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AUDI Q5の技術

 アウディのMクラスSUV、Q5

 5月21日、アウディジャパンから新型MクラスSUVのQ5が発表された。
 Q5はQ7の弟分になるが、Q7はポルシェ・カイエンやVWトゥアレグと共通のSUV専用大型FRベースのプラットフォームを使用しているのに対し、Q5はアウディA4、A5と共通の乗用車プラットフォームを使用している。もちろん、アッパーボディは専用で、このボディ構造に対して、昨年末にカーエンジニアが選考したカーボディ大賞が授与された。まあ要するにプロが唸ったボディ構造ということになる。
Q5のホワイトボディ

 ボディの鋼板の使用比率を見ると、高張力鋼板の比率は70%に達している。高張力鋼板の開発は日本の製鉄メーカーが先行し、それに伴って日本車が世界No1の高張力鋼板使用率を誇り、欧米メーカーは高張力鋼板の価格が高い、欧米では入手しにくい、製造工場での量産に適さない・・・などの理由で使用比率が低いとされてきた。
 しかし、近年のプレミアムメーカーはどんどん高張力鋼板の使用比率を上げてきており、今ではホワイトボディの70%に達しているのだ(最近発表されたメルセデスEクラスも70%だ)。
 現在の日本車はせいぜい40%~50%である。
 高張力鋼板は加工するために大型プレス機が必要だが、一般鋼板より軽量化ができるというメリットがあるが、近年ではより軽量化と強度を高めるために超高張力鋼板、さらには超超高張力鋼板の使用の行われ、そのためにホットプレス機による熱間成形工法が採用されている。そのホットプレスによる超超高張力鋼板の採用比率も、日本車を上回っている。このホットプレス材が使用されるのは衝突安全性を高めるために強度を確保する部分であり、高強度と軽量化を両立させているのだ。
 ちなみにボロン鋼のホットプレス材を使用しているのは、センタートンネル、インナーシル、Bピラー、縦通メンバー、ラゲッジ・バルクヘッド&クロスメンバーで、これらは1600メガパスカル材を使用。こうしたホットプレス設備を内製化しているのはアウディ社が世界初だそうだ。

 Q5のボディ構造は、A8に採用されているASF(アウディ・アルミ・スペースフレーム)いらい、骨格をスペースフレーム的にデザインする技術を確立・洗練させているといえる。
 またQ5はボンネットやフェンダーを始め、パネル部にアルミ材を多く採用している他、フロント・サスペンションやサブフレーム、リヤサスペンション・リンクなどもアルミ鍛造材や鋳造材を多用しているのも特徴だ。
 ボディの製造では、73%、5000箇所がスポット溶接、さらに2液混合接着剤による接合が17%、接合長さは83m、残りの10%はレーザー溶接、さらに細部ではサイドセクション、ルーフレール部のゼロギャップジョイント、リヤゲート排水ガター部など見える部分はハンダ溶接を採用して品質を高めていると言う。接着接合の割合が大幅に増加していることは注目しておきたい。量産性からいえば、当然ながらネックになるが、質感や減衰性能などを重視しているのだろう。日本のメーカーもバブル期には採用事例があるものの、その後はあまり流行っていない。生産性が悪いと考えているのだろう。
 さらにフレームの空洞部にはすべてホットリキッドワックスを充填しており、これも世界唯一のメーカーとのこと。
 なおQ5は、今年アメリカの保険業界団体の安全審査団体IHSが行った衝突安全テスト(前面オフセット、側面、後突)で最高ランクを獲得。またアメリカ運輸省の高速道路交通安全局(NHTSA)の正面、側面衝突試験でも最高ランクを獲得したそうだ。IHSが最高という認定をするには、上記の衝突実験でGOODの評価を得ることとESPを装備していることが条件となる。これで、アウディはアウディA3スポーツバック、A4、A6、Q7に加えてQ5も最高ランク入りしたことになる。
http://www.safercar.gov/
http://www.iihs.org/ratings/default.aspx

ボディのスチール材料割合

 ボディのエアロダイナミクスも追求されており、Q5はSUVではダントツのCd=0.33になっている。アンダーフロアのフラットな処理はいつもながら見事であり、樹脂カバーに頼るだけでなく、排気管やサイレンサーはフロアに完全に埋め込み、しかもリヤエンドはフロア全体がアップスィープしてディフューザー形状になっている。
Q5の床下空力処理

 エンジンは、直4・2.0Lターボ直噴と、3.2LのV6直噴の2種類で、いずれも直噴+可変バルブリフト機構(ハイ・ロー切り替え)を装備。パワー、トルク、燃費で競合車を上回るという。
ハイ・ローリフト切替機構

 トランスミッションは7速のSトロニック(DCT)のみ。このDCTは縦置きであることはもちろんだが、細身(ただし全輪駆動用プロペラシャフトがミッションの右側面を縦通している。そしてフロントデフは、デュアルクラッチの下側部分にある新型A4/Aからのレイアウト)である。インプットシャフトを2重構造にすることで3軸化をはかり、ミッション後端にセンターデフ(トルセンLSD)、を備えている。
Sトロニックの機構
 駆動システムはもちろんクワトロで、トルセンLSDの作用により、前輪に最大65%、後輪に最大85%の駆動トルクを自動配分できる。
 
 サスペンションはフロントが5リンク式、リヤがセルフトラッキング・トラベゾイダル式で、これはA4/A5と同じだ。もともとフロントは4リンク式を採用してきた。そのそも4リンクはダブルウイッシュボーン形式で上下のハブ側ピヴォットはダブル・ジョイント化させ、仮想キングピン軸を理想配置にしてきた(ホイールセンターのキングピンオフセットを最小化)また、理想主義的に、タイロッド干渉を極小にするためステアリングラックはトランミッションの上にマウントし、タイロッドはホイールセンター位置にレイアウトしてきた。
 しかし近年、タイヤがさらに高性能化し入力が大きくなってきたため、剛性を確保するためにステアリングラックをサブフレーム面に置き換え(ただしサブフレームマウントではなくハブ吊り下げ式)、タイロッドもサスペンション・リンクとして数えるため、5リンク式と名称を変えたのだ。
5リンク・サスペンション

  リヤ・サスペンションは従来からのトラベゾイダル式で、いわゆるマルチリンクである。
セルフトラッキング・トラベゾイダル・サスペンション
 ESPはSUV用に特化され、なんとルーフレールにリーフキャリアー装備すると専用の制御に切り替わると言う。重心高の変化に自動対応させようというわけだ。
 オプション設定のドライブセレクトは、スロットルレスポンス、ステアリングのパワーアシストと可変ギヤ比、Sトロニックのシフトプログラム、連続可変ダンパーの特性などを統合的に、スイッチで選択できるシステムだ。
 また運転支援システムとして、リヤビューカメラ付きパーキングアシストは標準装備、オプションでは車体左側側面の視界を確保するサイドビューカメラなども設定。
 リヤブレーキランプは、ブレーキを踏むと照度アップし、減速度0.7G以上の急制動では自動的にハザードランプが3秒間点滅するなど、安全機能を高めているなどの心配りはにくい。

 SUVとしての性能も過剰なほど追求されており、ヘビーデューティなクロスカントリー4WD車と同等レベルになっている。SUVでここまで必要かとも思われるが、妥協しないというのが同社のフィロソフィだから。

 オフロード性能





 

 
 

 
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ニュルブルクリンク24時間レースの印象

 ニュルブルクリンク24時間レースが終わった。現地の主催団体のWEBで映像がライブで見られるし、ドイツのWEBでもWEB TVが流されていた。以前は、定点のWEBカメラの映像のみだったからずいぶん進化したものだ。
 総合のトップ争いは、マンタイ・レーシングのポルシェ911・GT3・RSRとアウディR8・LMSの白熱した戦いとなった。マンタイ・レーシングはカラーリングは垢抜けないが、ポルシェの強力なバックアップを受けワークスカー同等のマシンを持ち込んでいる。比較的新しいチームなのだが、近年のニュル24時間レースでの活躍により、バックアップが強化されているようだ。
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 AUDIは4台のワークスカーを2分して2チームで参加したが、予選ではトップタイムをマークできなかった。予選トップは誰も予想しなかったフォードGTだった。レースは予想通り、多くの911の中でも別格の速さを見せるマンタイ911・GT3とアウディR8の争いになったが、比較的序盤にR8の一角が崩れ、事実上2台のR8とマンタイGT3の戦いになったが、序盤は911・GT3、中盤から後半にかけてはR8がリードしたが、終盤に来てGT3に逆転されてしまった。ただ、24時間を走って実質は5分程度の差しかないつかなかったのだからレベルの高い争いだ。
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 もっともアウディR8は、やはり確実に911・GT3を上回る力はなかったのだから、失敗や敗北が許されないアウディにとっては大きな反省点となるだろう。(もっとも名目上のクラスはそれぞれ異なるため、R8もSP9-GT3クラスのクラス優勝、911・GT3はSP7クラス&総合優勝)
 映像で見る限り、マンタイ911・GT3とR8はやはり別格の走りであるが、それはパワーが強力というだけではなく、シャシーのセッティングがすばらしく、例え縁石を踏んだり、路面の荒れた場所でも動きはしなやかで軽快であり、軽いバウンシングだけで走り抜けることができた。2台ともリヤが重いので、普通にセッティングしたらかなり強いピッチングが生じるはずだ。
なお優勝車は、24時間で3933 kmを走破、これは2006年にマンタイ・レーシングのポルシェが打ち立てた最長走行記録を101 km更新し、まさにニュル24時間レース史上最速のレースであった。

 話題のレクサスLF-A、IS-Fは傷だらけの完走を果たした。もちろんトヨタ・ワークスチームではなく、あくまでもプライベートチームでの出場であり、チーム構成員、メカニックもプロではなく、普通の社員レベルであるため止むを得ないところもある。プロのレースメカニックは、経験、訓練に加えて周到な準備を行うが、社員クラブチームはやはりアマチュア的である。もちろん、結果最優先のシビアな雰囲気よりアマチュアライクであることがよいところもあるのだが、あまりにもメカニカル・トラブルが多いのは問題がある。こういうレースでは、壊れない、壊れにくいということが最も重要だからだ。トラブルが多ければ、実験的な意味も薄れてしまう。
 LF-Aはシャシーに関しても未だ迷いがあるように感じられた。フラットな路面では問題ないが、縁石に乗ったりすると対角線を軸にしたダイヤゴナル振動を生じていた。これはまだバンプ・ストロークの制御や減衰力のバランスに課題があるということだろう。
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 2Lターボクラスでは、予想通りVWモータースポーツのワークスカーが実力を発揮した。シロッコGT24 、GT24-CNG驚異的な速さを示し、CNGでもガソリン・エンジンと同等レベルであった。また、ワークスカーに恥じない、きちんとした作り、つまり軽量化、空力、エンジン出力やブレーキ、トランスミッション設定などは絶妙で、その走りはVWモータースポーツ社のWEBビデオのインカーカメラで実感できる。面白いのは、DSGミッションのため、ドライバーは左足ブレーキに徹し、まさにAT車でサーキット走行をしている感じである。
 レース中盤まではシロッコは4台が順序良く並んで、じりじりと総合順位をアップし、トップ10に迫ろうとしていたのは壮観だった。しかし後半に入り、クラッシュなどに巻き込まれ、完全なフォーメーション走行は崩れてしまったが、圧倒的なSP3Tクラスのトップ優勝となった。なおCNG車は、ATクラスでの優勝だが、SP3Tクラスに組み込んでも、トップのシロッコから2周遅れの2位に相当するのだ。

 同じSP3Tクラスには、STIから参戦したインプレッサWRX/STIが出場した。シロッコは、1周のラップタイムはほとんど9分台だが、インプレッサは10分台で稀に9分台後半に入るレベルであり、1周あたり30秒近く、つまりラリーで言う㎞あたり1秒もの遅れだった。車重が、インプレッサの方が150kgほど重い、パワーが50psは異なるという条件のため、止むを得ないところか。
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 もっとも、STIのスタンスは、エンジンは市販状態(ただし吸気制限穴を装備し、回転数も耐久性重視のため6000回転制限で、市販車よりパワーは低い)で、トランスミッションも市販状態で、レース用の対策はなく、もっぱらシャシーチューニングの方向性を探るという実験的なテーマでレースに臨んでいるため、当然の結果とはいえるだろう。車高も市販状態より少し低めたていどの状態で、24時間レースにターゲットを絞ったVWシロッコとはまったく異なる。

 ニュルブルクリンク24時間レースは偉大な草レースと呼ばれているが、ワークスチームはやはり世界トップレベルのマシンを仕上げ、すばらしい走りを見せてくれるし、プライベートチームは限りなく市販状態に近い状態で出走し、レースを楽しむ。またメーカー系チームでも、レース結果より実験的な内容を求めることもあり、そのスタンスが大きく違うのが面白く、ただの草レースとは全然違う。
 LF-Aのような未市販車でも出走が許されるし、チューニングに応じてクラス分けをしてくれる懐の広さもあるレースなのだ。そのためもあって、ディーゼルターボ、CNG、ハイブリッドカーなどもレースに参加し、それぞれの目的に応じてくれるところが魅力だと思う。
 ただ、いずれにしてもこのニュルブルクリンクの耐久レースでより速く走るためには、耐久性だけではなく、乗り心地、快適性、ブレーキや加速、操舵の安定性、つまりシャシーの安定性などがきわめて重要であり、いかにドライバーの負荷が少なくできるかという、大きな課題が掲げられていることは重視されるべきだと思う。

新型レガシィの印象 (3)

 新型レガシィのエンジンは、今回から排気量を拡大して2.5Lメインとなり、従来の2.0Lクラスから脱却を図っている。したがって、EJ25型4気筒がメインになり、それ以外では3.6Lの6気筒が設定されているのみとなっている。この2.5Lはストロークは2.0Lと同じため、ボア×ストロークは99.5×79.0㎜とビッグボアのエンジンである。なお従来レガシィには日本仕様は自然吸気2.5Lがあり、北米向けは2.5Lターボもあったわけで、今回は北米向けに一本化されたといってもよい。ただし、2.5Lエンジンのパーツの90%は新設計になっている。
 通常の直4は、排気量が大きくなるほど2次振動面で厳しくなるので、2本のバランスシャフトを装備する。2Lクラスはもちろん1.8Lクラスでもこのバランスシャフトを装備するのが常識化しつつあるが。しかし水平対向4気筒の場合は2次振動の制約がないため問題なく2.5L化ができ、バランスシャフトがない分だけ軽量なのである。いまさらという感じがするが、直4に比べて水平対向4気筒エンジンの滑らかさ、特に3000から4000回転あたりの滑らかなフィーリングは特筆されるべきだと思う。
 今回のEJ25のラインアップはベースエンジンとなる16バルブ・SOHC版と、DOHCターボ版がある。また、アウトバックにのみL自然吸気6気筒のEZ36型が設定されている。これも北米向けトライベッカに採用されているエンジンを手直ししたものだ。
 SOHC版は、ほぼ新設計で、樹脂インテークマニホールド、可変バルブリフト機構、レギュラーガス使用で、高出力化、フラットトルクと2.0Lと同等レベルの燃費、SU-LEVを達成した。
 ターボ版は、圧縮比9.5と高圧縮比で過給を行い、国産車で初めて2000~5600回転の幅で完全にフラットな最大トルク域特性を実現している。これは電子スロットルと過給圧の電子制御を緻密に行うことで実現したのだろうが、トランスミッション容量の制約に合わせたという意味もある。パワーは285ps/6000回転だ。
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 ターボエンジンの大きな変更点は、エキゾーストマニホールドとターボの配置が革新されたことで、、ターボは従来のエンジン右後方からエンジン全部中央に配置換えされたのだ。このため、排気ポート→等長エキゾーストマニホールド→ターボの通距離が大幅に短縮され、排気エネルギーを直4ターボエンジンに近いレベルでターボに導くことができ、しかもターボ前後の蓄熱容量を抑えることができるため触媒の早期活性化、つまりコールドスタートでの排ガス浄化性能の向上が実現するのだ。このため2次エアポンプは廃止された。
 またこのレイアウト変更により、排気ガスエネルギーが効率アップしたためにツインスクロール/チタン翼といった従来型で使用された超高価なターボではなく普通の小型ターボを採用できるようになった。さらにターボの下側レイアウトにより、エンジンの重心も25㎜下がっているという。ただ、低い位置にターボがあるため、軸受け用オイルをオイルパンに戻すために専用スカベンジポンプを備えている。
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 またターボ・エンジン仕様は、デュアルAVCS、タンブルジェネレートバルブなども装備。吸排気AVCSはEGRの増大をはかるためだろう。またタンブルジェネレートバルブは、過給圧が低い時の燃焼室内の流動性を高めて燃焼速度を向上させるためだ。燃焼室の表面積が大きいので有効だと思う。
 排ガスは従来のU-LEVからSU-LEVに。つまり、EZ36も含めて全エンジンがSU-LEVになっているのだ。
 EZ36は、EZ30で採用されていたポルシェと同じINA社製の可変バルブリフト・タペットを廃止したりカム駆動チェーンレイアウトを変更するなどしてトライベッカに採用されていたもので、今回のアウトバック用はレギュラーガス化もはかっている。チューニングは、やはり低中速重視になっている。
 今回から点火プラグは中心電極がイリジウム針、外側電極に八角形の白金チップの突起を付けた新型プラグが採用され、低速時の着火性能が一段と高められているのも注目だ。これはEGR量の増大、冷間始動時の着火性能を重視したためである。

 トランスミッションは、2.5ターボ、EZ36系は従来からの5速AT、6速MTが設定されるが、2.5LのSOHCには新開発のCVT「リニアトロニック」が組み合わされることになった。今後の燃費重視の柱となるトランスミッションとして開発されたはずで、縦置きトランスミッションとしてはアウディに次ぐが、アウディはFFモデルにのみ使用しているのに対し、スバルはAWDに適用した。もっともスバルはかつて、ジャスティでたぶん世界初の量産CVTを採用し、日産マーチにCVTを供給したりと先駆者なのだが、小排気量エンジン向けに限っていたため、大排気量向けでは出遅れ感がある。
 今の潮流ではDCTが主流を形成しつつあっるが、ボルグワーナー社が特許を持つ油圧クラッチ/油圧変速モジュールが高価で、変速制御ソフトの熟成にも時間、コストがかかるとあってあきらめたようだ。
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 設計にあたっては、縦置きレイアウトのため、幅と高さの制約が生じるが、スバルのCVTは幅を抑えるために、入力軸をギヤで変換して上に持ち上げ、出力軸も位置を下げるという手段で解決した。また、CVTのベルトはファンドーネ式の金属ベルトではなく、ドイツLuk社製のチェーン・ベルトを採用。変速比6.3とCVTとしては最高レベルを実現しているのは凄い。通常のCVTは6.0未満なのだ。
 このため、ギヤ比は1速相当で3.5、6速相当で0.56というワイドさで、しかも高いオーバードライブ比が実現している。MTモードでは6速に設定した。発進時の滑らかさやクリープを生かすためにトルコンを装備しているが、もちろん走り始めればほぼロックアップ状態となる。
 なおこのCVTは350Nmていどのトルク限界らしく、EZ36、EJ25ターボではぎりぎりとなるため今回はSOHC版にのみの適用となっているが、将来的には?
 また駆動効率では、現在のところ油圧多板ツインクラッチのDCTよりこっちの方が油圧損失が少ないそうだ。

 さて試乗した印象だが・・・今回のニューモデルは、プラットフォーム/シャシー、エンジン、トランスミッションなど大半のユニットが新設計となっていることもあって、熟成不足、消化が足りない点がいくつか気になった。開発工数が不足し、車両トータルでの商品性監査が行き届いていない、総合的な性能目標が不明確といった点が目に付いた。
 ベース車となる25iは、燃費を重視するあまり、低転動抵抗タイヤを装着しているので、せっかくの2ピニオン・パワーステアとのマッチングが悪く、直進近辺の操舵感や落ち着き感が薄く頼りない手応えとなり、その一方で16インチタイヤにもかかわらず路面からの入力がきつい感じがする。
 18インチタイヤを装着するSパッケージは、操舵感は25iより優れているが。ただ、スポーツ感を強調するあまりスタビライザーが強すぎるのか、サスペンションのストローク感が希薄で、その一方でタイヤのコーナリングパワーが強い、ステアリングギヤがクイックといった点が重なり、しっかり感のある味に欠け回頭感が軽い。全車とも車内の静粛性は向上しているが、特に25i、GT・Sパッケージはロードノイズ、タイヤと路面との当たり音が気になり、また乗り心地もフリクショナルな感じがした。
 そういう意味では、アウトバック/3.6Lが適度なサスペンションのストローク感があり、乗り心地やエンジンのトルク感、伸びなど総合的に最もバランスがよく、レガシィらしさが表現できているように感じられた。
 今回は全車がSIドライブが標準装備で、始動時のデフォルトはIモードになる。Iモードでは、アクセルペダルの初期ストロークの領域の不感部分が強調され、スロットルの開きが遅く少量といったところも燃費を重視した結果のチューニングだろうが、これも少しやり過ぎだ。
 もちろんAWDの2.5Lクラスで、燃費は高いレベルになっていることは評価しておくべきだろう。
 リニアトロニックはかなりハイレベルに仕上げられておりCVTを意識することない。また5速ATも滑らかさや変速レスポンスが向上しているなど、トランスミッションはかなり熟成度が高いと思う。
 新装備の電動パーキングブレーキは、ユニットとしてはメルセデスベンツのものと同じだそうだが、初めての設定とあって、手動でボタンを押してブレーキをかけ、またヒルホールド機能もドライバーが任意にスイッチを押して設定するなどドラバーに頼る方式にしているが、オートモードがあってもよいのだが。なお、走行中で電動パーキングブレーキをかけるとABSが作動するそうだ。
 インテリアでは、シートはかなり改良されている。ただ、表皮のカラーなどはイマイチだ。ダッシュボードまわり、ステアリングホイール、ドア内装などはいずれもチープさが感じられてしまうのはレガシィとしてはマイナス点だ。
 

新型レガシィの印象(2)

 5代目レガシィのプラットフォームは、新世代のフレキシブル・プラットフォームである。
 フロントは従来のクロスメンバーの代わりに、新開発のクレードル(揺り篭)フレームを新設し、リヤはインプレッサから採用された新ダブルウイッシュボーン・サスペンションを組み合わせている。
 クレードルは「コの字」型で、エンジンの両サイド下側に縦通し、前部は左右が結合され、エンジン直下はクレードルを結ぶクロスメンバーを締結。
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 エンジンはワイドスパンのマウントでクレードルに支持され、クレードルは6点でボディにボルトマウントされる。フロントサブフレームの6点支持は、ヨーロッパのプレミアムクラスでは常識になりつつあるが、国産車ではニッサンGT-R、フェアレディZに続いて3番目だと思う。
 従来までの間隔の狭いしかもルーズなボルト穴式の4点マウントに比べ、支持間隔の広い6点止めは、サブフレームの支持剛性が格段に高くなり、正確な位置決めが可能になるのだ。高出力、ハイグリップタイヤを備えたハイパフォーマンスカーにとって、今では不可欠な要点のひとつである。通常のクルマが、なぜルーズな4点式サブフレーム・マウントを採用しているのか。その理由は、製造ラインで、ボディの下側からエンジン/サブフレームを持ち上げてボルト止めする際に、ルーズな4点式の方がはめ込みが簡単だからである。
 クレードルはフロント・ロアアームの取り付け点も兼ねているので、ロアアームの位置決めも従来よりはるかに正確になるのだ。従来型はロアアーム前側のピボットはクロスメンバーにあり、リヤピボットはボディに設けられていたので、リヤピボットを軸とした位相ずれは不可避であった。
 もうひとつ、クレードルの採用により、従来はフォレスター、エクシーガのNAモデルにしか採用されていなかった電動パワーステアが採用可能になった。従来はターボモデルはクロスメンバーに接して排気系が通るため、電動パワーステアと干渉して装着できなかったのだが、クレードルの採用、ターボのフロント配置により装着できるスペースが生まれたわけだ。その電動パワーステアは操舵感にこだわった2ピニオン式で、これもはカヤバ製だが国産車ではスバルのみが採用する。
 もうひとつ、ラックギヤケースは、クレードルのクロスメンバーに4点ボルト止め(キャノンマウント)されているため、従来方よりラックの位置精度が向上しており、操舵時の質感と精度の向上が期待できるのだ。
 このようにクレードル構造の第1のメリットは、ハンドリング・操安性の質的な向上であるが、第2のメリットはエンジンマウントの取り付けが左右方向でワイドスパン化するとともに、エンジン前方、トランスミッション部の4点マウント(従来は3点式+ピッチングストッパー)となったことで、振動・騒音を抑制し、さらにコーナリング初期のエンジンの横ズレが少なくなり、これも操縦性の向上につながるわけだ。
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第3のメリットはエンジンのエキゾーストマニホールドの配置の自由度が生まれ、結果的にターボをエンジン前方に配置し短いエキゾーストマニホールドと組み合わせることができ、蓄熱容量を下げることでターボ・レスポンスの向上、排ガス浄化性能の向上につながる。第4のメリットは、より衝突安全性を高めることで、衝突時には従来より大きなストロークでエンジンを後退させながら床下の落とすことができるようになったのだ。
 リヤ・サスペンション、リヤ・サブフレームの構成はインプッレッサなどとほぼ同等だが、ジオメトリーが多少変更されているようだ。
 フロントはクレードル構造となり、リヤは新設計のダブルウイッシュボーン・サスペンションとしたことで、ハンドリングはよりリニアで正確となり、操舵の質感も向上した。リヤもメカニカル・グリップ力が高められ、安定性、グリップ限界ともに向上。
 ということで、新型レガシィのハンドリングは、従来型に比べ2ランクほどレベルアップしたのではないかと思う。
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 アッパーボディの骨格は、新環状力骨構造と呼ばれ、もともとストレートな前後方向の骨格フレームとリング状のフレームを組み合わせた合理的でしかもキャビン強度の高い定評のある設計となっている。高張力鋼板は45%程度使用され、サイズは大型化されているにも関わらず軽量・高剛性である。
 これ以外では、前後のバンパービームの取り付け部はクラッシャブル構造とし、軽衝突時にメインフレームがゆがむ事を防止したり、ラジエーターフレームもボルト止めとして軽衝突時の修理に溶接を必要としないなど、ボディに関するこだわりは健在である。
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新型レガシィの印象 (1)

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 6年ぶりに5代目となる新型レガシィ(BM・BR型)が登場した。初代モデル以来、レガシィは4年サイクルでモデルチェンジを行ってきたが、4代目は異例なことに6年間のモデルライフとなり、最初期型のAタイプからFタイプまで年改記号が存在する。年改記号は中島飛行機時代からの軍用機流の伝統だが、毎年必ず性能向上のための改良を加えるというイヤーモデル方式は、海外のメーカーカーで珍しくないが日本では貴重である。
 4代目のBL/BP型のモデルライフを伸ばさざるを得なかったのは、4代目の開発投資額が大きすぎたためではないかと思う。
 さて新型レガシィの本質的な開発コンセプトは、キープコンセプトであり、世界に通用するMクラスのグローバルカーとして熟成することであることは明白だが、今回はハードウエアを大幅に改良したこともあり、「グランドツーリング・イノベーション」という表現を使っている。4代目は「感動性能」といった表現であったが、今回は「豊かな時間の提供」と、やや抽象的な表現となっている。もう少しダイレクトな表現の方がよいと思うのだが。
 豊かさ=グランドツーリング・イノベーションの核となるのは、ドライバーズファン、パッセンジャーズファン、エコパフォーマンスという3つの要素を追求することだったという。ファンというのは気持ちよさ、快適さといったニュアンスだろうか。
 レガシィはもともと、セダン/ワゴンというボディと本質的に優れたパッケージングを持ちながら、ドライバーズカーを指向し、ドライビング・プレジャーや動力性能を求めたGTスポーツカー的な要素が強く、リアルなGTカーとして日本では最強ブランドのひとつとなってきた。トヨタ・カルディナ(ワゴン:2002年~2007年)は、トヨタのトップガン・ドライバーの成瀬氏を熟成チューニングに起用し、レガシィ・ターボワゴン打倒を目指してをターゲットに開発を行ったほどだったが、そのカルディナ・ワゴンもけっきょくレガシィには対抗できず2007年に生産終了し、ワゴンブランドもついに消滅してしまった。
 そういう点で考えるとレガシィは日本でも稀有な存在なのだが、スバルの開発陣、商品企画担当者にとってはどうやらこれが大きな重荷、制約になっているようだ。
 コア層の心を掴み、熱烈なファンに支持されている反面で、一般層が過剰な性能を持つクルマとして敬遠しがちで、女性層の支持も低い。もっと普通のクルマとして認知されれば販売増加が期待できるのではないか、という商品企画の本質的な部分にマグマ層があり、時々噴火現象を起こすのだ。
 その結果として、もっと乗り心地を、もっと静粛に快適に、もっと室内を広く・・・といった要求となりがちだ。
 もうひとつ、レガシィは初代からグローバルカーと位置付けられたが、実際には国内でのヒットがこのモデルを成功に導いた。しかし、グローバルカーとして成功させたいという根強い願望があるのだ。3代目レガシィはアメリカでアウトバックが一時的に成功を納めたがその後は低迷気味で、国内他社とは異なりスバルは収益を輸出で稼ぎ出すといった構造にはなっていない。レガシィはスバルの屋台骨となる車種であり、他社のように海外で着実に収益を稼ぐ存在になることが悲願になっているのも事実である。
 こうした、レガシィに課せられる様々な条件を重ね合わせると、今回の新型レガシィの開発企画の本音が見えてくる。
 インターナショナルDセグメント(実際にはDの底辺)のカテゴリーにふさわしいデザイン、ボディ・サイズ、エンジン排気量とし、Dセグメントにふさわしい走り、快適性を追求することが大きなテーマになっているのだ。
 アメリカ、北米では、中途半端な、小さいサイズと見られ、ヨーロッパでもDセグメントとしては存在感が薄い・・・といった現状を打破するモデルしたいということだ。
 クルマの本質的な部分では、海外市場、国内を問わずAWD(4WD)を採用したプレミアム・モデルとしたいところだが、実際には高価格路線を選択することは不可能で、コストパフォーマンスの優れたDセグメントモデル路線を狙わざるを得ない。このあたりが年間50万台規模という自動車メーカーのジレンマといえるのだろう。
 このようは背景のもとで新型レガシィはボディサイズを拡大し、エンジンを2.0Lメインから2.5Lメインに引き上げるたが、個々の技術的な方向性は正常進化といってよい内容になっており、従来のレガシィとまったく別の方向性を持つクルマになったというわけではないと思う。
 
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 新型レガシィは、ボディ・サイズを拡大した。全長はセダン、ワゴンとも+95㎜、ホイールベースは2750㎜(+80㎜)、全高は1535㎜(+65㎜)、そして全幅は1780㎜(+50㎜)。北米仕様の全幅は1820㎜にまで拡幅しているのだ。
 基本フォルムは、より長く、より高く、より幅広く、インターナショナルDセグメントに合致するサイズになったといえるし、ホイールベースの延長はリヤシートの足元スペースの拡大に使用され、全幅の拡大はフロントシート左右のカップルディスタンスに使用されている。
 しかし、全幅の拡大の恩恵を最も得られたのは、側面のデザインだろう。従来のレガシィは伝統的に室内パッケージングを優先的に攻めるあまり、側面デザインが平板なイメージが強かった。4代目では初めてショルダー部のエッジを立てる試みを行ったが、ソリッド感や立体感はそれほど強くはなかった。
 それに対して、新型はショルダー部にインバース面とエッジを組み合わせ、反射光を際立たせ、エッジから下に向かってはフラットにまとめている。そして前後のホイールアーチをオーバーフェンダー風に強く強調することで、ショルダーラインより下方でダイナミック感を作り出している。強いショルダーエッジとダイナミックなホイールアーチにより、サイドビューの存在感が格段に強められたのだ。
 全高が65㎜も高められた理由は、歩行者傷害低減対策として上下方向のクラッシュストロークを確保するためにボンネット高さを高くしたことによりデザインバランスを取るためと、室内の前後スペースを有利にするためだが、Aピラー付け根のボンネットの厚みと、ラウンドしたルーフパネル形状もデザイン的には強さを表現している。

 ヘッドライトは、依然として鷹の目を現す鋭さを表現しているが、ウイングをグリル中央に配置しクロームで囲い、ロアーの両サイドと長方形の大型中央グリルと組み合わせたフロントマスクはそのほど強い印象が感じられず、A.ザパディナス氏が去った後のスバル・アイデンティティの作り込みに多少の迷いが感じられる気がする。

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 インテリアは、センターコンソール、ディスプレー面をしっかり確保し、運転席、助手席のダッシュボードをラウンド面としたデザイン構成は、機能性を表現できている。ただ、ダッシュボード表面の質感、触感などはもの足りない。せっかく左右独立制御エアコンを備えているというのに。(ヴァニティミラーの照明、左右独立制御式エアコン、グローブボックス内部照明と内部植毛処理が、とりあえずプレミアムクラスの証明なのだ)
 また、新デザインのステアリングホイールはインテリアの中で一体感が感じられず、チープな印象を受けるのは残念だ。
 前後のシートのデザインも機能性はともかく、デザイン面で力量不足を感じる。
 運転席に座った時の斜め前方視界、すなわちドライバーの目とAピラーとの距離は理想的で、視界が最大限に確保されているのはスバル伝統のこだわりといえる。
 

3代目プリウス雑感

 第3世代のプリウスが発表された。すでにアメリカのショーへの出展や販売店でティザーキャンペーンなどが展開されているので、インパクトが薄まっているといえるが、4月からの予約受注はなんと8万台に達するというから、トヨタの販売力は健在だ。
 ちなみに今回のプリウスから、全トヨタ販売チャンネルでの販売となる点も注目したい。トヨタの重要な販売戦略であった多チャンネル体制を見直す契機になるのではないかと思われる。
 5月18日に行われた報道発表会は異例の内容であった。会場は質素な作りで、プリウスに関する技術説明は一切なく、トヨタのシリーズ・パラレル・ハイブリッド・システム(ストロングハイブリットと呼ぶ)がいかにシリーズ・ハイブリッド(マイルドハイブリッドと呼ぶ)より優れているかをショー化し、スピーチする豊田章男副社長の存在を強調するという、いわばかなり政治的ともいえる演出であった。
 当然ながら新聞社やテレビ局の記者は、世界最高の燃費車のイメージ、時代の最先端のエコカーであることを、報道することだろう。そういう意味では、結果的にではあるがイメージ戦略ありきのクルマということができよう。
 また報道機関の一部には、新型プリウスの最廉価モデルが205万円であることが驚きを持って語られているが、トヨタはここ3年ほど総額1兆円を目標にした原価低減運動を展開しており、その成果を踏まえれば装備レスの最廉価版の価格はそれほど無謀な価格とはいえない。新型プリウスは205万円~325万円の価格帯であり、最量販車種であり装備があるていど充実している「G」は245万円となっている。実際にはこの「G」をベースに、プラス25万円のツーリングセレクション仕様が最重点モデルとなるだろう。
 さらに、現行プリウスも併売されることもホンダ・インサイト対策ではないかと穿った見方があったがそれも見当違いで、この狙いは法人需要、タクシー向けに絞り込んだものなのだ。
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 新型プリウスは、プラットフォームはオーリス/マークXジオ系を採用し、ハイブリッドシステムは90%が新設計されている。もともとの開発コンセプトは、ワールドワイドに通用するクルマとすること、特にヨーロッパなどで走りの性能を向上させることなどであったと思われるが、この点は明確には公表されていない。
 またデザインの熟成にも力が注がれている。
 プリウス独自の「トライアングル・シルエット」を生かしながら、デザイン・フィロソフィーの「VIBRANT CLARITY」の要素をさらに煮詰め、「陶器の質感」を実現したという。サイドビューはきわめて強いウェッジ・フォルムとなり、前進しさらに傾斜したAピラー、ロングルーフのラウンド形状、リヤエンドを断ち切るなどの組み合わせで、モノフォルムを生かしつつダイナミックさを表現している。また従来型に見られたサイド面の弱弱しさを取り除くため、サイドショルダーにエッジを立て、立体感を強調している、といった点が特徴になっている。
 エクステリアでは、空力の追求も大きなテーマであり、フロントグリルの縮小、フロントバンパーの前端やコーナー、リヤエンドの空力処理、さらには床下のフラット化などによりCd=0.25を実現している。もちろん、こうした空力ボディはヨーロッパの高速道路で威力を発揮することを狙っているのだ。Cd=0.25は量産乗用車としてはトップレベルだ。
 ボディでは、ボンネットとフロントバンパービーム、リヤゲート、前後ブレーキ・キャリパーをアルミ化と、トヨタとしては異例のアルミ比率アップをはかっている。

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 インテリアも、先進性を強調しながらデザインの熟成をはかっており、センターコンソール上部をコマンドゾーン、ダッシュボード中央上部をディスプレーゾーンとする、エルゴノミック&ユニバーサル・デザインと称している。しかし、いわゆるセンター・ディスプレーはかなり横長になり、車速や燃料計、燃費計、走行モード表示など、中央はエコドライブモニター、左端部は各種警告灯が並ぶなど多くを表示するため、いささか煩雑な印象が感じられる。もしこれがカラーディスプレーになればずいぶん印象が異なると思う。
 ただ、プリウスは提案型デザインであらねばならないという宿命があるので、難しいところではある。ただ、2.0Lクラスの250万円ゾーンのクルマとしては質感の点で少しもの足りない。
 装備では、ブレーキ制御付きレーダークルーズコントロールが最上級パッケージに標準、上級パッケージにプリクラッシュセーフティとセットオプション。インテリジェント・パーキングアシストは、最上級パッケージに標準、他グレードにはHDDナビとセットオプション。ソーラーベンチレーション&ムーンルーフは「G」にオプション設定、「S」にはリモートエアコンシステムとセットオプション。プリクラッシュセーフティ・システムは最上級パッケージに標準、「G」にはレーダークルーズとセットオプションといった設定になっている。
 S-VSCは全車標準装備化されている。
 なお、プリウスは2代目から、先進を象徴するような商品性を付加するのがお約束となっており、2代目では取締役会で先行技術開発の項目の中からインテリジェントパーキングアシストが選択された。今回はソーラーベンチレーションのようで、イメージ的に太陽電池=先進エコということで採用されたように思われるが、駐車時のオートベンチレーションは、BMW7シリーズ、マツダなどでかなり以前に実用化されており、特に新規性はない。

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 新型プリウスは、エンジンを1.5Lから1.8Lに排気量アップするとともに、新しい試みを行っている。排気量アップは、高速走行モードでのエンジン回転数の低減により燃費向上対策である。1.8Lエンジンは2ZR-FXEと名付けられた高膨張比、つまりアトキンソン・サイクルであり、圧縮比は13。ボア×ストロークは80.5×88.3㎜。低フリクションのローラーロッカーアームを使用したDOHCである。
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↑電動ウォーターポンプ
 新技術としてはクールEGR(再循環排気ガスを水冷化により冷却損失の低減、排気温度の低減)、排気熱再循環システム(排気熱を冷却水で回収し、ヒーター利用やエンジン暖機性能向上に使用)、電動ウォーターポンプ(エアコンコンプレッサーが電動式のためウォーターポンプを電動化することで補機ベルトを廃止、必要時にのみポンプを作動、馬力損失の低減)が採用されている。電動ウォーターポンプなどは、すでにBMWでは以前から採用されている。
 新技術によりエンジン全体の熱損失を回収する試みが行われており、ロジカルである。燃費を重視したアトキンソンサイクルのエンジンのためというよりは、将来的には普通のエンジンにも拡大採用される技術だと思う。
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↑バッテリーユニット
 ハイブリッド・システムは、従来からのシリーズ・パラレル方式だが、新型は駆動モーターの出力アップ、電池の小型化が大きな開発テーマになっている。
 このシステムは、発電機と駆動モーターの2基のモーターを備え、走りは駆動モーターの出力に依存する割合が多いため、より大出力の、つまり大きな駆動用モーターが求められる。2個のモーター、大出力の駆動用モーターということで重量が増大するため、駆動モーターの高出力と軽量化を両立させるために高電圧制御を採用しており、2代目が500ボルトのモーター電圧であったものを650ボルトに電圧アップさせている。参考までにインサイトは100ボルトである。
 これにより駆動モーターは50kWから60kWに出力アップした。ホンダ・インサイトのモーターと比べると実に6倍の出力で、いかに強力なモーターかがわかる。ただし、最大トルクは400Nmから207Nmでと半減している。高出力・低トルクのモーターになったわけだ。このトルクの減少をカバーするため新型プリウスは駆動モーターに減速ギヤを採用することで、実質の駆動トルクを確保しているのだ。このようなモータを使用することで発進時の加速の立ち上がりなどは大排気量エンジン車なみといえる。一方、発電機は動力分割機構の性質上、きわめて高回転化が求められている。
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↑PCUのユニット
 バッテリーはニッケル水素式で、小型化と大出力化をはかっている。大出力の駆動モーターに対応するために、この方式では基本的に大出力のバッテリーが求められるが、これをできるだけ回避するために高電圧化を行っているわけだ。発電機や駆動モーターを制御するPCUは可変昇圧コンバーターを組み込み、コンパクト化を実現。
 なおエンジン出力は99ps、駆動モーター出力は82ps、最大トルクはエンジンが14.5kgm、モーターが21.1kgmである。システム合成出力は136psとなる。
 エンジン、発電機、駆動モーターは遊星ギヤで結合された動力分割機構であることは従来どおりだ。
 運転モードは、電動モード(可走行距離は最長2.0㎞)、エコモード、パワーモードの3種類で、運転席のスイッチで切り替えることができる。モード燃費は、10・15モードで38.0㎞/hだ。ハイブリッドカーの10・15モードテストでは、バッテリーの充電レベルはスタート時と走行後は同等になるように計測される方式だそうで、電力だけで走っているわけではなさそうだ。
 サスペンションについての説明は、プレスリリースにもほとんど存在しないが、フロント=ストラット、リヤ=トーションビームに変更はない。ただ、トレッド幅の拡大、ロール剛性の向上、ジオメトリーの最適化などにより直進安定性の向上、フラットライドが実現とされている。また電動パワーステアのフィーリングも改善されたとされているが、走りのイメージはやはり2.4Lエンジン並みの動力性能に集約され、ハンドリングについての印象は薄いといわざるをえない。
 
 プリウスのハイブリッドシステムは、要約すると大出力の駆動モーターを持ち、市街地走行モードではできるかぎりモーターで走行するシステムであり、また専用の発電機を備えているため、駆動モーター用に適宜充電を行い、またより広汎に減速時のブレーキ回生を行うことでエネルギー回収を行うということである。
 駆動モーター/バッテリーで走る比率が多いため省燃費、エコというイメージが先行しがちになっているが、駆動モーター用の電源となるバッテリーを充電するのはエンジンのトルクとブレーキ回生であり、エンジンによる発電充電は効率的ではない。エンジンの熱効率は30%、発電&充電効率は約60%とすれば、石油エネルギーの18%といった効率になる。ただ、ブレーキ回生により熱エネルギーを回収することで燃費の向上をもたらしているのであり、ブレーキ回生の比率が他のハイブリッドカーより現在のところ多いというのが真実だろう。
 パラレル方式のハイブリッドカーでも、エンジンとモーター間のクラッチの装備、モーター/発電機の容量増大、ブレーキ回生の強化を行えばプリウスと同レベルの燃費になるのではないだろうか。
 また高速走行、特にアウトバーン走行に近づくほど、ブレーキ回生の威力が少なくなりエンジンはフル稼働となり、発電機もフル稼働に近付くため、燃費レベルはそれほど驚異的なレベルとはならない。つまり、市街地モードと高速道路燃費では乖離が大きいのが特徴である。2代目プリウスは、都内走行で、冬季は18㎞/L、夏季は15㎞/L、年間平均で16㎞/Lといわれるが、新型プリウスは年間平均で18㎞/Lくらいではないだろうか。
 もうひとつ、今ではプリウスは低炭素社会を目指す尖兵とされているが、それはハイブリッド技術であると断言してよいのかどうか、躊躇せざるを得ないのだ。
 低炭素社会というからにはWell to Wheelの観点が不可欠であり、さらにバッテリー製造メーカーの視点からは、バッテリー製造に関わる消費エネルギーは膨大で、大容量バッテリーを使用するハイブリッドカーは自車の燃料タンクしか見ていない幻想のクルマだという見解もある。
 現在は明らかに社会現象としてのハイブリッドカーブームになっていると断言でき、ハイブリッドカーでなければ売れないとさえ言われているが、省燃費、高効率化の様々なトライアルはまだこれからといえると思う。

ドライビングと心理・肉体

 ドライビング、つまりクルマを運転することはスポーツか?
 簡単に言ってしまえば、たっぷり汗をかくからスポーツと言えるのではないか?
 もっとも単純に肉体的な要素より心理的な要素の比重が高い気がするが、こういう点はトヨタの中央研究所などで研究しているのだろう。
 モータースポーツの領域では、心理的な要素と同等に肉体的な負荷が大きいのはよく知られている。F1では横gは4gを超え、モータースポーツの中でも最も過酷と思われるが、そのために上半身や首の筋肉に大きな負荷がかかるのだ。航空機の分野では、戦闘機やアクロバット飛行機では最大で9gもかかるといわれるが、それは主として上下方向のgであり、戦闘機は耐gスーツを着用している。
 これに対してF1を始め、クルマは横gを受けるのだ。プロのレーシングドライバーと言われる人々も、フォーミュラカーでステップアップして行くにつれ首の負荷が大きくなるのは実感できるという。首が鍛えられていないと、レースの途中で頭がぐらぐらし始め、視点が定まらず、まともなドライビングは不可能になってしまう。
 したがって、F1に近付くほどドライバーは首を太くし、上腕の筋肉も付け、上半身だけに筋肉が付いた変な体型になるのだ。
 ただ、今日では科学的なトレーニングを行い、全身の筋肉をバランスよく保つようにしているかつてほどの特殊な体型にはならないそうだ。
 
 レースでは心理的な負荷もきわめて大きい。レースにおいては、ブレーキングやコーナリングは限界に近い領域でコントロールしており、失敗は許されない。きわめて強い緊張を強いられるため、呼吸が乱れ、発汗するのだ。特に高速コーナーの進入から脱出までの区間は、思い切り奥歯をかみ締め、呼吸は停止する。同時に冷や汗が流れ出る・・・という繰り返しとなり、発汗量はきわめて大きい。このため1時間を越えるレースでは発汗により脱水症状を発生しやすくなるのだ。この対策として、長時間走行する耐久レースでは、ドライバーはボトル入りの水分をストローチューブで吸って水分を補給する。
 発汗は、いわゆる冷や汗と、体温の上昇により発汗の2種類がある。もともとレーシングドライバーは着用している難燃性の高いレーシングスーツは通風性がゼロに等しく、またフォーミュラカーであれ、スポーツカーであれ、ツーリングカーであれ、コクピットはほとんど換気できない構造のため、発汗しても体温を下げることができず、さらに発汗を加速させると言う悪循環となるのだ。このため最近はF1でもコクピットに風が流れ込むように配慮しており、耐久レースを走るスポーツカーやツーリングカーは外気導入エアダクトを設けている。しかし、夏季にはそれでも熱風が吹き込むため、ドライバーの上半身、頚動脈、頭を冷却水が循環するクールスーツを着用する。
 クールスーツは、冷却水タンクに氷水を入れ、電動ポンプでクールスーツの細い樹脂チューブ内を冷水が循環するような仕組みになっている。
 こうしたドリンクやクールスーツ装置がなかった時代のドライバーは、真夏のレース中には大量の発汗でフロアが汗で水たまりになり、発汗により脱水症状を発生し、意識が朦朧となるということも珍しくなかった。ドライバーは本能的に運転を維持しようとするため、ドライビングミスが生じやすくなるのだ。
 真夏の、高温多湿のレースで、意識が朦朧としたドライバーはレース終了後に、一気に2Lの水を飲むといった光景が見られた。
 いうまでもなく脱水症状は医学的に言えば危険な状態なのである。
 またこうした肉体的な条件にくわえ心理的な負荷も大きいため、いわゆるスタミナが消耗されるが、これは個々のドライバーよる差もある。
 F1グランプリに挑戦した中嶋悟選手は、ドライビングには非凡な才能を備えていたが、持久力が弱く、レース後にはマシンから下りるにも難儀し、降りても歩行もままならなかった。現在のF1ドライバーは、レース後でも飛び跳ねることができるほどのスタミナを備えており、そのためには日頃から厳しいトレーニングを積み重ねているのだ。
 
 一般のドライバーが普通の乗用車で山道やサーキット走行で走る場合は、もちろんスリックタイヤのレーシングカーほどの強い横Gを発生することはない。F1で4g、GT/スポーツカーで3g、ツーリングカーで2.5gていどといわれるが、乗用車の場合はハイグリップタイヤを装着したスポーツカーでも最高で1.3g、ニュルブルクリンクで2gくらいと考えられる。したがって横gの負荷はスポーツ走行を行っても極端に高くなるわけではない。
 しかし、乗用車を限界に近い状態でコントロールするため、心理的な要因による発汗が生じ、コーナリング時には呼吸が停止し、上腕に力が入り硬直するという状態になるのはレース時と同じなのである。このためカーブが連続すると呼吸停止、呼吸再開が激しくなり、呼吸が乱れるとともに心拍数が上がってくる。
 乗用車の運転技術のひとつとして、コーナリング入口では息を吐きながら入って行くというのは、呼吸の停止を少なくし、心拍数を早めないためである。
 言い換えると、これはパニック状態と同じなのだ。
 しかし、スポーツドライビングとレースは異なり、そのクルマの限界やコントロール性は、クルマによって大きく異なるのだ。
 不安定で過敏なクルマほどドライバーにとって負荷が大きくなり、逆に安定した挙動の、クルマの側の状態がわかりやすい、ドライバーにとってインフォメーションの多いクルマほど負荷は小さい。
 つまり、広い意味での安定性が高いクルマほどドライバーの負荷は小さく、それだけ疲れにくいといえる。疲れにくければ、ドライバーには余裕があり、冷静な判断が維持できるわけだ。
 このことからも、乗用車は、安定性とクルマ側からのインフォメーションがいかに重要であるかわかる。ドライバーの疲労が小さければ、快適性の向上にもつながるのだ。
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