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ヒルデブラント& ヴォルフミューラー

 800px-ZweiRadMuseumNSU_Hildebrand_Wolfmueller.jpg
↑H&W

 1894年にドイツで誕生した初の量産ガソリンエンジン・オートバイ、ヒルデブラント&ヴォルフミューラー(H&W)は、同年からミュンヘンの工場で量産を開始した。生産台数は300台以上といわれている。ガソリンエンジンを搭載した2輪車は、1885年にダイムラーが試作した木製のエンジン付き2輪車で特許を得ているが、これは純然たる試作車であった。また、ガソリンエンジン以前にも蒸気エンジンを搭載した2輪車がすでに1860年頃には存在したが、量産モデルとは言い難かった。そういう意味では、H&Wは画期的な量産車だったといえよう。
 なお、カール・ベンツは1886年にガソリンエンジンを搭載した3輪自動車で特許を得ており、これが自動車第1号と呼ばれている。
a-Reitwagen.jpg
↑カール・ベンツが特許を取得したエンジン付き2輪車。とても走れそうには見えない。特許のために製作したのだろう。

 そして、このH&Wは生産から2年後の1896年に日本に登場した。なお厳密には、これ以前に蒸気エンジンを搭載した2輪車が日本に輸入されていたと見られるが、公式に販売されたことも走行した記録も残されていないようだ。
 H&Wは銀座の十文字商会が輸入したもので、皇居周辺の道路で公開試走を行っている。
 以下は、その様子を伝える東京日日新聞の記事である。
 なお、H&Wの主要諸元は次の通り。
 
・4ストローク・ガソリンエンジン 2気筒 1488cc ボア×ストローク90×117 mm  最高出力2.5 PS/240回転 車重 84kg  最高速度40km/h
 
1896(明治29)年1月21日(火)
 石油発動自転車試運転(1)
 一昨の日曜日、和田倉橋辺より東京ホテルの近傍一線、砥(といし)の如き大道に参々伍々、相佇立(あいちょりつ)しし、訝(あや)しげに左顧右眄(さこうべん)する幾多の老若男女を叱咤して数輌の自転車を快走せしむるを見たる者は、忽ちにして万歳の呼聲、御堀の閑鴎(かんおう)を驚すものあるを知りたらん。是れ石油発動自転車試運転なりやと知らずや。此の新奇なる自転車は、昨年四月独逸国ミュンヘン市のヒンデルブラント及オルフミルレル両氏により創製せられ、其製作の巧妙にして、其の使用の利便を極めたる、一時間能く六十哩を疾走するといふ。往日石油発動機を輸入して世の視聴を聳動(しょうどう)せしめたる等、機を看るに敏なる十文字信介が、率先して之を輸入し、公衆の面前に試験したるもの。
 一見するに其の形状は、普通の二輪自転車と大差あるなし。発動機関は腰掛けの下、足かけの間にあり。石油筒は把手の下方、前輪の上に斜懸し、小煖室(点火装置であるチューブイグニッション用の燃焼室)其の下にあり。円筒に要する冷却水は、車輪の上部にあり、泥除けを兼用す。機関と相並べる二条のゴム束帯一は、円筒前方と、その他は後輪に於けるクランクの両端に付し伸縮して、輪の回転を助けしむるなりという。其の運転の様は如何。
 其の回転を開始するには、先ず備付けいるアルコール点火器にて、煖室内の一部石油の通過する銅管を三分及至五分程熱したる後、石油筒と煖室との間に於ける導管のコックを開放すれば、石油は一種の気体と変じて猛烈なる燃焼をなすに至る。この火力は、煖室と円筒とに通ずる二個の砲金製の導管によりて円筒内の空気を強熱し、併せて油気を伝て膨張発動を起し、ピストンとゴム束帯とをして伸縮の運動をなさしめ、以て車輪を回転するものなり。と雖(いえど)も、第一の行動は普通自転車に乗る時の如く、暫く手にして押し出し、動勢を興しつつ進みながら乗車せざるべからざる。回転中一種奇怪の小音を発するは、円筒内の気体を排出するに出て、噴煙発臭等の事なきは、此の機に最も貴う所たり。此の自転車の速力は、右把手の左にある整速子を以て容易に加減を得べし。即ち把手を握りたる侭(まま)、母指にて左方に之を旋転すれば、意の如く速力を加ふべく。之を右に旋転するや、亦意の如く遅緩に転進せむるを得、進行を止むるにはブレーキを抑ゆると同時に、母指にてストップバルブに通ずる安全器を押し下げ、之を安全段に懸くれば、数歩にて直ちに停止するを得るの装置なり。
 これ其運転方法の大要にして、他は大約普通自転車に乗るの心得を以てすれば易々(いい)たりといふ。

1896(明治29)年1月22日(水)
石油発動自転車試運転(2)
 実際の試験は、更に改めて二重橋前、緑樹の間にほのかなる、いとも畏き宮居を仰ぎつつ行なわれたり。猟具館の技手丹野氏、軽装して西方に向ひ、徐(おもむろ)に動勢を加えつつ数歩を進め、突如一躍して車上に跨る。勢(せい)、勢を生じ、動(どう)、動を加へ、右に曲折して芝の園生(そのう)を回走す。気、内に充ちて、輪、其の勢を増すや、急の又急、速の又速、空を劈(さ)り、風生じて疾駆する時、衣袂翩翻(いべいへんぱん)として背後になびき、小松の枝のまにまに忽(たちま)ち隠れ、忽ち顕(あら)はるるのさま、鳥の飛ぶが如としといはむか、人をして覚えず快哉を呼ばしめぬ。普通自転車の攻手数人、こころみに相競ふと雖(いえど)も、終に其の半にだも及ぶなし。一緩一急運転の自在と、進止の随意とを実験し、無上の好果を以て路人を驚嘆せしめ、其試験を終えぬ。
 数分時の後、東京ホテルの楼下、内外五六十の客を集へて、愛嬌と才弁とを以て説明する禿頭童顔の紳士は、猟具館主十文字信介なりけり。「新発明の利器、新発明の機関を率先輸入するは、家国を益する尠小(せんしょう)ならずと雖も、その率先者は須らく大決心を以て、一時の損失を意となさざるの覚悟を要す。資力饒(ゆた)かなるもの宜しく大いに奮はざるべからず」とは、氏が熱心の言葉なりき。而して氏は、更に進んで説明せり、「この自転車を率先輸入したるは我猟具館なれど、実地活用を企図したる最先者は、三吉正一氏なり」と。此の最も新に、最も巧なる機関をして、更に其一歩を進ましめ、人力車大、若くは馬車大に応用せしむるは極めて容易のとなるべく。而して利便と快味とは一層拡張せらるべし、とは満座の客が其思を一にしたるところなりき。
 「露国と何かが出来たむ時、斯の如き新利器を豊かに応用するを得べくむば、是豈(あ)に千古の快事にあらずや」とは、十文字氏が放胆語なれども、あながち一条の話柄(わへい)のみにあらじ。若し夫れ是を、邦人の手に製作し、更に安価を以て世に普及せしむるを得ば、所謂伝令、警察、探訪、郵便等を益する広大なるべきは、云ふ迄もなく。其工案を一進して、其応用を広かしめむか、運輸交通界の面目を刷新するの日、期して待つべきなり。
 米国帰りの紳士は、前年これに類似せる機関を米国に視たりあると説かれぬ。兎も角も、これを実地に活用せしむるを得たるは、最近のとなるべく。而してこの好結果を以て本邦に実試せれたるは、固(もと)より、今回を以て破天荒をなす。
 試みに其原動機の石油消費幾何なりやと問ふ。「然り、仙台への往復に、大約三升あらば足らむ」と、これ一時の戯言(ぎげん)なるも、また以て其真相を見るべし。試に価を問ふ。「五百五十円」と十文字氏は答へぬ。要するに吾人は、無限の希望と、無上の快感とを以て、是を世に紹介するの労を喜ぶもの也。

*石油という言葉が多用されているが、これはガソリンを意味する。明治初期より日本では、スタンダード石油(アメリカ産)、シェル石油(ボルネオ産)が灯油を中心に販売されていたので、ガソリン(揮発油)も入手できた。
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