3台のワークスカー、1台のセミワークスカーにより、トップから4位までを独占し、アウディR15は5番手につけた。
 
*プジョー908HDi FAPのカステルでのテスト風景

*スパでの実戦テスト アウディR15 TDIプラスと激突

*ルマン24時間レース最終予選

 6月11日、第2回目、最終予選が終了し、プジョー908 HDi FAPのワークスカー3台が1~3位を独占し、4位もサテライトチームの、チーム・オレカの908 HDi FAPが入っている。4年連続のポールポジション獲得である。
 オリヴィエ・ケスネル(プジョー・スポール・チームディレクター):「チームは全力を尽くした。これまでのところは最高の結果が得られているが、まだ勝利も手にしたわけではない。準備は万端だが、だからと
いってレースに楽に勝てるわけではない。ポールポジションの獲得は、ひとつの過程にすぎない。優勝できるかどうかは、まったく別の話だ。」
 アウディチームが予選での戦いを挑まなかったこともあり、最終予選では細かなセットアップを中心にした作業を行ったようだ。
 いっぽう、AUDI R15 TDIは、予選の走行時間はすべて決勝レース用のセットアップのために時間を費やし、タイム争うには加わらなかったとしている。チームを指揮するウルリッヒ博士は、「燃費とタイヤの耐磨耗性が昨年より向上していることが確認できたと語っている。
 アウディスポーツの3台のR15 TDIは、プジョーに続き、5~7位を占めた。またR10を駆るサテライトチームは12、13位につけている。なおアウディのコンピューターシミュレーションでは、3分22秒2が予想タイムであったが、実際の予選ベストタイム(恐らく決勝レースを想定した走りで)3分21.981秒だった。

Dr. ウォルフガング ウルリッヒ (アウディ モータースポーツ代表):我々は、2度の予選セッションをマシンのセッティング向上のためにフル活用し、2009年モデル
に比べてマシンの性能を向上させることに成功している。その結果、我々は予選を通じて得られた知識を総動員し、決勝レースに向けて出来る限りの準備を行うことが出来た。

ラルフ ユットナー (アウディスポーツ チームヨースト テクニカルディレクター):技術的問題がまったくおきない予選だった。これは、非常に喜ばしいことだ。我々は昨日収集したデータをすべて利用してレース用のプログラムを作成した。そして、3 台のマシンすべての性能を向上させることが出来た。今日の2 つのセッションの間に、我々は非常に複雑なデータ解析の結果をマシンに反映させ、その結果すべてのドライバーが満足している。何人かのドライバーが予選終盤にファステストラップを更新したことは良いことだが、それは我々にとっては大して重要なことではない。我々はすでに、決勝レースに注目しているのだ。

*AUDIテレビ 車載カメラ・ライブ

プジョー 24時間レース・ライブ 

 決勝レース序盤、プジョーは3分21秒5、アウディは3分23秒5といったラップタイムを刻んでいる。パワーで勝るプジョーが先行し、4時間経過時で1周の差がついている。燃費で勝るアウディが燃費メリットを生かすことが出来るか?

 レース後15時間を経過し、依然トップはプジョー2号車、4号車が4番手にいるが、2、3、5番手はアウディで、1位のプジョーと2位のアウディの差は1周。ラップタイムで比較すると、プジョーとアウディでは終始2秒差があるが、やはり燃費=燃料補給の回数で差が拡大していない。
 そして、トップのプジョー2号車にターボトラブルが発生し、リタイア。1号車は電気系トラブルで12分間ストップ。これでアウディ9号車がトップに立ち、2番手もアウディ8号車となった。ターボトラブルは、油圧系の問題か異物吸入か。
 なお、スタート後3時間でリタイアした3号車はサスペンション取り付け部の破損、1、2号車は朝方にエンジン、ターボの破損でリタイア。最後の1号車もゴールまであと2時間という時点でエンジントラブルのためリタイア。プジョーによれば、908 HDi FAPのデビュー以来、これほどエンジントラブルが続出したのは初めてのことだという。

 レース終盤、アウディは9号車、8号車、7号車の順で1~3位を独占し、そのままゴールを迎えた。
 9号車はノートラブルだったと思われる。燃費、信頼性をを徹底的に追及し、ルマンのタイトルをプジョーから奪還した。
 今回のアウディR15 TDIは、当初のコンセプトの通り、燃費、耐久性を重視するためパワーは600psていどに抑えている。ターボは、市販ディーゼルと同様の可変ジオメトリーターボを初採用。レースではターボ温度は1000度Cに達するが、これに耐える耐久信頼性を実証。また燃費は前年モデルより20%向上させているという。
 今回のルマン24時間レースは、ウエットコンディションにならなかったこともあり、397周(約5410km)を走破し、1971年にポルシェ917が記録した最長走行距離を上回っている。当時とは異なり、現在はユーノディエールにシケインが設けられているため、71年の記録を破ることは不可能と考えられていたが、プジョーとの激しい争いの影響もあって新記録を打ち立てた。

 なお、アウディ、プジョーなど主要チームはミシュランタイヤを使用したが、ミシュランは、速さと安全性を保ちながら4スティントを走りきることができる耐久性を備えたタイヤを提供した。つまり650km以上の距離を平均時速240kmで走行することを目指したタイヤを実現したのである。これも従来の常識を覆したといえる。
アウディの発表では、優勝車の平均速度は225.228km/h。1971年以来の記録更新となった。
 また走行距離は5410.713kmで、これも記録を更新。また優勝マシンの平均燃費は2.303km/Lで、これは2000年にアウディが平均速度208.660km/hで初優勝した時よりも10%以上優れた数値という。
 使用したタイヤは11セット(最終スティントでスローパンクチャーのために交換したセット含む)とは驚かされる。つまりタイヤ1セットあたり平均491.9kmを走行している。
 優勝車のAudi R15 TDIのピットイン回数は合計33回、合計ストップ時間はわずか20分間であった。
 
 それにしても24時間にわたり途切れることのない、車載カメラによるライブ放送にも驚かされた。

ブレーキアシスト・システム(BAS)

 メルセデスベンツの市販モデルにブレーキアシスト・システム(BAS)が採用されたのは1996年モデルからである。
 ABSが初採用されたのが1978年であるが、ABSの採用にあたり電動ブレーキ液圧ポンプが装備されたため、このポンプ液圧を使用することで、ECD(電子制御デファレンシャル)、ETRC(トラクションコントロール)、さらにはESC(スタビリティ・コントロール)などに発展した。その過程でBASも登場したといえる。
 日本ではトヨタでもメルセデスベンツよりやや遅れて登場し、トヨタ以外のメーカーも数年で普及させている。
 BASはあまりコストをかけることなく採用できるので、普及が早かったと思われる。
 ただし、BASは本来はABSのポンプ液圧を使用するが、簡易型としてマスターバックで機械的に最大制動力を引き出すタイプも登場している。


↑BASの作動(出典:トヨタ)
 
 スウェーデンの交通安全コンソーシアムの研究結果では、30km/h以下での交通事故の事例では、ブレーキをまったく踏んでいない(わき見、不注意、居眠りなど)、ブレーキを踏むのが遅れた(不注意、パニック)、ブレーキ力が弱い(パニック、ブレーキスキル不足)が75%以上とされている。
 これは累積された実際の交通事故の調査研究をもとに最近発表された結果であるが、20年以上前からベンツ社は独自のアプローチを行っていた。
 その重要なツールが、ドライビング・シミュレーターであった。

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↑ベンツ社のドライビングシミュレーター。現在は最新式に更新され、これは使用されていない。


↑ベンツ社のドライビングシミュレーター。テストしているのはBASプラス

 これは実車が収納できる大掛かりなドライビング・シミュレーターで、一般的なドライバーにステアリングを握らせ、さまざまな走行シーンでの運転操作を分析した。つまりクルマそのものの動きより、ドライバーの心理や行動から安全性を探ったのだ。
 その過程で、一般のドライバーの70%は、事故が発生する寸前の危険な状態でもブレーキ踏力が不足していることが判明した。
 通常は、衝突事故を起こす寸前のブレーキは「パニックブレーキ」と呼ばれるが、パニック状態にもかかわらず、あるいはパニック状態であるがゆえに、最大のブレーキ力を得るためのブレーキ踏力が不足していたのだ。
 この結果から、ベンツ社は、緊急時特有のブレーキペダルを踏み込む速さやストロークを検知して、パニックブレーキと判定されると自動的にポンプ液圧を最大限にかけるBASを実用化した。

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↑BASのイメージ図

 トヨタはBASの開発にあたり、テストコースで事務職を含む多くの社員を動員して、緊急ブレーキテストを繰り返したという。テストモードとしては、ドライバーには情報を与えず、見通しの効かないカーブの先に障害物を置くというものだったようだ。
 テスト結果は、45%のドライバーが不十分なブレーキであった。

brake踏み
↑トヨタの調査結果

 ベンツ社より不十分なブレーキのドライバーの比率が少ないのは、おそらくテストコースという条件だからと思われる。ベンツ社のドライビング・シミュレーターは、一般的な道路環境が再現されている。
 なお、2009年11月から、EU ではブレーキアシストシステムがすべての乗用車と軽商用車の新型車に義務付けられ、2011年2月からすべての新車に適用されている。これは道路交通における歩行者安全性向上を目的とした新 EU 規制のひとつだ。
 
 なぜ、一般のドライバーは衝突する危険の直前にもかかわらず、じゅうぶんな、最大限に強いブレーキがかけられないのか。これは単純に、ブレーキをかけることに対するスキル、経験がないものと考えられる。
 一般に、運転操作には個人特有のパターンが身についている。市街地でも高速道路でも、
その人によって使用するブレーキのパターンは一定化し、弱いブレーキを好むドライバーは市街地でも高速道路でも、つまり車速に関係なく日常的に弱いブレーキを踏む。また、かなり強めのブレーキを多用するドライバーでも、公道では最大0.4gていどのブレーキとされる。
 これに対して、差し迫った衝突を回避するハードなブレーキは0.8g以上であるが、日常のブレーキはそれよりはるかに弱いブレーキなのだ。
 最大限に強いブレーキを踏んだことがない、経験したことがない、したがってスキルがないというドライバーが圧倒的に多いのだ。逆にいえば、安全運転スクールなどで最大限のブレーキを体験したドライバーはブレーキのスキルを備えているはずだ。
 もうひとつの重要なのは心理的な要素だ。例えば、日頃からレースで最大限のブレーキを多用する、ブレーキに関して高いスキルを持つレーシングドライバーでも、公道上で思いがけず事故に巻き込まれるようなケースで、かならずそのときに必要な最大限のブレーキがかけられる保証はない。
 まして、一般ドライバーの場合は、衝突事故に巻き込まれる寸前の状態では心理的にパニック状態になり、筋肉が硬直して動作が遅れ、ブレーキも思い通りに踏み込めなくなる。
 このようにブレーキのスキルがないことと、心理的なパニックにより、危険な状態でもブレーキの踏み遅れと踏力の不足が生じるのだ。メルセデスベンツ社は、こうした心理反応面に着目しているのは注目すべきだ。
 
 安全運転スクールでは、基本メニューとして緊急ブレーキを体験することから始まる例が多い。通常はウエット路面で、強いブレーキをかけABSを作動させることを体験させる例が多いようだ。
 しかし本来は、ドライ路面、ウエット路面の両方で、ABSなし、ABSありの最大ブレーキを体験することが望ましい。
 ABSなしのケースは、もちろんタイヤをロックさせることで車体の安定が失われ、スピン状態になることを体験できる以外に、ABSの介入なしで最大のブレーキかけるにはどのていど踏み込めばよいのかが体験できるからだ。
 一般的には、通常のドライバーがABSなしの状態で最大限のブレーキをかけると、フロントタイヤがロックし、リヤタイヤはロックしない。もちろんこの状態でABSが装備されていればABSが作動し、それが最大限のブレーキと考えてしまうだろう。
 しかしながら、本当の最大限のブレーキは、4輪ロックの状態であり、ブレーキの踏み初めからできるだけ短時間で4輪ロック状態にするということだ。
 このときなイメージ的には、ブレーキペダルが折れるくらいの力の踏み込みで、右足に全体重をかけるような感じだ。ABSなしで一瞬で4輪ロックに持ち込むほどの至難だが、まず前輪がロックしたのを感じたら、そこからさらに一段強くペダルを踏み込むことで4輪ロック状態の最大ブレーキとなる。
 ABS装備車は、この違いが体験できないのだが、同じABS装備車でABSが作動しても踏力の違いで制動距離に差が出るのはのペダル踏力の差による。
 
 BASは、緊急ブレーキを判定されると自動的に最大限のブレーキがかかるが、実はその状態でも、完全なフルブレーキのスキルを持つドライバーと、非熟練ドライバーでは制動距離に少し差が出るのだ。

brake効果
↑BASの有無、熟練ドライバーと一般ドライバーの制動距離の差

なお次世代のシステムとして、ボッシュ社から衝突予知ブレーキアシスト( Predictive Brake Assist=PBA)がすでに登場している。(ベンツ社ではBASプラスと呼称)レーダーやカメラなど車両センサーの前方認識情報を活用することで、実際に事故が起こるよりも前に事故に備え始めることができるというシステム。
 PBAはアダプティブクルーズコントロールのレーダーセンサーからのデータを使用して、事故になる可能性のある状況、その中でも急ブレーキが必要となりそうな状況を検出し、パニックブレーキングの前にブレーキシステムを準備する。事前にポンプ液圧をブレーキシステムに供給してより早く必要なブレーキ圧が作れるようにし、ドライバーが気付かないくらいごく軽いブレーキをかけブレーキパッドをディスクに押し当てるスタンバイ状態とする。
 さらに、PBAは油圧ブレーキアシストシステムの作動のための閾値を3 段階で下る。
 さまざまな研究により、事故が起きる状況下であっても適切に反応し十分な強さでブレーキをかけることができたドライバーは全体のわずか 3 分の 1 であり、ほとんどのドライバーは躊躇してブレーキを踏む力が弱すぎて、油圧ブレーキアシストシステムが起動しないことがわかったという。(これはきわめて強いパニック状態の場合と思われ、特にヨーロッパのように200km.hといった高速走行時)
 ブレーキがスタンバイされていると、ドライバーがブレーキをかけると1/100秒単位でより早いフルブレーキング効果を得られる。この1/100秒がきわめて貴重で、生死を分ける場合があるのだ。 このようにPBAシステムは、従来のBASよりさらに早く緊急ブレーキを作動させることができる。

クリーンディーゼルの時代は来るか

 ポスト新長期規制に適合したスーパークリーン・ディーゼル車、つまり最新のガソリン車と同等の排ガスレベルを達成したのは日産エクストレイルに続き、メルセデスベンツE350ブルーテック、そして5月末にML350ブルーテックも追加された。ただしML350ブルーテックは少数限定輸入車扱いとされている。

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 日産のM9R型はルノーとの共同開発で、当初のユーロ4適合から、ユーロ5、ユーロ6/ポスト新長期適合へと進化させてきた。2.0Lで173psという高出力で、トランスミッションはMTのみであったが今年8月にATもラインアップするという。日本ではエクストレイルのみに搭載されるがヨーロッパではキャッシュカイ、さらにルノー車にも採用されている。ただユーロ5適合車がメインとなっている。
 メルセデスベンツのブルーテックは、コンセプトはかなり以前から提唱されていたが、アドブルー(ドイツ自動車工業会による商標:尿素水)と選択式還元触媒(SCR)の組み合わせによるNOx後処理を備えたブルーテックは、アメリカ市場への投入が最初(Tier2 Bin5適合。従来のCDIは規制除外の特定の州でしか販売できなかった)で、昨年秋から日本に投入された。これにより日本における今後の排ガス規制のポスト新長期適合を果たしたわけだ。
 尿素水+SCRの組み合わせは世界初とされているが、これは乗用車用という意味で、先陣を切ったのは日産ディーゼル(2004年)であった。
 ただ、いずれにせよ日本ではスーパークリーン・ディーゼル乗用車の選択肢は日産エクストレイルとメルセデスベンツしかないのである。
 
 では今後、日本でも続々とスーパークリーン・ディーゼル乗用車が登場するかといえば、現実にはあまり希望は持てそうにはない。
 2005年頃から日本の自動車メーカーも乗用車用のスーパークリーン・ディーゼルの本格開発に踏み切った。ヨーロッパでのラインアップ展開ではディーゼルエンジンが不可欠なこと、日本では政府のエネルギー政策に応えるという二つの理由があった。
 しかし2008年のリーマンショックにより、自動車メーカーの開発予算は大幅に縮小され、日本の自動車メーカーの乗用車ディーゼルエンジンの開発(特にポスト新長期規制向け)、量産車展開には大きなブレーキがかけられてしまった。
 その結果、日産以外でスバル、三菱、ホンダ、トヨタ、マツダがヨーロッパ向けとしてユーロ5適合エンジンをラインアップしたものの、日本のポスト新長期規制をクリアするエンジンの登場は延期、もしくは中断されてしまっているのが現実だ。さらに、アメリカ市場で乗用車ディーゼルの普及率がアップするという予測がはずれ、EVやハイブリッドカーに急速にシフトしつつある現実の前に、日本のメーカーはさらに及び腰になってしまった。
 経済産業省が推進する次世代自動車普及戦略では2020年にスーパークリーン・ディーゼル車の普及を5%と見積もっているが、現状では空想的といえる。

次世代戦略

 ヨーロッパではディーゼル・エンジン車は約50%の普及率になっていることはよく知られている。2000年頃から特に普及が加速しているが、その理由はCO2の削減に有効であることが知られたことと同時に、ディーゼルエンジンの高性能化が果たされよれがユーザー層に支持されたからだ。

欧州ディーゼル

 もともとヨーロッパ市場では、ユーザーの走行距離が多いため、ガソリンエンジンより燃費と低速トルクに優れるディーゼルが市民権を得ていたが、ディーゼルに新世代の技術投入が行われ、さらなる高性能化が実現したことでいっそう普及が促進された。
 ただ、車種的には中型、大型車が主流であり、燃料の軽油はガソリンの価格と同等レベルのため、実用燃費や性能で選択されていると見るべきだろう。
 
 日本の自動車メーカーはヨーロッパ市場に展開するためにユーロ4→ユーロ5規制に適合するディーゼルエンジンを開発したが、ヨーロッパ市場に限定した生産基数から考えて、とても採算が取れるレベルにはない。
 また、ディーゼルエンジンのコストは一定数の量産を行ったとしても、同クラスのガソリンエンジンの2倍以上とされ、コスト負担が極めて大きい。
 確かに、コモンレール・システム、ピエゾ・インジェクター、可変ジオメトリーターボ、電子制御EGRシステムといった現在のディーゼル・エンジン特有の高価な装備、エンジン内部部品のコスト、さらに大トルクに適合する専用トランスミッションまで含めると、ガソリンエンジン車との価格差を50万円ていどにする限り採算割れは確実だろう。
 さらに、ポスト新長期規制やユーロ6規制に適合させるためには、主としてNoX処理のためにNOxトラップ触媒、あるいは尿素水/SCRが必要とされ、さらにコストはアップする。
 したがって技術的な開発はともかく、日本国内での量産展開は厳しいといわざるをえない状況にあると思う。
 
 日本の自動車メーカーのクリーンディーゼル・エンジンの現状を概観する。
 日産:ルノーとの共同開発によりM9R型2.0Lエンジンを実現した。コモンレール式(1600気圧)、ダブル・スワールポート、ピエゾインジェクター、可変ジオメトリーターボ、圧縮比15.6、NOx処理はリーンNOx触媒を採用しポスト新長期規制に適合。

 
 
 ホンダ:i-DTEC。2.2L 、180ps。コモンレール式(1800気圧)、ピエゾインジェクター。
可変ジオメトリーターボ、圧縮比16.3、Nox処理はリーンNOx触媒を採用しポスト新長期規制に適合。

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 三菱:1.8Lの4N13型と2.2Lの4N14型をラインアップ。コモンレール式(2000気圧)、ピエゾインジェクター、可変バルブ(MIVEC)による吸気バルブ早閉じ+片弁低リフト、可変ジオメトリーターボ(4N14型は排気+コンプレッサー翼可変)、圧縮比14.9(世界一の低圧縮比)。NOx処理はリーンNOx触媒を採用しポスト新長期規制に適合。

三菱4N13_14.9
 
 トヨタ:海外向けND型1.4L、AD型2.0/2.2Lディーゼルを開発中。ユーロ5適合エンジンはヨーロッパの工場で生産中でヨーロッパでのディーゼルエンジン比は15%ていど。ユーロ6は、低圧縮化、可変バルブタイミング機構、コモンレール式、フィードバック制御ピエゾインジェクター、可変ジオメトリーターボ、リーンNOx触媒で適合予定。

トヨタ
 
 マツダ:ヨーロッパ向けMZR-CD 2.2L。コモンレール式(2000気圧)、ピエゾインジェクター、可変ジオメトリーターボ、圧縮比16.3、NOx処理はリーンNOx触媒、または尿素水+SCRで適合予定。

 スバル:水平対向2.0L。ユーロ4からユーロ5に適合、コモンレール式 ソレノイド式インジェクター 可変ジオメトリーターボ。ユーロ6適合は未発表。

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 このように最新の乗用車ディーゼルエンジンは、低圧縮化、クールドEGR、高圧インジェクターの採用を進め、NOx低減をはかっている。高圧インジェクターは燃焼、黒煙粒子の改善、それ以外は燃焼時のNOxを低減するためだ。黒煙粒子はDPFによって捕捉する。
 NOxの後処理はリーンNOx触媒、または尿素水+SCRで処理することで、ユーロ6、Bin5、ポスト新長期規制に適合する。トラック、バスやメルセデスベンツの例のように比較的大型のクルマには尿素水+SCRが適合し、小型車はスペース的な要因でリーンNOx触媒を採用する。大型トラックやバルは圧縮空気システムを持つため尿素水の噴射には圧縮空気を使用するが、乗用車に採用するためには専用の噴射ポンプが必要になる。また約20Lの容量の尿素水のスペースも小型車には負担となる。

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 いずれにしてもディーゼルエンジンでは黒煙粒子(PM)とNoXの発生は背反項目であり、またNOxは希薄燃焼を行うディーゼル燃焼の根本的な宿命である。
 黒煙粒子の対策とCO対策は参加触媒と粒子用のフィルターを一体化させることでほぼ解消できているが、NOxの処理が現在の規制で大きなテーマとなっている。NoX対策システムに高いコストを要すると、乗用車においては高額車以外では採用不可能だろう。

最新システム

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 このようにスーパークリーン・ディーゼル・エンジンはコストを下げない限り日本では普及は絶望的である。ピエゾインジェクターではなくソレノイドインジェクター化や、NOx後処理装置の簡素化=低NOx燃焼化技術の実現が大きなテーマとなっていると思う。
 ただ、いずれにしても日本のように乗用車の走行距離が短い使用条件では、なかなかディーゼル乗用車のコストパフォーマンスは割に合わないというのも事実だと思う。
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